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「日々ググる」のは大人の勉強法になりうるか?

2022年07月01日 公開

成毛眞(HONZ代表、元マイクロソフト社長)

成毛眞

「倍速視聴」ならぬ「読まない勉強」を提唱するのが、元マイクロソフト社長の成毛眞氏。今は知識の9割を本ではなくネットから得ているという。ネットやYouTubeを効率よく活用した「コスパ重視」の勉強法を推す風潮もあるが、はたして効果は期待できるのだろうか。

本稿では、最新刊『39歳からのシン教養』が話題の成毛眞氏が、これまでの勉強法の「盲点」を突き、アップデートの必要性を説く。

※本稿は『39歳からのシン教養』(PHP研究所)の内容を編集、加筆したものです。

 

今の17歳と「当時のあなた」では、どちらが優秀?

教養があれば、おのずと論理的な思考も身につく。だから、多くの人が知識を蓄積して教養を高めるべきだと思うが、そうもいかない理由がある。普通に本を読んで学ぼうとしても、ほとんどの人が手遅れだからだ。

唐突で恐縮だが、学生時代の偏差値はどれくらいだっただろうか?

ウィキペディアによれば、学力偏差値は、「ある学力試験の得点をとったある受験者が、受験者全体の中で相対的にどの程度の位置にいるかを示す値」 とされる。ということは、同じ試験を受けていることが前提になる。

「高校時代の自分は偏差値が65あった」と胸を張る者がいたとしても、それは同世代の高校生の中で、相対的にどの程度の位置にいたかを示す数値にすぎず、当然、今の若者と比較しているわけではない。

たとえば、今45歳の人が17歳の時に偏差値65だったからといって、今の偏差値65の17歳と同等の知識や学力があるというわけではない。

どちらがより知識があるかと訊かれたら、筆者はおそらく今の17歳のほうが、はるかに知識量は多いと思う。

それはなぜか。日常的にネットからさまざまな情報をインプットしているから、というだけではない。高校の「教科書」がすごいのだ。

 

高校の教科書は「最先端」

あなたがもし、最小限の読書で本から教養を身につけたいと考えているのなら、「今の高校の教科書を読め」と声を大にして言いたい。

40歳前後で現在の高校の教科書の内容を知っているという方は少ないと思うが、一度、目を通してみるといい。あまりの高度さに我が目を疑うはずだ。

たとえば歴史。20年ほど前まで日本史の教科書に載っていた、馬にまたがった足利尊氏とされていた肖像画(「騎馬武者像」京都国立博物館蔵)は、実は足利尊氏ではないという説が有力になり、今では別の画像に差し替えられたことは、わりと知られている。

そもそも四緒手や太刀の柄の家紋が足利家の「二つ引両紋」ではなく、「輪違い紋」となっている点で足利家の人物ではないと想像がつくが、どういう理由なのか、われわれは足利尊氏だと教わっていた。

もし今、若者に「これは足利尊氏です」と説明したら、「おじさん、何も知らないんだね」と言われるのがオチである。

あるいは生物。現在の生物Bの教科書には、なんと大腸菌を使った遺伝子組み換えの実験まで示されている。単に知識だけはない。実際にこの実験をしている高校生もいる。

DNAの二重らせん構造が初めて教科書に載ったのは1966年だが、現在の教科書には、1962年にワトソン博士らがDNAの発見でノーベル賞を受賞してから60年間の分子生物学の知識が詰め込まれているのだ。

新事実の発見や学習指導要領の変化に合わせ、高校の教育現場で教える内容も年々レベルが高くなり、それにつれて教科書もアップデートしている。

つまり、高校の教科書を読むことで、間接的に最新情報を得られるともいえる。その意味では、高校の教科書は、ネットとわれわれを繋ぐ媒体としての価値があると言えるかもしれない。

そういった最新の教科書で学んでいる若者の知識レベルは、インターネットがなかった時代に学校教育を受けた昭和生まれよりもはるかに高い。最先端を走っている。スポーツ選手だけでなく、学術各界から次々と「奇人」が誕生しているのも納得である。

さらに、学生たちは本を読まないと言われるが、先述したとおり、ネットを介して膨大な最新知識を手にしている。「教養を身につけるためには本を読め」と言われて育ったわれわれ大人も、ネットを活用して若者に対抗していかないと、時代に取り残されてしまう。

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