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[仕事ダイエット!] 残念な人ほど「資料・メール」に時間をかける

山崎将志(ビジネスコンサルタント)

2013年01月29日 公開 2024年12月16日 更新

文章は書き出しが実は最も難しい

文章を書く際に一番難しいのは書出しである。どれだけ経験を積んだ人でも文章の書き出しや、資料の1枚目をどう描くかに悩むことが多い。なぜ書き出しが難しいかといえば、論理的ではないからである。あらゆる書き出しは常に突然始まる。その後は論理的に流れ、書き手と読み手の興味をつなげていくことができる。

あなたと読み手が同じテンションにあることは、まずないと考えるくらいでちょうどいい。文章は結論から書きたいものだが、その気持ちを抑えてあなたと読み手と課題認識を共有することが重要だ。書き出しは突然始まりながらも、読み手が「そうだ、そうだ」と徐々に自分と同じテンションになってもらうように書く必要がある。

文章の導入部分は読み手に対して、まず全体像を理解してもらい、その先を読みたい、あるいは読まねばならないと思わせる気持ちにさせるという、非常に重要な役割を担っている。そのことでさらに書き出しの難しさが増すのである。

その先を読みたい、読まなければならないと相手に思ってもらわないことには始まらない。もちろん、ビジネス文書のなかでも義務的、強制的に読ませることができるものもあり、それに関しては、書き出しにはそれほど気を配らなくてもよい、という意見もある。

しかし、そうであっても、内容的に必要だとか、読みたいと思わせなければ、相手は腹落ちしない。腹落ちしないことは、頭で理解しても実行になかなか移さないか、中途半端に形だけ実行するという結果になりがちだ。

 

導入にはおすすめのパターンがある

実は書き出しには、その役割を発揮させるための構造、あるいはそのフォーマットとも呼べるようなパターンがある。

そのパターンの順番とは、まず読み手に、読み手自身がよく知る状況を思い起こさせる。その中でこれもまた読み手が同意する課題認識が提示され、それが疑問を持つきっかけになる。そしてその疑問に対して、これから続く文章がそれに答えようとしていることを示す、という構造である。

整理すると以下のような順番だ。

(1)状況設定
(2)課題認識
(3)疑問の投げかけ
(4)解答

この構造に沿って書かれた導入部分を例示しよう。

〔状況設定〕電車の中で昔想いを寄せていた女性(男性)を見かける。
〔課題認識〕当時と今ではあまりに自分の外見が変わってしまい、恥ずかしい。
〔疑問の投げかけ〕さてどうする?
〔解答〕ふと、彼女の(彼の)携帯ストラップのロゴが目に入った。私の取引先だ。

この先の展開はどうなるんだろう、と少なくとも思ってもらえただろう。そこに対して答えていけば、話は先に進められる。

読み手はこの時点ですでに、この導入部分に続くすべての記述が、キーメッセージを説明するためのみに存在することを知る。こうして、あなたは読み手に対して考えの全体構造を、何行かで伝えることができるわけだ。

このことから、単に検討ポイントを羅列するような導入文を書くことは、あまりお勧めできない。我々書き手に必要なのは、ストーリーを記すことで読み手の興味を喚起し、疑問に答えを与えることだ。読まれる文章の多くはこの構造に従っている。しかし書き慣れている人や、読んでもらうのに工夫の必要のない立場にいる人は、これを忘れてしまいがちだ。

ビジネスにおいては短い文章が求められているが、この導入部分には力を注ぐべきである。本題から入れとよくいわれるが、本題にいきなり入っても相手はわからないことが多い。

本題から入ってわかる相手とは、十分に文脈と情報が共有されているはずだ。それならば、口頭でちょっと話すか、2、3行のメールで済むため、文章はいらない。メールや資料には、本題に入る前の前置きが必要なのだ。

 

山崎将志

(やまざき・まさし)

ビジネスコンサルタント

1971年生まれ、愛知県出身。94年東京大学経済学部経営学科卒業。同年アクセンチュア入社。2003年独立。その後、プロフェッショナル教育の知識工房、事業再生コンサルティングのアジルパートナーズをはじめ、数社のベンチャー企業を設立。大手商社とのJVにて2008年に始めた5円コピーと、生活者総合支援サービスの「カジタク」は、2011年4月イオングループの傘下に入る。
主な著書に『残念な人の思考法』『社長のテスト』(以上、日本経済新聞出版社)『残念な人の仕事の習慣』(アスコム)などがある。また、『週刊パーゴルフ』(パーゴルフ社、『残念な人のゴルフ思考法』として同社より書籍化)『日経プレミアPLUS』(日本経済新聞出版社)に記事を連載している。

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