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のどの不調は「体から発せられた悲鳴」 乱れた自律神経の整え方

大沼竜也(鍼灸師)

2024年09月20日 公開

のどの不調は「体から発せられた悲鳴」 乱れた自律神経の整え方

肩コリや首の痛みがある。のどがイガイガする。腰痛がひどい...。体の不調は、心や考え方にまで影響を及ぼします。ここでは、つらい体の部分にダイレクトにアプローチする即効性のあるセルフケアを鍼灸師の大沼竜也氏が紹介します。

※本稿は、大沼竜也著『心と体のコリをほぐすセルフリセット』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。

 

首や肩の不調は全身の不調につながる

首や肩のコリ、それは鍼灸師や整体師にとって避けて通れない症状です。それだけ悩んでいるクライアントが多く、本人は気がついていなくても、首や肩の不調から他の不調につながっていることもあるのです。

例えば、頭痛や顎関節症、背中のコリや腰痛まで、体は全身でバランスを取るようにできているので、首や肩が狂うだけでさまざまな場所に影響を及ぼします。特に私はクライアントの心理状態まで扱うため、臨床では首肩とメンタルは密接に関係していると感じて、注視するようにしています。

ひと言に首肩コリといっても、その内情は人によりさまざまです。多い首肩コリの原因は、肩が内巻きになって、胸が閉じて、首が前のほうにつんのめってくるように猫背っぽくなる姿勢です。デスクワークに従事する方や、性格が内向的な方に多いように感じます。

生まれながらの性格からこういった体のクセが現れるのか、姿勢から性格に影響を及ぼすのか、明らかにはなっていませんが、両方ある気がしています。

この姿勢の大きな特徴として、前側(胸の意識)が弱く、後ろ側(首や背中側)の意識が強いため、後ろ側で引っ張り上げて姿勢を保つようになるのです。常に首や肩付近に力が入っているとなれば、苦しくなるのも当然です。血流は悪くなり、疲労は抜けず、満足な動きができないため、脳への負担も大きくなります。

こうした悩みへの処方箋はシンプルで、苦しいポイントの反対側を伸ばすこと。

体の前側である胸の意識を高めて、体の後面も前面も、均等に意識できれば、自ずと体もスッと起きた状態を保てます。重力に逆らわず、倣うことができれば、首肩コリの改善はそこまで難しいものではありません。早速やってみましょう。

 

体の苦しい部位の反対側を伸ばす

これは日中体を起こしているときに、やってほしいセルフケアです。意識すべき点は、苦しいポイントの反対側を伸ばすこと。首の後ろならあご下や首の前側、背中ならそれぞれの高さの胸です。

構造上固くなりやすいのは、「首の下半分(喉元)」から「胸骨の上端から下端(みぞおち)」の部分。ここだけを、背中側に反るようにして伸ばしてあげます。ただ反ればいいわけではなく、ミチミチ、ビーンとストレッチされる感覚を味わってみてください。

重力を利用し、普段どれだけ自分の胸が縮んでいるのかを感じれるはずです。ここでお腹が伸びる感じになると、腰への負担が大きく危ないので控えます(腰が反らないように腹筋がぴーんと伸びるようにできるなら大丈夫)。

なれてくると、脳と胸の感覚がリンクして、普段から姿勢が変わっていきます。姿勢が変われば性格が変わり、習慣が変わり、人生が変わる。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、体を変えるということは、長い目で見たときにそのくらいのインパクトがあるのです。

 

のどの不調は自律神経のバランスの崩れ

のどにイガイガした違和感があり、生唾を飲み込んでしまう。のどに何かが引っかかっているようで、呼吸がしづらい。

実はこれ、自律神経失調症の典型的な症状で、東洋医学では「梅核気(ばいかくき)」といいます。西洋的な観点からいえば、食道や気管も自律神経が支配しているため、自律神経のバランスが崩れ、気管が必要以上に固くなり、調整がうまくできずに起きると考えられます。

こうした症状が出たら、まずは直近のストレス状態を振り返りましょう。思い当たる負担があるならば、今一度休息を取り、原因となるものへの向き合い方を変えるなど、対応が必要です。

一方で、問題は思い当たることがない場合です。これは、自分に降りかかるストレスに対して「気づけていない」可能性が高いということ。

何かしらの症状が出たとき、それは「体から発せられた悲鳴」と捉えられます。自分で認識できていなかった負担が限界に達し、「もうそろそろきついよー」と体があなたに伝えるために、症状が出ているのです。

疲労に気づくタイミングは、個々人の身体感覚に左右され、それがイコール「身体性の高さ」といえます。忙しければなかなか、自分の感覚は二の次にしてしまうもの。

ただ、気がついているにもかかわらず、見て見ぬふりをして、気合いで乗り切ってしまうと、後々さらに大きな問題に発展することだってあり得ます。

 

寝ながらできる! 自律神経系の疲労の取り方

そんな体から出るSOSのサインを受け取ったら、寝ながらできる自律神経の調整法を試してみましょう。のどに違和感がある場合、やはり、のどの近くから動きをよくするアプローチが有効です。今回でいえば、背中から首です。特に俯くような姿勢は、梅核気の症状を悪化させます。

物理的に動きを持たせたいので、ちょうど肩甲骨のすぐ下あたりに、丸めたバスタオルを挟み、仰向けになります。仰向けになったとき、みぞおちの高さの肋骨が伸びる感覚があればOKです。挟み込むのは、バスタオルでも枕でも、ストレッチポールでも構いません。だらっとして、仰向けになれるものを選びましょう。

そのまま手をばんざいして、「うぅーん」といいながら背伸びしてみましょう。すると体幹部全体のインナーマッスルが刺激され、自律神経系への負担も軽減し、疲労回復に役立ちます。

気分の落ち込みだけでなく、こうした体に表れる症状にも効果が期待できます。そのまま睡眠に入ることができれば、睡眠の質もよくなりますから、1日の終わりに、自分の体を感じ、労ねぎらう機会をつくりましょう。

 

著者紹介

大沼竜也(おおぬま・たつや)

鍼灸師

大沼鍼灸院長。1991年宮城県生まれ。幼少期にカトリック系の教育を受け、東西文化の融合に対する寛容な視点を培う。旧赤門鍼灸柔整専門学校を卒業後、医療・介護領域での豊富な臨床経験を基盤に、2018年仙台市で大沼鍼灸を開業。身体心理学およびソマティック心理学に基づき、精神領域と身体運動の相互関係を変容させる独自のアプローチを実践し、クライアントの心身のバランスを取り戻すことに貢献している。
また、全国規模でのワークショップやセミナーを主催し、専門家向けの学習プログラム【somatics(ソマティクス)】を展開。一般向けには、レジリエンス(精神的回復力)を高めるセッションプログラムを提供し、多方面から支持を集めている。

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