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若手時代の苦労話がない...お笑いコンビ・ロザンが「失敗知らず」な理由

ロザン(お笑いコンビ)

2023年10月16日 公開

若手時代の苦労話がない...お笑いコンビ・ロザンが「失敗知らず」な理由

漫才、クイズ番組、ニュースのコメンテーター、YouTube――。多方面で活躍するお笑いコンビ「ロザン」の"司令塔"である菅広文氏は、「芸人としてなぜ"失敗"するのかわからない」という。どういうことなのか。

100点をめざさない生き方について、菅氏の著書『京大芸人』シリーズおよび最新著『京大中年』のモデルである相方・宇治原史規氏とともに語る。

聞き手:Voice編集部(中西史也)

※本稿は、『Voice』2023年10月号より抜粋・編集したものです。

 

100点をめざさない

――菅さんの著書『京大中年』のなかで、もし芸人として早く売れなかったらすぐに辞めていた、でも二人で何かはしていたと思う、と書かれていますが、芸人以外の選択肢について、二人で具体的に話はされていたのですか。

【菅】いえ、ちゃんとは話していなかったです。ただ、芸人を辞めたら宇治原さんと一緒に会社を立ち上げるなり、何かはしていたかもしれないですね。それがまたうまくいかなくて、もう一度一緒に何か始めようとはなってなかったと思いますけど。

【宇治原】別のことに挑戦して駄目やったら、お互い一般企業に就職してたかもね。

【菅】まあ20歳そこそこの当時は、うまくいかないことなんてありえないと思っていましたからね。ぶっちゃけて言うと、どこまで成功するかは別として、僕は「失敗」する理由がよくわからないんですよ。

――えっ。

【宇治原】これは、死んでから世に出したほうがいいんちゃう。

【菅】いやー、なんで「失敗」するんやろなって。

――どういうことでしょうか。

【菅】「芸人として成功するのは一握り、難しい世界」とよく言われるんですけど、そうでもないと思うんです。

僕らの若いころは芸人の数が多くなかったこともあって、関西の賞レース「ABCお笑い新人グランプリ」で優勝することは難しくても、ファイナリストの8組に入ることはそこまで難しくなかった。

みんなどうしてもトップをめざそうとするんですよね。でもコンスタントに及第点を取っていれば、「失敗」することはないと思うんです。僕らは100点を取ることはできないけど、70点を継続的に取ることは得意なので。

【宇治原】芸人の世界でもほかの世界でも、100点を連発できる天才はいると思います。野球で言えば大谷翔平選手のような規格外の人です。でも僕たちは大谷選手になろうと思っても、なれませんからね。

【菅】そうやねー。全員からモテることって無理じゃないですか。でも自分の妻からだけ好かれることは、それなりに頑張ればできますよね。これ、めちゃくちゃええこと言ってるな。

【宇治原】この言葉はいますぐ世に出していい。

 ――(笑)。

【菅】相方として、宇治原さんが満足できることを考えるのは何となくできるんですよ。でも、それ以外の人たちも巻き込んでやろうと思うと、難しかったりする。完璧を求めない、周りを気にしない、ということですかね。

 

岸田首相は「聞く力」がない?

――ただ、70点を継続するのもなかなか難しくないですか。

【菅】過去のデータの蓄積を活用すれば、及第点を取るのはそんなに難しくないはずです。

――実際、YouTubeチャンネル「ロザンの楽屋」では、再生回数が100万回とまではいかずとも、十数万回の動画を継続して更新されていますね。世間で話題のテーマなどについて二人が侃侃諤諤と話す内容で、面白くてかつタメになる動画ばかりです。

【菅】ありがとうございます。二人が何も考えずにラフに喋っているように見えるかもしれませんが、じつは「つくってない感」を出すために事前にめちゃくちゃ考えてるんです。漫才のネタも一緒で、台本があるけどいかにないように見せられるかの勝負だと思っています。

【宇治原】YouTubeチャンネルの事務的な作業は僕が担当しているのですが、いまはテロップや効果音といった演出は入れていません。菅さんも本当は、いろいろと試したいと思うんです。

でも時間や費用のコストを考慮すると、動画を定期的に公開して長く続けるためにいまの形に落ち着きました。

――そこで多少無理してでも、編集にこだわってクオリティを上げることはされないわけですね。

【菅】しないですね。

【宇治原】それは100点を取りにいく行為ですからね。動画のサムネイル画像も、無料の簡易的なアプリを使って、自動で出てきた中から選んでいます。

【菅】単純に言うと、面倒くさいんですよ(笑)。こだわることはできるだろうし、そのことで再生回数が伸びるだろうとは思います。でも、70点が取れているなら、100点を取るために無理に大変なことはしなくていいんちゃうかな。

――身の丈にあった努力でよいわけですね。

【菅】芸能人でも一般の方でもYouTubeを始める人にありがちなのが、一本目の動画から頑張ってテロップや効果音の演出をつけようとすることです。

でも最初は、編集にこだわらない素の動画を出すべきですよ。世間の認知度がまったくない一般の方だと、再生回数が10回程度しか取れないかもしれない。その現状をまず認識してから、継続するべきなんです。

でも一発目からバズる動画をめざそうとするから、「難しい、しんどい」ってなるんやと思います。

――YouTube動画で菅さんは、岸田文雄首相は自らの「聞く力」を強調するけれど、聞くのはあくまでインプットであって、「決断」というアウトプットに還元しないといけない、と言われていました。コミュニケーションのプロである芸人の菅さんから見て、岸田首相の国民への向き合い方はどう見えているのでしょうか。

【菅】一芸人が総理大臣に物申すなんておこがましいですが......(笑)、そもそも「聞く力」があるって周りが評価すべきことであって、自分で言うことではないんです......って宇治原さんが言うてました。

【宇治原】言うてないです。

――(笑)。

【宇治原】本人が言うべきではないって、なかなか手厳しいな。

【菅】「自分から言うべきではない」ということも、岸田さんは誰かから聞いてたはずなんですけどね。それがわかってないということは、やっぱり「聞く力」があるとは思えないですね。

【宇治原】厳しっ!

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