順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんによれば、自律神経を整えるには選ぶこと・迷うことを減らし、「定番」を持つことが大切だそう。日々身に着けるものや、飲み物の定番はどのように決めるべきなのでしょう。書籍『老いが逃げていく10の習慣』よりご紹介します。
※本稿は、小林弘幸著『老いが逃げていく10の習慣』(講談社)の一部を再編集したものです。
定番にたどり着くまで
自律神経は、「選ばなければならないとき」「迷ったとき」に乱れます。そして一度乱れたら3時間はもとに戻りません。そうなるとパフォーマンスも落ちて、モチベーションも下がり、さらに自律神経が乱れるという悪循環になります。
そして、自律神経は「毎日同じ」が好きです。私には、朝のルーティン、帰宅後のルーティン、夜のルーティンと、毎日同じ時間に同じことをする習慣がありますが、そのおかげで、毎日よく食べられて、よく眠れて、よい状態をキープできています。めったに風邪を引きませんし、年齢より若く見られることも多々あります。
「選ぶこと」「迷うこと」を減らすためには、最初から決めておくことです。また、「毎日同じ」にするためにも、最初から決めておくことです。その決めておくことを「習慣」と言ったり「定番」と言ったりします。一つお伝えしたいのは、定番を決めるまではそれなりに時間がかかるということです。
たとえば腕時計。腕時計については後悔があります。20代30代40代と、時計を集めることが趣味のようなもので、いろいろ集めていました。見た目で「かっこいい!」と思うものに、安価なものなので次から次と手を出していました。あれは今思えば愚の骨頂でした。20代に「これ」というものに出会えていれば、ずっとそれを使い続けてこられたのに、と思います。
今は、本当に好きな時計は一つだけ。愛用している「グランドセイコー」です。いつもするにはシンプルが一番。最終的にはここに落ち着いて、私の定番になりました。
定番は好きなものを、好きなだけつきつめた先にあるものなので、特に定番はない、という方はこれから定番を決めるまでの過程を楽しめるということです。自分にぴったり合うものに行き着くまでは、いろいろ迷うかもしれません。
でも、迷ったり悩んだりする時間にこそ「わくわく」があったり、そういう時間を経たからこそ、得られる結果というのも必ずあります。「これ」というものに出会えたら、もう迷うことはなくなります。そういうものを大事にしていくことが毎日を充実させます。
休憩時間の飲み物の定番
休憩時間に何を飲むか? それはもちろん好みでけっこうですが、私の定番はコーヒーです。
健康の面からいうと、コーヒーはおすすめです。コーヒーが健康によいことは、これまでも多くの研究結果が発表されています。一日3杯以上のコーヒーで脂質異常症など心臓脳疾患の予防になることはご存じの方も多いと思いますが、認知症の予防になるという論文(新潟大学2022)や、セロトニンやドーパミンを増やし、抗うつ効果があるという論文(ハーバード大学2020)も発表されています。
意外に知られていないのが、シミが薄くなるという研究結果(お茶の水女子大学2011)です。131名の女性を対象に行った調査で、一日2杯以上コーヒーを飲む女性はシミが少なかった、というもの。コーヒーのクロロゲン酸にメラニンの増加を抑制する作用があることが分かっています。
ではホットかアイスかという問題ですが、私は真夏でも温かい飲み物を飲むことをおすすめします。クーラーなどでただでさえ体は冷えており、内臓まで冷えている方が増えています。内臓の冷えは便秘、下痢だけでなく、倦怠感、不眠など自律神経系の不調も生みます。冷えると免疫が落ちるので感染症などにもかかりやすくなります。
また、内臓の冷えは気づかない人が多く、ピンとこない方も多いと思いますが、外科医として手術を経験してきた私としては、腸の色の変化を実際に見てきました。手術の最中は麻酔をかけて動きを止めていますから紫色になります。
手術が終わった後、外科医は温かいお湯でおなかの中を3~4回洗います。すると温めることで血流がよくなり、腸の色はきれいなピンク色になります。温かい飲み物を飲むことはこれと同じ効果があります。
最近は喫茶店よりカフェと言ったほうがよいのかもしれませんが、どの店もメニューが増えました。ブレンド、アメリカン、カフェオレ、カフェラテ、エスプレッソ......それぞれホットとアイスがあり、さらに紅茶も数種類。なかなか定番も決めにくくなっているかもしれません。店自体も千差万別です。
私も、なぜか行く度に胃をこわす店、居づらい店もあれば、好きな店もあります。私の定番の店は、どのメニューもおいしいので、上から順にローテーションで注文しています。ローテーションという定番もありです。