高学歴芸人として知られ、コンビ仲の良さでも評判のロザン。結成から30年以上たった今も変わらずにコンビを続けられる理由はどこにあるのでしょうか。12月に新刊『学力よりコミュ力』を刊行した菅広文さんは、相方・宇治原さんとは「一度もすれ違ったことがない」と話します。
二人の関係性、そして菅さんが大切にしてきた“人間関係を無理なく続けるコツ”についてうかがいました。
ロザンが“長く一緒にいられる秘訣”とは
――今回のご著書を読んでいても、「ロザンというコンビの仲の良さ」がじわじわと伝わってきます。30年以上、良い関係を続けられるのは、本当に稀有なことだと思うのですが、その理由はどこにあるとお考えですか。
【菅】"仲がいいから、やっている"からですね。
仲がいいから、この仕事をしているだけで。
仲が悪くなったら、たぶんすぐ辞めると思うんですよ。
だから今も二人で舞台に立てているのは、仲がいいということなんです。逆説的ですけど、理由はそれかな、と。
――どんなに仲が良くても、長い付き合いの中で互いの言動に違和感を抱いてしまうこともありますよね。ロザンのお二人には、そういう時期はなかったのでしょうか。
【菅】なかったですね。
ただ、長く一緒にいる秘訣があるとしたら、「何かと思うことがあったら、その場で言う。溜めない。蓄積させない」ということかなと。
「これ、後でまとめて言おう」とかすると、大きな揉め事につながる気がします。
――夫婦間や恋人同士でもよくありますよね。「溜めてから言う」と爆発する、という。
【菅】ありますよね。溜めると、人間って自分の中で膨らませるんですよ。どんどん大きくしてしまう。
だから、すぐに言ったほうが、そのままのサイズで伝えられると思います。
――お二人も、お互いにすぐ言い合ってきたんですね。
【菅】20代のときは言ってましたね。「これ、こうちゃう?」って。
でも、それもだんだんなくなってくるんですよ。お互いにわかってくるから。
今もネタのことについて「あそこ、こうしたほうが...」みたいな話はありますけど、それは別に"嫌なこと"とは違うので。
――若い頃から言い合ってきたからこそ、今はあまり言うことがなくなっていった。
【菅】僕らの場合はそうでした。
言っていたのは結局ネタの出方とか、そういう"仕事寄り"の話が多かったです。
たとえば「ご飯をくちゃくちゃ食べる」とか、プライベートな意味での注意は、お互いにあまりしてこなかったですね。
「たまたま出会って、今も仲がいいだけ」

――学生時代など、昔からの友人だと「関係を保たなきゃ」と気負ってしまうこともありますよね。
【菅】ありますよね。でも、学生が終わると、価値観ってどこかで変わるじゃないですか。
どこに就職するか、誰と結婚するか、子どもがいるかいないか......現実的な環境の変化がある。
だから、あんまり「昔から仲がいいから、今も仲良くしていなきゃ」とは思っていなくて、「その都度、その都度、今仲がいい人と仲良くしていればいいんちゃうかな」と思うんです。
――「蓄積があるから仲がいい」のではないのですね。
【菅】僕らも、たまたま出会って、今も仲がいいだけで。
「昔から仲がいいから今も仲がいい」というより、「今日も仲がいい」。そんな感覚なんです。
瞬間瞬間、仲がいい。
「昔からの付き合いやから切られへん」という考え方自体が、もしかしたらナンセンスなのかもしれないですね。
だって、そのときそのときで、会う人って変わるじゃないですか。
昔仲良かったから今も仲良い、っていうのは、それこそ幻想かもしれない。
状況が変わるから、その変わった状況の中で仲良くできる人と仲良くすればいいし、10年、20年経つと「あ、やっぱりこの人、親友やったな」と戻ることもあると思うんですよ。
だから、「30年の蓄積があるから、ずっと一緒にいる」という感じではないですね。
正直、昔どんな感じやったかも、もう忘れてますし(笑)。
今はスマホで何でも録れるから、「当時の会話、録っときたかったな」とは思いますけど。
――お互いに引きずらない、サラッとした距離感もあるのでしょうか。
【菅】それはあるかもしれないですね。
「引きずらない性格」というか、お互いのコンディションに干渉しすぎない、みたいなところはあると思います。
――宇治原さんの知的な立ち位置と、菅さんの会話力・発想力が合わさって独自のコンビらしさが生まれていると感じています。菅さんご自身は、「相方に助けられている」と思う場面はありますか。
【菅】あんまり、そういう感覚がないんですよね。
なんか、"一緒の体"みたいな感覚で。
「今日、左手頑張ったな」とか「右手すごかったわ」とか、いちいち思わないじゃないですか。
――確かに、一切思わないです(笑)。
【菅】それに近い感覚ですね。
もちろん、調子が悪い日もあると思うんですけど、「お前今日、調子悪いな」とはわざわざ言わない。
こっちも調子悪い日があるわけで、お互い様やろうな、くらいの感じです。
――理想的なパートナーシップに聞こえます。「そんな相手が誰にでもいたらいいのに」と思ってしまいます。
【菅】でも、それって別に人間じゃなくてもいいと思うんですよ。
今の時代やったら、ChatGPTでもいいかもしれないし、推しでもいい。
「これがあると自分は機嫌よくいられる」という存在なら、人じゃなくても全然いいと思います。
苦手な人がいる環境での心の保ち方
――これまでのお話を聞いていると、「菅さんって苦手なタイプの人、いるのかな?」と思ってしまいます。本の中からも、どんな人に対しても状況を見極めて、うまく対応している印象を受けました。
【菅】たしかに、あまり「このタイプは苦手」と考えたことがないですね。
そんなに深く人と関わらないからかもしれないです。
「同じ会社にいるだけ」ぐらいの距離感の人も多いでしょうし。
――学生時代などを振り返っても、「この人は苦手だな」と感じる人もあまりいなかったですか?
【菅】いなかったですね。
言われてみれば、「あの人苦手やな」と思う人はいなかった。
自然と距離を取れていたのかもしれません。実害が出ないくらいの距離感を、なんとなく保っていたんでしょうね。
あとは、中学・高校だったら3年間とか、期間が決まってるじゃないですか。
「どっちみち3年やし」と思える。
でも会社だとそうはいかないから、難しいですよね。
――転職するほどではないけれど、なんとなく苦手......という人が一番厄介かもしれませんね。
【菅】そうですよね。「むっちゃ苦手で転職しようかな」と思うぐらいなら、まだ行動できますけど、「転職するほどでもない苦手な人」が一番しんどいと思います。
――菅さんだったら、そういう相手とどうやって向き合いますか?
【菅】多くの場合は嫌な人って「一人か二人」やと思うんですよ。
そこで大事なのは、全体を俯瞰できているかどうか。
一個嫌なことがあると、そこばっかり見る人っているじゃないですか。でも、会社全体で見たら何十人、何百人といるわけで、「無理」な人は何パーセントなんや、って話なんですよ。
僕はそういう捉え方をしますね。
――たしかに、「嫌な人」だけにフォーカスすると、しんどくなりますね。
【菅】バレーボールの川合俊一さんが言ってたんですけど、バレーボール選手ってケガが多いじゃないですか。
そのときに「痛いところ」ばかり探すんじゃなくて、「痛くないところ」を探すんですって。
「ここは痛くない。OK」って。
痛いところだらけやからこそ、「痛くない場所」を見つけていく。
それを聞いたとき、すごくかっこいいなと思ったんですよね。
――「大丈夫な部分」を見つけるんですね。
【菅】そうそう。「嫌なことばっかりだ」と思い込むと、大丈夫なところが見えなくなる。
毎日憂鬱になっていくのは、やっぱりもったいないじゃないですか。
だったら「どこがOKなのか」を探したほうがいい。
嫌いな人がいるとして、その人のために自分が嫌な思いをし続けるのって、めっちゃ嫌じゃないですか。
だから、僕は「自分の状態が良くなるほう」を探しますね。
――自分が少しでも楽になれるほうに、意識を向ける。
【菅】そのほうが、同じ環境でもだいぶ過ごし方が変わると思います。
(取材・編集:PHPオンライン編集部 片平奈々子)







