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時短にとらわれすぎ? 効率化に求められる「3つのポイント」

谷崎玄明(公認会計士、心理カウンセラー)

2025年01月21日 公開

時短にとらわれすぎ? 効率化に求められる「3つのポイント」

「日々計画的に勉強を続けているのに、思うような結果が出せない」「また『三日坊主』で終わった」......、一念発起して資格取得を目指したものの、こんな状況に陥ってしまう人は多いでしょう。現役の公認会計士として働く谷崎玄明氏もかつてはそうでした。しかし大学4年生のとき、公認会計士試験に一発合格。辿り着いたのは、「あらゆるムダ」を省く勉強法です。谷崎氏によれば、ムダには大きく分けると「心の力」「効率化」「習慣化」の3つがあるそう。ここでは「効率化」のムダについて解説します。

※本稿は、谷崎玄明著『今さらだけど、あらゆるムダを省いたら最難関試験に一発合格した!』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。

 

効率の本質は足し算ではなく、引き算

「効率化」のムダを省くために、まずは「効率的とは、どういうことか」について今一度考えてみましょう。

コトバンクで「効率的」の定義を調べると「使った労力に対して、得られた結果のほうが大きいさま」とされています。

注意すべきことは、一般的に「効率的」と聞くと、最小の力よりも最大の結果のほうへと目を向けてしまうことです。

もしくは最小の「時間」と考えてしまうことです。

「時間」はあくまでも「力」を投下した結果として生じるものです。あなたがコントロールできるのは、時間ではなくて力です。

効率を考えるうえで目を向けなければいけないのは、あくまでも「最小の力」の消費です。あれこれ、ではなく、いかに減らすか。足し算ではなく、引き算こそが効率の本質です。これは心に沿って考えることで、初めてわかることでもあります。

 

3本の「効率の根」とは?

では、さらに「効率的」の境目をくっきりとさせるために、その逆の視点、つまり「非効率(的)」から考えてみましょう。

「非効率」を生んでいる理由として、次の3つが挙げられます。

1.ムダが多いと、ムダなことに対して「心の力」を注いでしまうから非効率
2.あちこちに動いていると、動くために「心の力」を消費してしまうから非効率
3.「心の力」を注ぐ先がないと、力が余ってしまうから非効率

では、非効率を回避し、効率化するためには、具体的にどうすれば良いのか。

そこで導き出されたものが効率の本質ですが、ここでは効率の本質を植物にたとえて「効率の根」と呼ぶことにします。

効率の根は3本あります。戦国武将の毛利元就が提唱した「3本の矢」があるように、根も3本あるのです。「3本の効率の根」とは、

第1の効率の根:減らす―ムダを排除する
第2の効率の根:まとめる―動きを最小限に留める
第3の効率の根:整える―手待ち時間をゼロにする

「減らす、まとめる、整える」と覚えてください。

第1の効率の根を持つことで、もっとも効率化でき、第2の効率の根は、第3の効率の根よりも効率化できるという関係にあります。

たとえば効率の樹があったとして、いくら樹の枝や葉を集めようとも、それで樹が生えることはありません。しかし根を持っていれば、そこから樹が伸びます。何度でも、伸びます。
ただ、これだけ読んでもイマイチよくわからないと思いますので、さらに順を追って説明していきますね。

 

第1の効率の根:ムダを排除する

最も効率化できるのは、減らすこと。
とはいえ、減らすことは、特別なことではありません。わたしたちの日常生活にも、しっかりと根付いている効率の根を振り返りながら、減らすことについて考えていきましょう。

第1の効率の根は、減らすことであって、ムダを排除することです。
たとえば、あなたは毎日、次のような効率の根を張らしながら、生活していませんか。

【家事の場合】
・洗濯機や乾燥機を活用し、服の手洗いや、洗濯物を干す手間を減らしている
・食洗機を活用し、皿を洗う、乾かす手間を減らしている

【仕事の場合】
・RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用し、データ入力や簡単な判断を自動化することによって、日常業務の手間を減らしている
・情報収集やアイデア出しを、ChatGPTなどのAIにお願いすることによって、考える手間を減らしている

ここまでは勉強以外のわかりやすい例ですが、これを勉強に当てはめた場合は、次のような例が挙げられます。

【勉強の場合】
・復習する必要のないわかりきった問題を捨てることによって、繰り返し解くべき重要な問題に集中できる
・計画を立てないことによって、計画の立案・軌道修正に必要な手間を省く

いかがでしょうか。これが「減らす」という効率の根です。
意識せずとも取り入れていませんでしたか。該当するものがあった場合、なぜ取り入れていたのか今一度、考えてみましょう。
その答えは「効率的で、ラクだから」ではないでしょうか。

 

第2の効率の根:動きを最小限に留める

第2の効率の根は、心と身体の移動を最低限に留めること、これは「まとめる」ことであって「同じ動作を、同じときに」ということです。
シングルタスクで一意専心に取り組むことや、なるべく身体を動かさないことは、心と身体の移動を最低限に留めるとも表現できます。

そのために必要なことは、まず先に作業を分解し、同質性によってまとめ、同質性のある動作は同時に行うことです。これによって余計な力を消費せずにすみます。
ここでも日常生活での具体例を出しておきます。
心当たりがあるものがあれば、それが第2の効率の根です。

【家事の場合】
・洗濯物を干すとき、洗濯物は、すべて一緒に洗濯機から取り出して、まとめてハンガーや洗濯バサミに吊す
・お皿を洗うとき、すべてのお皿を同時に擦り洗いし、まとめて水で流す

【仕事の場合】
・更新するファイルが複数ある場合は、先にすべて開いておく
・質問がある場合、逐一質問するのではなく、箇条書きにまとめて質問する

これを勉強に当てはめた場合は、次の例が挙げられます。
【勉強の場合】
・講義は小分けにせず、なるべくまとめて受講する
・理解度に応じて問題を選択し、同時に解く
・午前中は暗記に徹する、午後は講義を受けることに徹する、などに分ける

いかがでしょうか。
これが「第2の効率の根:まとめる―動きを最小限に留める」です。
こちらも、意識せずとも取り入れていたことがありませんでしたか。特に皿洗いがわかりやすい例でしょう。あなたも、すべての皿を一通り擦り洗いしてから、まとめて水で流しているはずです。

この第2の効率の根は、工場の機械でも活用されています。
プリンをつくる工場でも、はじめから最後まで1つずつプリンを作製する機械は存在せず、それぞれの工程に分けて、工程ごとに専用の機械が担当しています。

効率の視点から見れば、あれこれと考えながら複雑に作業する人よりも、何も考えることなく単純に作業する機械のほうが圧倒的に上ですが、これはすべて第2の効率の根によって、そうなるように仕組まれているからなのです。

 

第3の効率の根:手待ち時間をゼロにする

最後は第3の効率の根です。この根は「発生頻度が低い」ことから優先度を低くしています。かといって、この根を見逃してしまうと、極めて非効率になる恐れがあるため、慎重に取り扱うべき根でもあります。ここでも具体例を出しておきます。

【家事の場合】
・朝起きて、先に洗濯機を回してから、朝の支度に取り掛かる
・お湯を使う料理のとき、先にコンロに火をつけてお湯を温めておく

【仕事の場合】
・作業に必要なデータや資料が揃っているかを確認し、足りないものがあれば先に依頼、収集しておく
・会議が必要な場合、先に日程を確定させておく

これを勉強に当てはめた場合は、次の例が挙げられます。
【勉強の場合】
・今日、何を勉強すべきかについて書き出しておく
・講義中に出てきた疑問点については、復習するよりも前に講師に質問しておく

第3の効率の根は「Aをやっておかないと、Bができない場合」における、Aを先にやっておくことを意味しています。

AとBを同時に作業できるのであれば第2の効率の根に含まれますが、Aをやっておかないと、Bをするまでに手待ち時間が発生する場合において、AとBの順序を整えることが第3の効率の根です。

さて、これにて3本の効率の根が揃いましたが、これらは効率についての共通項であって、原理原則です。

この効率の根さえ知っておけば、あらゆる効率化の施策を自ら考え出すこともできます。

著者紹介

谷崎玄明(たにざき・げんみょう)

公認会計士、心理カウンセラー

自宅から通えるということで、地元の大学に進学後、大きな失恋を経験。そこで急にできた時間を有効活用できないものかと考え、せっかく商学部なのだから、公認会計士試験を受けようと一念発起。大原の通信講座を始め2年後、総勉強時間3635時間(平均は4000時間~)、大学4年で公認会計士試験に合格。大学開校以来、初めての公認会計士となる。
公認会計士として監査法人に勤務しながら、心理カウンセラーやKindle作家としても活躍。原始仏教と哲学を基軸に「幸せ」を追究している。
保有資格:公認会計士/日商簿記1級/日商簿記2級/日商簿記3級/心理学検定1級/一般財団法人日本能力開発推進協会(JADP)認定心理カウンセラー/上級心理カウンセラー

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