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質問力を向上させるために効果的な「自分への問いかけ」とは?

徳吉陽河(一般社団法人コーチング心理学協会代表理事・講師)

2025年04月03日 公開

質問力を向上させるために効果的な「自分への問いかけ」とは?

相手との信頼関係を築くには「質問」をすることが重要です。質問力を向上させるにはどうしたらいいのでしょうか? 本稿では、書籍『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』より"質問力を向上させるセルフトーク"について解説します。

※本稿は、徳吉陽河著『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』(総合法令出版)の一部を再編集したものです

 

質問力向上のカギは「練習」と「自分への問いかけ」

「質問力は、誰でも身につけられるでしょうか?」

ときどき、このような質問をされることがあります。結論を述べると、質問力は誰でも身につけられるものです。ただし、なかには身につけるのに時間がかかる人もいます。

たとえば、先生や両親が質問を受けつけないような環境で育った子どもが当てはまります。「従順であることが当たり前」だと感じていたり、遠慮しすぎたりする人には、質問力が身につくにしても時間がかかる恐れがあります。

質問することに慣れていないだけということもあります。つまり、どのような人であれ、慣れれば誰でも質問力を手に入れることができます。

では、この質問力はどのように向上していけばよいのでしょうか。

その質問力向上のカギは、工夫とチャレンジです。

質問することが苦手な人は少し前向きになって、友だちや家族に質問を投げかける回数を増やしたり、初対面の人が集まる場所に足を運んだりしてください。質問はコミュニケーションの一つですので、多少の苦手意識があっても、失敗を臆することはありません。失敗しても次の工夫につながります。

現在は、ご近所さんや同僚など、人と人とのつながりが脆弱になりがちです。目の前に人はいるのに、心の中で孤独を感じてしまう人はこれから増加していくと思います。

人と人とのつながりがあれば、自分の存在意義も生まれやすくなりますし、大きな悩みがあってもその悩みを小分けにして相談することもできるかもしれません。質問力を向上させるという目的に限らず、少しだけでも人とつながる場所に行ってコミュニケーションを図ることが大切になります。

コミュニケーションは「体験」です。

積み重ねれば積み重ねるほど経験値が貯まるものですので、失敗を恐れずどんどん行動をしていきましょう。仮に失敗したとしても、考えて、自分自身に質問を行えば、驚くほど質問力は向上していきます。

失敗も経験しなければ得ることはできませんし、行動したから失敗することができたと、前向きにとらえていきましょう。

人はAIとは異なり、失敗から気づくことができる存在です。失敗も経験値になります。失敗から得られた経験や工夫をすることは生きていくうえで、かけがえのない強みになります。

質問力を身につけるうえでもう一つ大切なことは、自分自身に質問をするセルフトークです。セルフトークとは、自分の中で自分自身に質問をすることで、答えを導き出したり、漠然とした悩みを正確な悩みとして変換したりすることができます。

そして、このセルフトークをするタイミングとして特におすすめしたいのが、ネガティブな気持ちに支配されてしまったときです。

「もう自分はダメだ」という自分の声に対して、「今はピンチだけど、どこかに可能性やメリットはないか?」
「転んでもただでは起きないためには何ができるか?」などと前向きに問いかけるのです。

こういった質問は、「レジリエンス」に有効です。レジリエンスとは逆境や困難に立ち向かい、物事をポジティブにとらえるための心理的リソースです。質問の形だけでなく、自分自身への呼びかけや説得もレジリエンスに有効です。

負けん気が強い人でしたら、「もう自分はダメなのか? いやそんなことはない」といった言葉で自分を鼓舞するのもいいでしょう。ネガティブな言葉に対して、自分を鼓舞することで、前向きになれることが研究でわかっています。

繊細な人の場合は、「今はちょっと休憩して、またがんばろう」といった言葉をかけて、自分自身にそっと寄り添ってあげるのもいいと思います。

このように自分の性格をよく把握して、自分のタイプに応じて自分への質問、投げかける言葉を変えていくことが大切です。

少しでも悩んだり、気になったことがあったりしたら、自分に質問や言葉がけをしていくことで、行動や思考が次第に変化していきます。「現在」の自分とちゃんと向き合うことで、少しずつ未来が変化していくのです。

それと同時に、他者への質問力も向上していくので一石二鳥といえます。ここで、心理学に基づいて作成した「セルフトーク」のチェックをしてみましょう。この尺度は、あなたのセルフトークスキルを10項目で評価します。各項目について、5段階評価で回答してください。

 

心理学に基づいて作成した「セルフトーク」のチェック

【合計点が24点以下】

セルフトークスキルが低めと考えられます。自分自身への否定的なイメージが強く、課題解決にセルフトークを活用できていない可能性があります。まず、ネガティブなセルフトークを前向きなセルフトークへ変換する意識をもちましょう。

【合計点が25〜34点】

セルフトークスキルは平均程度です。自分自身への肯定的なイメージをもちはじめていますが、課題解決にセルフトークを十分に活用できていない可能性があります。

【合計点が35点以上】

セルフトークスキルが高いと考えられます。自分自身への肯定的なイメージをもち、課題解決にセルフトークを効果的に活用できています。結果において、低いと感じたところは、成長するための伸びしろと考えましょう。

自分自身が低めととらえているだけかもしれませんので、成長するためのヒントになります。できるだけ、前向きに考えながら成長へとつなげていくのです。

 

著者紹介

徳吉陽河(とくよし・ようが)

一般社団法人コーチング心理学協会代表理事・講師

一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会代表理事・講師
専門分野はコーチング心理学、ポジティブ心理学、キャリア心理学、認知科学など。資格は、コーチング心理士、公認心理師、キャリアコンサルタント、ポジティブ心理療法士、認定心理士(心理調査)など多数。クライアントやコーチ・カウンセラーがお互いに前向きになるようなウェルビーイングや能力の向上、自己成長の支援を行っている。海外の心理尺度の翻訳、実用的な心理テストや性格診断の開発をし、WEBサイト『ペルラボ』にて、心理学とデータ解析に基づいた心理尺度、ストレス研究などを行う。

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