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東中野・松本湯とSmart相談室が仕掛ける“相談したくなる銭湯” 心も整う体験を

PHPオンライン編集部

2025年10月08日 公開 2025年10月08日 更新

東中野・松本湯とSmart相談室が仕掛ける“相談したくなる銭湯” 心も整う体験を

オンラインで従業員サポートを行う企業向けサービス「Smart相談室」が、東中野の老舗銭湯「松本湯」とコラボレーションし、イベント「もやもや洗湯 ~洗い流して、心ととのう~」を10月13日(月)まで開催しています。

湯に浸かりながら自分の気持ちを見つめ直す――そんな体験を通して、"相談すること"のハードルを下げたいという思いが込められています。開催に先立って行われたトークでは、Smart相談室代表・藤田康男さんと松本湯店主・松本元伸さんが、銭湯とメンタルヘルスの新たな可能性を語り合いました。

 

もやもやを“洗い流す”

もやもや洗湯

10月10日の「世界メンタルヘルスデー」にあわせて開催中のイベント「もやもや洗湯」は、東京・中野区にある銭湯「松本湯」とコラボレーションし、誰もが自分の気持ちに向き合える時間を提供する試みです。

企画を担当したSmart相談室の広報・宮田有利子さんは、2000名以上のユーザーに実施したアンケート結果をもとに、このプロジェクトの背景を語りました。

「アンケートでは、多くの方が『自分の気持ちやモヤモヤに向き合う機会がない』と感じていることがわかりました。とくに40〜50代の方々では、いくつもの悩みを抱えながらも、誰かに相談できないという声が多く寄せられています」と宮田さん。

Smart相談室が行った40〜50代の男女415名への調査では、実に40%以上が「悩みがあっても我慢する」と回答しました。職場での責任の増加、家庭や介護、老後資金といった現実的な課題を抱えながら、相談できる相手がいない――。「この世代が、いま最も孤立しやすい」と指摘しました。

世界的にも幸福度が最も低くなるのは48歳前後と言われており、40〜50代のメンタルヘルスは社会全体の課題とも言えます。Smart相談室としては、悩みが深刻化する前に当たり前に相談できる文化を広めたいと考えています。その一環として、"もやもや"を"洗い流す"という銭湯ならではの体験を組み合わせたのが、今回の企画です。

もやもや洗湯

このイベントでは、銭湯のあらゆる場所に「自分と向き合う」ための仕掛けが散りばめられています。脱衣所や洗い場には、心の状態や悩みに気づくきっかけとなる「問いかけ」のメッセージが掲示されています。

もやもや洗湯

休憩スペースには「スマソウポスト」が設置され、来場者は今感じているモヤモヤをはがきに書いて投函することができます。わざわざ相談するのは気が引けるという人でも、気持ちをじっくり吐き出すことができる――Smart相談室ならではの試みです。

また、期間中には、はがきを投函した方の中から抽選で10名に銭湯入浴券(5500円分)がプレゼントされます。銭湯を愛する人にも嬉しい企画です。

 

銭湯では何も考えずにボーっとする時間を過ごしてほしい

もやもや洗湯

松本湯は、東中野で三代にわたり続く老舗の銭湯です。2021年にクラウドファンディングを経て全面リニューアルを果たし、伝統と新しさを併せ持つ空間へと生まれ変わりました。清潔感のある内装や心地よいサウナが評判を呼び、銭湯・サウナ愛好家のあいだでも高い人気を集めています。

店主の松本元伸さんは、「湯船に浸かることを、もっと日常の習慣にしてほしい」という思いを話してくれました。

忙しさのあまり、ついシャワーで済ませてしまう人が多い現代。松本さんは「数分でもお湯に浸かるだけで、体も心も軽くなる」と話し、湯に浸かることが"心のメンテナンス"にもつながると強調します。湯の中でぼんやりと過ごす数分間が、思考をリセットし、気持ちを整える時間になる。そうした"自分と向き合う小さな時間"を取り戻してほしいという願いを持っています。

もやもや洗湯

松本湯の特徴について、トークの中で話題になったのは「温度」でした。松本さんによると、松本湯では様々な温度のお風呂を用意することにこだわっているといいます。熱めが好きな人もいれば、ぬるめを好む人もいる。入り方も人それぞれで、熱い湯とぬるい湯を行き来する人、サウナのあとに長めに湯船に浸かる人などさまざま。とくにサウナの"ちょうどいい温度設定"には力を入れているそうで、サウナ愛好家たちが何度も訪れる理由のひとつになっています。

もやもや洗湯
松本湯店主・松本元伸さん

松本さんは「銭湯は日本の文化であり、公衆衛生を支えてきた場所」と語ります。かつて銭湯は、地域の人たちが自然に集まり、日常を語り合う"社交の場"でもありました。そうした文化を受け継ぎながら、現代の暮らしに合わせた形で銭湯を開き続けることが、自分たちの使命だといいます。松本湯では、昔ながらの温もりを守りつつ、清潔さや快適さなど、現代人の感覚に寄り添う工夫も欠かしません。

 

40〜50代が「相談できない」背景には「弱いと思われたくない」世代特有の意識が

もやもや洗湯
Smart相談室代表・藤田康男さん

Smart相談室の藤田康男さんは、今回の企画を通じて「10月10日は"銭湯の日"であり、実は世界メンタルヘルスデーよりも前に制定されていたことを初めて知った」と話します。偶然のようでいて象徴的な日程に、「心と体を整える文化が日本にはもともとあった」と気づかされたといいます。

藤田さんは「銭湯が持つ開かれた空気の中に、相談文化の原点がある」とも語りました。かつて銭湯は、人々が湯に浸かりながら自然と会話を交わし、悩みを打ち明ける場でもありました。現代では人とのつながりが希薄になり、相談が"特別な行為"になりつつありますが、「本来はもっと気軽でいい」と藤田さんは強調します。

Smart相談室の調査では、40〜50代の多くが「相談できない」と感じており、背景には「弱いと思われたくない」という世代特有の意識があると分析します。「銭湯のように、構えずに立ち寄れる場所があることが大切。湯上がりの安心感や解放感の中で、自分の気持ちに気づける」。心と体を分けずに整えるような体験こそ、いまの社会に必要なケアの形かもしれません。

 

誰でも当たり前に相談できる文化を育てたい

もやもや洗湯

Smart相談室は、人と組織のあいだに生まれる"相談のしづらさ"を解消することを目的に設立されたサービスです。代表の藤田さんは、前職で組織マネジメントを担当していた際、退職者やメンタル不調者が相次ぐ現場に直面しました。産業医の導入やアンケートによる社員調査など、企業としての対応は進んでも、「面談が設定されたときには、すでに状態が悪化している」現実に疑問を持ったといいます。

「もっと早く相談できていれば変わっていた」。そう話す人たちの声から、藤田さんは"日常的に相談できる仕組み"の必要性を痛感しました。調子が悪くなってからではなく、悪くなる前から話せる場所をつくる――その発想から生まれたのがSmart相談室です。

現在は全国約800社、15万人以上が利用し、累計相談件数は3万件を超えています。仕事の悩みだけでなく、家族、恋愛、将来など、どんなことでも気軽に話せる環境を整え、「相談を特別なことにしない社会」を目指しています。

藤田さんは「相談のハードルを下げるため、アプリのUIはあえてシンプルで親しみやすいデザインにしている」と話します。カウンセリング系サービスの多くは文字情報が中心で堅い印象になりがちですが、メンタル不調の人にとってはそれ自体が負担になりかねません。そのため、Smart相談室では"わかりやすさ"を重視したデザインにこだわっているといいます。

一方で、機密性の確保にも徹底しています。相談内容は原則として会社側には共有されません。「社員の悩みがわからないなら導入できない」と言われることもあるそうですが、それでもその姿勢を貫くのは、「誰もが安心して相談できる文化を育てたい」という理念が根底にあるからです。

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銭湯という日本の文化に触れながら、自分の心と体を見つめ直すきっかけとなる今回のイベント。お湯に浸かるように気持ちをほぐし、「相談する」ことをもっと身近に感じる人が増えていけばと思います。

【松本湯】
・営業時間
平日、土曜 14:00~24:00
日曜    8:00~12:00/15:00~24:00

・定休日
木曜(祝日の場合は営業。翌日振替休業)

詳しい情報は公式ページをご確認ください

https://www.matsumoto-yu.com/

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