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“貧乏暇なし”状態のフリーランスは多い? 働き詰めの生活が変わる4つの考え方
2025年07月18日 公開
自由なイメージの強いフリーランスという働き方。自分の裁量で仕事を増やしたり減らしたりできる一方、休み方も自分次第。先々への不安から、つい仕事を詰め込みすぎて休み方に悩む人も多いかもしれません。
フリーランスでライターをする曽田照子さんもその一人だったそう。そんな曽田さんが著書『フリーランスの休みかた 仕事が減る不安から解放される41のヒント』にて、フリーランスが「どう休むか」を軸に、より健康的で充実した働きかたを模索するヒントを紹介しています。同書より、フリーランスが休むための具体的な働き方についてご紹介します。
※本稿は、曽田照子著『フリーランスの休みかた 仕事が減る不安から解放される41のヒント』(インプレス)より内容を一部抜粋・編集したものです
シャドウワークの時間も「仕事」時間に含めて考える
労働時間の話になると、「私、そんなに働けていない」という声が聞こえてきそうです。
ゆっくり休みをとっているために労働時間が少ないのであれば「休みかた」としては問題ありません。しかし実際には、家事や育児、介護などで忙しく、休めないでいるという人も多いのではないでしょうか。
ここで「シャドウワーク」という概念を紹介します。シャドウワークはオーストリアの哲学者イヴァン・イリイチが提唱したもので、おもに家事労働や妊娠・出産、子育て、介護など「賃金が支払われない影の労働」と定義されています。
通勤や自己研鑽など、「労働を支えるものではあるけれど報酬が得られないもの」も含まれると考えられます。
たとえば、収入を得るための仕事が1日6時間だったとしても、幼い子どもがいたり、家族の介護が必要だったりで、シャドウワークとしてさらに6〜7時間働いていれば、過労死ラインを超えてしまう計算になります。
特に家庭を持っている人や、子育てや介護をしている人は、シャドウワークも労働時間に含めて考えてもいいと私は考えます。
シャドウワークは「影の存在」ではなく、れっきとした「仕事」です。実際にもしシャドウワークをしなければ、生きていく基盤としての生活が成り立たちません。そうなれば、報酬を得る仕事もできないからです。
会社にもシャドウワークともいうべき仕事があります。たとえば社員食堂の運営や、社内のエレベーターやロビーなどの管理、トイレ清掃なども、人が快適に働くため必要な仕事です。総務部などは、これらの仕事を自社内でこなしたり外注する仕事を業務としていますよね。
何から何まで自分でやることが基本のフリーランスも、こういったシャドウワークの時間や、シャドウワークを外注手配する時間は、「仕事のうち」と考えるほうが理にかなっていると私は思います。
シャドウワークのなかには当然、日々の家事が含まれます。そして家庭内の構造的な問題として、在宅で仕事をしているフリーランスに家事の負担が偏りがちです。
「自宅にいるんだから掃除くらいできるでしょ」「ずっと家にいるんだから料理も作れるよね」とどんどん引き受けることになっていないでしょうか。
家で仕事をしながら家事をすべて引き受けるのは、大きな負担です。特に子育てや介護がある家庭では、その負担は膨大です。
家族で話し合い、家事を分担しましょう。
ときにはやるべきことを減らし、休むことを選択して、自分の心身の健康を優先するのも必要です。
必要なときには周囲に助けを求めましょう。家事代行サービスやベビーシッターを利用するなど、外部のサポートを取り入れることも考えてみましょう。
定時の就業時間を決めてみる
朝(というか昼近くになってからやっと)起きて、何となくダラダラお茶を飲んでからパソコンの前に座り、仕事をしながら何か食べて、夜は「もうちょっと切りのいいところまで」といいながら深夜まで作業する……。
これはある日の私の行動ですが、あなたも、そんなメリハリのない働きかたをしていないでしょうか?
フリーランスは、仕事と休みの境界が曖昧になりがちです。時間を決めずに作業を続けていると、休むタイミングを逃してしまいます。私自身も締め切りに追われ「あと少しだけ」と思いながら夜更かしを続け、次の日の午前中は眠くて作業ができない、となってしまったことが何度もあります。
休むために、会社員のように、定時の就業時間を決めてみてはいかがでしょうか。たとえば、毎日9時から18時と決めたら、それ以外の時間はできるだけ仕事をせずに過ごします。ときには早出や残業をすることはあるでしょうが、時間でいったん終了するという習慣をつけることが大事です。
フリーランスとして仕事を続けることは短距離走ではなく、マラソンのようなものです。どう体力を温存するか、どこでスパートをかけるか戦略的に考えなければなりません。慢性的に夜遅くまで無理を続けていると疲労が蓄積し、気づけば仕事の質が落ちてしまいます。適切なタイミングで仕事を終える習慣を身につけることで、心も体も次の日に向けて準備が整います。
決まった時間内に仕事を終えることで、夜遅くまで働いてしまうことを防ぎ、体力と集中力をキープできます。
また「この時間までに仕事を終わらせたい」という意識が働くため、集中して仕事に取り組め、効率的に仕事が進みます。決めた時間に仕事を終える習慣を続けると「自己管理ができている」という達成感 が得られます。
この達成感は自己肯定感につながり、次の仕事への意欲を高める原動力にもなります。オンとオフのバランスがとれた生活は、長期的に見てもいいことしかありません。
休むために前倒しで仕事する
遊びに出かけたはずなのに、仕事の遅れが気になって「これじゃあ遅れた作業を取り戻しているほうが精神衛生にいいんじゃないか」と思ったことはありませんか?せっかくの休日も仕事が遅れ気味では、気になってゆっくり休めません。
心置きなく休みを楽しむためには、仕事を前倒しにして余裕を作ることがおすすめです。
余裕のあるスケジュール管理を意識することで、休む時間を確保できます。それだけでなく、見直す時間ができて納品物の質は向上しますし、クライアントからの急な変更依頼にも対応できます。スケジュールを前倒しで進行するのは良いことずくめです……とはいってもそれがなかなか難しいのですが。
いつもできるわけではありませんが、できる限り前倒しのスケジュールで進行できるよう工夫をしておきましょう。
●前倒しを実現するコツ
・仕事の先送りはしない
「あとでやろう」と思うと、結局ギリギリになりがちです。時間が確保できるときには、できる限り作業をすすめ、後で余裕を持つことを心がけましょう。すぐにとりかかれないときは「いつやるか」を決めてスケジュールに記入しておく……忙しくてその判断もできないときは「『いつやるか』を、いつ決めるか」をスケジューリングするのがおすすめです。
・仕事を細分化する
締め切りに向けた大まかな計画ではなく、作業を細分化し各ステップの締め切りを細かく設定します。進行状況を常に把握することで、どの段階で前倒しができているか、あるいは遅れが出ているかを確認しやすくなります。
・タスクの優先順位を明確にする
細分化した仕事の優先順位を検討します。優先順位を明確にすることで、いま何をすべきかがはっきりします。重要かつ緊急性の高いタスクから取り組むことで、余裕のある状態を作りやすくなります。
・締め切りを内部と外部の二段構えで考える
締め切りは「内部向け締め切り」と「外部向け締め切り」の二段構えにするのがおすすめです。「内部向け締め切り」はできる限り前倒しの締め切りです。これはクライアントには伝えません。クライアントに伝える「外部向け締め切り」には数日、あるいは数時間の余裕を持たせましょう。これにより、早めに提出して喜ばれるだけでなく、提出直前まで確認や修正を行い、クオリティをさらに高めることも可能です。
また、突発的な出来事で提出が遅れる場合でも、クライアントに伝えた期間内には間に合うよう調整ができるため、余計なトラブルを避けられます。早めに納品した後の解放感と、クライアントからの感謝や賞賛の言葉は、クセになるほど嬉しいものです。場合によっては、前倒しなど考えられないできないギリギリ状況ももちろんありますが、常に前倒しを意識して動くことが大事です。
休めない本当の理由は「単価」ではないですか?
忙しくて休みがとれないのは「仕事が途切れずにある」ということで、良いことのように思えるかもしれません。
しかし、ここで、あえて厳しいことを言わせていただきます(厳しすぎて、私自身にグサグサ刺さるブーメランでもありますが)。仕事が途切れないのは本当に良いことでしょうか?
その忙しさは、自分の能力や努力を薄利多売しているせいではないかと、一度疑ってみる必要があります。たとえば、時給500円で20時間働けば1万円になりますが、時給1万円であれば1時間で同じ1万円を稼げます。これは極端な例ですが、フリーランスにとっては意外と発生しがちな問題です。
ひとつひとつの仕事に予想以上の時間をかけてしまい、結果として時間単価が下がってしまっていると、どれだけ働いても生活に十分な収入が得られず、貧乏暇なしの状態に陥ってしまいます。
この負のスパイラルに気づかないまま忙しさに追われている人が案外多いように思います。
今の忙しさだけに焦点を当てるのではなく、立ち止まって、考えてみませんか。「なぜ今こんなに忙しいのか」「この仕事はいくらなのか」「どれだけの労力をかけるべきなのか」これらの点を冷静に見直し、実際に計算するのです。このようなシビアな計算は経営者にとっては息をするように当然のことですが、それができないフリーランスが多いのです。
この仕事は損か、得か、損を度外視してやるほどの価値(宣伝効果やスキルアップ)があるのか、その判断ができなければ、いつまでたっても安く使われ、貧乏暇なしで、休む時間を確保できません。
さらに、クライアントから「この人は安い人」という評価が定着してしまうと、後から単価を上げるのは難しくなります。ギャラが変えられないなら、2つの方向で努力が必要です。
1.新規開拓
1つ目は新しいクライアントを探し、ギャラの高い仕事を得るための営業です。日々の忙しさに流されず、忙しいときほど営業のタネをまいていきましょう。私の経験ですが、忙しいときほど営業活動の効果があります。忙しいことで変にガツガツしなくていいため余裕があるのと、何となく忙しい人特有の「デキるオーラ」のようなものが出て、良いほうに作用するのではないかと思っています。
2.時短・合理化
もうひとつが、できるだけ少ない時間と労力で同じ仕事をこなす合理化です。受け取るギャラが変わらなくても、AIを活用したり、外注できる作業を他人に頼んだりして、その仕事にかける自分の時間と労力とコストを下げていけば、収入アップと同じ効果が見込めます。自分の価値を見直し、現状を冷静に判断していきましょう。



