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睡眠不足を気にしすぎ? 和田秀樹さんがすすめる「考えすぎない生き方」

和田秀樹(精神科医)

2025年05月08日 公開

睡眠不足を気にしすぎ? 和田秀樹さんがすすめる「考えすぎない生き方」

テレビやネットなどで頻繁に取り上げられる睡眠や食事等に関する健康情報。意識することは悪いことではないけれど、気にしすぎると逆効果になりかねません。精神科医の和田秀樹さんに解説して頂きます。

※本稿は『仕事も対人関係も 落ち着けば、うまくいく』(クロスメディア・パブリッシング)より一部を抜粋編集したものです。

 

睡眠不足に対するソリューションは単純明快

緊張やストレスを抑えて、気持ちを安定させるためには、十分な睡眠が大切ですが、あまりにも睡眠不足を気にするのは逆効果です。

アインシュタインは12時間睡眠で、エジソンは3時間睡眠だった...といわれていますが、適切な睡眠時間には個人差があります。

睡眠不足だから気持ちがイライラするのではなく、気持ちが落ち着かないから、睡眠不足になっている可能性もあるのです。

私のところにも、不眠の相談に来られる方がたくさんいます。

話を聞いてみると、「1日5時間しか寝られないんです」とか、「眠りの質が悪いらしくて、夜中に何度も目が覚めるんです」という人が多いのですが、精神科医としては、「何も問題はありませんよ」とお伝えすることになります。

睡眠には、それを気にすればするほど、眠れなくなるという性質がありますから、不安を解消する一番の方法は、深刻に考えないことです。

1日5時間でも寝られていて、今この瞬間に眠くないのであれば、問題視するようなことはありません。大事なのは考えすぎないことで、眠くなったら、仮眠をすればいいのです。

睡眠の不安を訴える人が増えているのは、テレビのワイドショーなどが、睡眠時間とか睡眠の質を大げさに取り上げていることに原因があります。

どこかに不調があるならば、睡眠時間や睡眠の質を疑ってみる必要がありますが、どこも悪くなく、眠くもないならば、何も心配する必要はありません。

日中に眠さを感じるならば、「今日は早く帰って寝る」と考えることです。身体が何となくだるいならば、「昼寝」をすることです。睡眠不足に対するソリューションは単純明快ですから、あまり難しく考える必要はないのです。

 

無理な我慢をせず、好きなものを食べる

人間も含めて、動物は飢えていると、交感神経が優位になって、イライラしたり、気分が落ち込んだりします。

それとは逆に、お腹が満たされると、気持ちが落ち着いて、リラックスモードに入ることができます。

テレビやネットには、糖質制限や脂質制限などの健康情報が氾濫していますが、心を安定させて、イライラせずに毎日を送るためには、食べたいものを食べることも有効な手段といえます。

食べることが悪いのではなく、問題なのは偏った食事による「栄養不足」です。

極端なダイエットによって、ブドウ糖やタンパク質が不足すると、イライラの原因になります。

日常的な過食は肥満の元ですが、「少し太めの人はイライラしにくい」というのは、イメージの問題ではなく、理屈にかなっていて、好きなものを食べて楽しく過ごしていた方が、免疫力を高めることにもなるのです。

気持ちを落ち着かせるためには、次のような食の知識が役立ちます。

①緑茶や紅茶に含まれる「テアニン」はリラックス効果がある

②鮭やサバなどの青魚に含まれる「オメガ3脂肪酸」は抗鬱効果が期待できる

③果実に含まれるビタミンCには、ストレスに対する抵抗力を高める効果がある

④牛乳、チーズ、肉、赤身魚、卵、大豆製品には、幸福ホルモンのセロトニンの生成を助ける「トリプトファン」が多く含まれている

注意が必要なのは、こうした効果には、すべて個人差があるということです。

コーヒーなどに含まれるカフェインによって、気持ちが落ち着く人もいれば、逆に神経が興奮する人もいます。

カルシウムを摂取すると、神経が安定する人もいれば、あまり効かない人もいます。

大事なポイントは、これらの栄養素が足りていなければ、摂取すればいいだけのことで、そればかりを取りすぎることは賢明ではありません。

基本的には、無理な我慢をせずに、自分の好きなものを食べて、栄養状態が足りていることが、身体とメンタルの健康に役立ちます。

 

我慢をしないで「いい思い」をする

たくさんの高齢者と向き合ってきて、私が切実に感じているのは、子どもに財産は残せても、自分にとっての財産は「思い出」しかないんだな...ということです。

お金はあの世まで持っていけませんが、思い出だけは、亡くなる間際になっても、自分の脳裏に残ります。人生の最期に思い出しか残らないならば、無理に我慢をしないで、「いい思いをたくさんした方がいいな」と考えています。

「あれをやりたかった」とか、「あそこに行きたかった」と思い残すことがありそうならば、今からでも、やることはできます。

現在のプレッシャーや、今やらなければならないことに、焦る必要はありません。それがうまくいかなくても、長い人生にとっては、たいした問題ではないからです。

今の一瞬を楽しむことができれば、それが「いい思い出」になって残る...というのが、精神科医としての私の人生観です。

塩分の高いものを食べるとか、私のように毎日ワインを飲む人に対して、多くの医者は、「このままでは長生きできない」といいますが、そんなことは、実際には誰にもわからないことです。

人の体質はそれぞれですから、今の我慢が必ず報われるとは限りません。

無理な我慢をせず、幸せに生きて、免疫力が高い人の方が、結果的に長生きするというケースは、いくらでもあります。あのカーネル・サンダースは、90歳まで長生きしているのです。

将来の幸せを考えても、それがどうなるかは誰にもわかりませんが、今、目の前にある、「食べたいもの」、「飲みたいもの」、「やりたいこと」を我慢せずに楽しむ幸せは確実にあります。

我慢しないで「いい思い」をすることの積み重ねが、自分の人生を楽しく、豊かなものにしてくれるのです。

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