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「推し語りしても反応を貰えない...」オタクの悩みに、書評家・三宅香帆が出す答えは?

三宅香帆(書評家)

2024年11月11日 公開 2024年12月16日 更新

「推し語りしても反応を貰えない...」オタクの悩みに、書評家・三宅香帆が出す答えは?

自分の好きなものについての発信をしたいけど、なんだかうまくいかない。発信する勇気がでてこない。「好き語り」をするときによく発生するお悩みについて、書評家である三宅香帆さんが答えてくれました。

※本稿は『「好き」を言語化する技術 推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を一部抜粋・編集したものです。

 

他人に響く話術とは?

Q.1 自分が推しを紹介しても、ほかの人に響いている気がしません

自分の推しの話に興味を持ってもらえていない気がします。いいと思うものをうまく紹介できないことが歯がゆくて、結果、あまり他人に推しの話をしないというループになってしまいます。他人に響く話術って、どうすればいいんでしょう?

A. 相手に渡す情報の取捨選択が重要です

他人に響く話って、その人にとって、究極「ものすごく共感できる話」か「(興味のある範囲のなかで)新しい情報」のどちらかです。

つまり、相手にとってあなたの推しの話が、
①相手が共感できる内容なのか、
②相手の興味のある範囲で新しい情報になるか、
どちらかになったらいいんですよね。

たとえば、一対一で話すタイミングなら、「最近ダイエットがんばってるけど、私の推しが最近ダイエット情報発信してるからSNS見てよ〜」「ねえ、ミュージカル好きだよね?推しが今度舞台にでることになったんだけど、舞台って予習していくことある?」など、相手の興味の範囲内で推しの話をしてみると、②の方向で興味を持ってもらえるかもしれません。

あるいは、ほかにも人がいる場であれば、「●●の文脈で見ると、K-POPアイドルのなかでこのグループはこういう点で新しいんだ」など新しい解釈という情報を提示してみると、「へえー、K-POPには興味ないけど、そういう文脈があるのは面白いかも」と思ってもらえるかもしれない。

「こういう辛い体験をしたときに、この俳優のドラマを観て救われた」という話だったら、たくさんの人が「あるある〜」と共感できるかもしれない。

相手に渡せる「推し」に関する情報のなかで、相手の興味の範囲内で提供できる新しい情報ってなんだろう? と考えて話してみると、突破口が見つかりやすくなります。

「話術を磨く」というと、なにをすればいいのかわかりにくいですよね。でも、自分が相手に渡せる情報と考えてみると、なにを渡さずになにを渡すのか、どの情報から提示していくのか、考えようがありますよね。応援してます!

 

自分だけの感想を書く意味

Q.2 SNSでほかの人のポストをRTするだけになってしまいます

同じ趣味の友達としゃべるなら、スムーズに感想が言えますが、いざ「SNSでレポしよう」「知らない人に伝えよう」と思うと、どの言葉を使っても、その瞬間のよさとか輝きとかをうまく表現できる気がしないんです! そして結局、文章のうまい人が書いたレポをRTして「そうこれ!」「それな!」というだけのbot化してしまいます......。

A.「推しを見た自分の感情」について深掘りしましょう

自分の好きなジャンルが、レポ文化、つまり「SNSでコンサートや新曲やMVなどの感想を書く文化」が盛んだと楽しい。楽しいですが、自分だけの感想を書くモチベーションがなくなるときもありますよね。他人のほうが言語化がうまいし、自分の感想をわざわざ書かなくても楽しい、と思ってしまう瞬間があるのはよくわかります。

が! それでもあなたのオリジナルの感想を絶対に残しておいたほうがいいのです。その理由はひとことで言うならば「自分だけの感想を書くことで、自分自身への理解も深まり、さらに推しへの理解も深まる」からです。

質問者さんは「どの言葉を使ってもうまく表現できない」と言っていますが、推しそのものを伝えようとするよりも、推しを見た自分の感情について表現してみるのはいかがでしょうか?

たとえば、「MCのときのこの発言、めっちゃ尊かったな......」と印象に残ったら、その理由を考えてみる。「なんで私はこの発言に尊さを感じるんだろう? ほかにもいろいろ言ってたのに」「ああ、●●のときのインタビューの発言が印象に残っていて、そこからの成長を感じたからだ」など、自分の感情とその理由を言葉にしてみるんです。

すると、自分なりの感想がより深く書けるようになります!

しかも、自分の感情を説明する感想って、丁寧に言語化されていることが多く、推しのことを知らない人にも推しの魅力が届きやすいんです。

推しの発言や言動をそのままレポするのも楽しいもんですが、誰かが既に書いていることで十分じゃん、と思ってしまうかもしれません。それよりも、自分が推しに対して感じたことを丁寧に言語化してみると、あとから読み返したとき面白いものができあがるので、おすすめです。

推しに魅了されきっているあなたの感情を書くことで、翻って、門外漢の人にも推しのきらめきが伝わることもあるんですよ!

 

オタク口調の解決策とは?

Q.3 オタク口調を脱したいです!

推しのことを語ろうとすると、つい句点がつかない早口オタク口調になりがちです。ニッチな専門用語を使ったり、擬音語や擬態語を多用したりしてしまいます。どうしたらいいでしょうか?

A. スピードを優先し続けたいかどうか

私もです......! なので非常に気持ちはわかるのですが、あえて解決策を言うなら、「相手の反応を見るクセをつける」です。

擬音語や擬態語を多用しても、早口でも、ぶっちゃけ相手が話を理解して面白がってくれていれば、とくに問題はないんですよね。しかし、そこで相手がよくわからないな〜という顔をしていた場合が問題なんですよ。

「あっ、今つまらない顔してそう、しゃべり方変えよう」と瞬時に思えるかどうかが、相手を置いてきぼりにするかどうかの境目です。

なぜ私たちが早口オタク口調になってしまうかというと、結局「とにかく速く推しのことを伝えたい!」と伝達速度重視になってしまうからですよね。

推しの魅力をとにかく速く伝えたいというスピード重視から、「ちゃんと推しの魅力が伝わる」確実性重視になれば、自然と語り口調も変わってくるのではないでしょうか。なにを優先順位高めにしたいか、という目的次第ですね。

 

SNSにイライラし始めたら...

Q.4 他人の発信にイラっとしてしまいます

長年推しているアイドルがいるのですが、SNSで知り合った「自分よりもファン歴の短い人」にわかったようなことを言われると、イラっとするときがあります。他人の発信については、どう考えたらいいでしょうか?

A. 離れましょう

インターネットのいいところは、自分と同じような立場(つまりは一介のファン)の発信をたくさん見られるところ......ですが、それゆえに他人の発信が気になってしまうときもありますよね。

ただ、違和感を覚える他人の発信を見るかどうか取捨選択できるところもインターネットのいいところのひとつです。

というわけで、イラっとするときは、見ないようにしましょう! SNSにいる人だったらミュートにする、自分が疲れているっぽいときはインターネットから一度離れる。この世に「絶対に見なきゃいけない情報」なんてインターネットにはありません。そう考えて、違和感がある発信からは離れましょう。

 

推しを好きになったきっかけを語ってみる

Q.5 「とにかく好き」しかでてきません!

どこが好きか聞かれても「好きに理由とかある? ないよね」と思ってしまいます。とにかくいい、とにかく好き、それしか言葉がでてきません。

A. 好きなところじゃなくて、好きなエピソードについて語るのはどうですか?

好きに理由はない......って世間ではよく聞く言葉ですが、はたして、本当にそうなのかな? と私は割と懐疑的です。

だって推しができるには、なにかしら「好きになったきっかけ」があって、「あー好きだなーと思う瞬間」の積み重ねがあって、さらに「好きじゃないかも? と思ったけど、やっぱり好き! と感じる出来事」があって......、というような好きの積み重ねがあるはずなんです。あなたと推している人の間に、いろんな瞬間が訪れているからこそ、あなたはその人を好きになっているんです。

というわけで、必ずしも「どこが好き」と理由を語るのではなく、好きだと思った具体的なエピソードやきっかけについて語ってみるのはどうでしょうか。

ちなみに私は友人の「推しのことなんて、もう好きじゃないかも〜と思ってたけど、やっぱり好きだと確信した」タイミングの話を聞くのがけっこう好きです。そういうトピックを話してみることも、推しのどこが好きなのか理解が深まっていくので楽しいですよ。

 

みんなと違う意見を発信するには

Q.6 他人と感想が全然違うとき、まったく同じとき、どちらも不安になります

大勢の人と違う感想をもったとき、それを発表するための勇気や自信は、どうやって身につけたらいいでしょうか? また逆に、他人と同じ感想だった場合、自分が書いて発表する意味があるのかな〜と、こちらも不安になります。このあたり、どう考えたらいいでしょう?

A. 発信を磨きましょう!

みんなと違う意見、みんなと同じ意見、どちらにせよ発信する理由がわからなくなる......ってことですよね。まず「みんなと違う意見や感想を発表する勇気」は、その発信をブラッシュアップすることでしか身につかない、というのが持論です。ややマッチョな考え方ですみません。

修正して、発信を磨くことで、「誰に読まれても恥ずかしくない文章」にしていくことでしか、発信する勇気は身につかない気がするんですよね。相手の意見を変えられるくらい説得力のある発信を目指す。具体性を強め、修正を重ね、発信を磨く。それが勇気や自信になるのではないでしょうか。

そして、「みんなとまったく同じ意見や感想を発表する勇気」もまた、表現を磨くことで解決できます。なぜなら、感想や解釈を深掘りしていけばしていくほど、あなたのオリジナルの発信につながるから! あなただけが持っている経験や、あなたが今まではまってきたジャンル、あなたが魅了されたポイント。それらを駆使した感想を書けば、たとえ結論が他人と同じだったとしても、そこに至る発信はまったく異なってくるはず。

本の中でお伝えした「発信相手を決めること」「気になった点を細分化すること」「修正を重ねること」などなど、いろんな技術を使って、ぜひあなただけの感想を発信してみてくださいね。私はあなたの感想が、読みたいのです!

 

著者紹介

三宅香帆(みやけ・かほ)

文芸評論家

文芸評論家。京都市立芸術大学非常勤講師。1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院博士前期課程修了(専門は萬葉集)。京都天狼院書店元店長。IT企業勤務を経て独立。著作に『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない——自分の言葉でつくるオタク文章術』、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』など多数。

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