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石原結實/毎日2合のアルコールは、病気を防ぐ

石原結實(医学博士/イシハラクリニック院長)

2013年02月22日 公開 2024年12月16日 更新

《PHP文庫『不節制なのに、なぜか「健康な人」の習慣』より》

「免疫力を高める生活習慣」とは

日頃、実際に患者さんを診療していて不思議に思うことがあります。

「鯨飲馬食」という言葉そのものに、アルコールや水分を浴びるように飲み、食べすぎると生活習慣病の原因とされる肉や卵や乳製品を、よくかまないで貪り食い、しかも、健康によいとされる適度な運動など全くせず、それにもかかわらず結構元気で、血液検査をしても、ほとんど何の異常値もない、という人がいらっしゃいます。

逆に、早寝早起きを励行し、毎日ウォーキングやジムでの運動に汗を流し、しかも、野菜や果物をはじめ、すべて口にする食物は有機農法で育てたものや無添加食品という徹底した「健康おたく」でありながら、ある日突然、脳卒中で倒れたり、ガンを患ったりする人もいらっしゃいます。

一般の医学常識では一見クリアに説明できなくても、またご本人自身が気づいてなくても、健康な人には知らず知らずのうちに、「免疫力を高める生活習慣」が身についているのでしょう。

フィンランドで「健康診断をこまめに受け、医師の健康指導に真面目に従って受診したグループ」と「健康診断も受けずに、好き勝手な気ままな生活をしたグループ」を15年間追跡調査したところ、後者の方が疾病にかかる率が低く、自殺する人も少なかったという研究結果が発表されたことがあります。

これを「フィンランド症候群」といいます。免疫を守る白血球のうち特に重要なのが、ガン細胞やウイルスをやっつけるNK細胞です。NK細胞を弱らせる一番の要因は、真面目な性格や生活からくる「ストレス」であるとされています。

やはり、あまり真面目すぎない「いい加減」な性格や生活をする方が、健康、長寿にはいいようです。

さて、本文中には、健康や長寿を保っている方々の症例をたくさん掲載しましたが、ほとんどの方々が、無理に何らかの健康法を実践されているのではなく、自然に生活の一部に取り入れているものが、結果的に免疫力を高め、健康・長寿につながっている、ということがわかります。

つまり、本能に根ざした行為・行動であるわけです。

患者さんや友人・知人から、種々の健康食品やサプリメント、または健康器具のパンフレットを見せられながら、「先生、これは、健康によい(体に効く)でしょうか」というような質問をよく受けます。その時の私の答えは、「私にはわかりません。そうしたものを今まで知らなかったし、研究もしたことがありませんから。ただし、自分が実際に試してみられて、

(1)大便の出がよくなる
(2)小便の出が多くなる
(3)体が温まる
(4)何となく気分がよい

という4つの条件を満たすようなら、ぜひ続けてみることです」というものです。

何といっても、「気分がよい」=「心身の調子がよい」と本能的に感じることが、免疫力が高まっていることを表わしているといってよいからです。

(1)(2)については、体内の老廃物を存分に排泄すれば血液がキレイになり、東洋医学でいう「万病一元、血液の汚れから生ず」の“血液の汚れ”を取り去ることができますし、(3)については、体温上昇により、白血球の働きがよくなり、免疫力が上がるからです。そうした結果、「気分がよく」なるのです。

 

毎日2合のアルコールは、病気を防ぐ

アルコールがけっして嫌いでない私は、ほとんど毎日、ビールや焼酎、ワイン、日本酒などのうち1~2種で晩酌しています。量としては、さほど多くなく、日本酒に換算して2合程度ですが、半年も休肝日なしで毎日飲んでいると、折角のアルコールもうまくなくなってきます。食前に飲む、冷たいビールの、あの何とも言えない快感を味わうことができなくなるのです。

そこで数日晩酌を休むと、今度は、食事がおいしくなくなるし、睡眠も何となく浅くなるし、翌日何となく肩や首がこる感じがしたり、全体的な活力がなくなっていくように感じることすらあります。

知人、友人、患者さん達を観察していますと、毎日2合(日本酒に換算)前後の適酒をしている人は、大した病気にもかからないし、元気で長生きしているという印象があります。

2003年10月31日に116歳の大往生をとげた鹿児島の本郷かまとさんは、黒砂糖からつくる焼酎を毎日飲んでいたというし、かまとさんと同郷の鹿児島県大島郡伊仙町出身で、1979年に「ギネスブック」で世界一の長寿者と認定された泉重千代翁も、毎夕1杯の黒糖焼酎を飲むのが楽しみであったとのこと。

重千代翁は、慶応元年(1865)に生まれ、1985年に120歳(大還暦)を迎え、1986年に亡くなられました。

私が5度、調査研究に出向いたコーカサス地方のセンテナリアン(100歳以上の長寿者)達は、毎食前にかなりの量の自家製の赤ワインを飲んでいました。

日本の医学統計でも、全く飲酒をしない人の死亡率を、1.0とした場合、飲酒する人の死亡率は0.9台と、飲酒する人の方が低くなっています。「酒は百薬の長」といわれる所以でしょう。

欧米でも、アルコールの効能に関する疫学調査や研究は数多く存在しています。

米国イリノイ大学の1・ペズート博士らは、「ワインやブドウに含まれるレスブラトロールという物質が発ガンを抑制し、ガンの転移も防ぐ」(米国の科学誌『サイエンス』)と発表していますし、ドイツのワイン・アカデミー科学委員会のニコライ・ボルム博士も「ワインは心臓病のほか、脳梗塞、ガンの予防、ストレスの解消に役立つ。ワインの中に含まれるポリフェノールが血行をよくして血圧を下げたり、緊張感を解消する」(『英国医学会誌』1995年5月6日号)と述べています。

また、デンマークで1万3000人の男女を12年間調査した結果、「全くアルコールを飲まない人に比べ、ワインを毎日3~5杯飲む人は心臓病、脳梗塞などの循環器系疾患での死亡率が56%も低く、ビールを飲む人も28%低かった」ことが明らかにされています。

最近発表された最新情報も含めて、これまでわかっているアルコールの効能を列挙すると、

(1)ストレスを発散し睡眠をよくして、免疫力を高める
(2)ガン抑制効果
(3)善玉コレステロールを増やし、虚血性心臓病(狭心症、心筋梗塞)を防ぐ
(4)脳卒中を防ぐ
(5)適酒は、糖尿病のコントロールを良好にする
(6)適酒が脳を活性化し、ボケやアルツハイマー病を予防する
(7)胃液の分泌をよくして、食欲を増す
(8)適酒は、鎮静・睡眠作用がある

など、適酒をしているかぎり「酒は百薬の長」“Wine is old man's milk.(ワインは老人のミルク)”ということになります。

★ WEB上に掲載した本稿では、各効能の解説を省いています。詳しくは 『不節制なのに、なぜか「健康な人」の習慣』 p52~p59 をご覧ください

ただし、「1杯は人酒を飲み、2杯は酒酒を飲み、3杯は酒人を飲む」といわれる如く、飲みすぎには気をつけるべきです。

その人によりますが、平均的に言って、日本酒換算で3合以上を5年以上飲んでいる人は、

1.アルコール性肝障害(脂肪肝、肝炎、肝硬変)
2.すい炎
3.急性~慢性胃炎
4.高血圧症
5.アルコール性心筋症(不整脈、心不全)

などにかかりやすくなるので、要注意です。

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