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覆面作家・雨穴「ビルボードの舞台で口パク熱唱」 全国の書店へ歌で感謝を伝える

PHPオンライン編集部

2025年12月17日 公開

覆面作家・雨穴「ビルボードの舞台で口パク熱唱」 全国の書店へ歌で感謝を伝える

ユーチューバーとしても活動する覆面ホラー作家・雨穴(うけつ)氏のミステリー小説『変な地図』(双葉社)が、11月6日付のビルボードジャパン総合書籍チャート「JAPAN Book Hot 100」で初週1位を獲得しました。授賞式は12月16日、都内で行われ、雨穴氏は受賞の喜びとともに、作品に込めた思いを語りました。

 

ビルボードジャパン 初のブックチャートで首位に

礒﨑誠二上席部長

冒頭では、株式会社阪神コンテンツリンクの礒﨑誠二上席部長がブックチャート創設の経緯を説明しました。ビルボードは2008年から音楽チャートを展開してきましたが、2025年11月6日より、リアル書店、EC、電子書籍、図書館の4種のデータを組み合わせた総合書籍チャートを開始したといいます。

さらに12月4日からは、読者ブログ(ブクログ、note)やSNSの閲覧数、リアクション数、シェア数なども反映し、より「ユーザーにとって共感性の高い、分かりやすいブックチャート」を目指していると紹介しました。

初回集計では、「正直、1位はキングダムになると思っていた」と明かします。しかし、完成したチャートの1位は『変な地図』でした。礒﨑氏自身がホラー・ミステリーの愛読者で、雨穴氏の著作4作すべてを読み、かつ購入者でもあったことから、「自分が読んでいた本が1位になったことに驚きました」と振り返りました。

 

滑り止め手袋、靴下の中にカンペを入れて登壇

雨穴

登壇した雨穴氏は、普段は黒一色の装いで活動しているとしたうえで、「今日はトロフィーをいただけるということで、万が一にも滑って落とさないように、100均で売っている滑り止め付きの手袋をしてきました」と説明し、「この手で、がっしりといただきたいと思います」と語りました。

続く受賞コメントでは、「まさか自分の人生でビルボードのステージに立つ日が来るとは思っておらず、大変緊張しております」と率直な心境を吐露しました。さらに、「一応今日は、靴下の中にカンペを用意してきまして、途中で取り出すことになるかもしれません」と述べました。「お見苦しいところをお見せしましたら、大変申し訳ありません」と続け、会場の空気を和ませました。

雨穴
靴下からカンペを取り出す雨穴氏

 

「変なシリーズ」4作目 初めて出した自分のエゴ

株式会社阪神コンテンツリンク 代表取締役・取締役会長の百北幸司氏
株式会社阪神コンテンツリンク 代表取締役・取締役会長の百北幸司氏よりトロフィーが贈呈された。

雨穴氏は自身の著作について、『変な家』から始まる4作を「変なシリーズ」と呼んでいると説明しました。イラストや図版を多用している点、ホラーとミステリーを融合させた作品である点、共通の登場人物(栗原さん)がいる点などを挙げ、「文章とイラストを交互に組み合わせることで生まれるライトな読み心地が特徴だと思っています」と語りました。

そのうえで、『変な地図』はこれまでの3作品と異なる点があるといいます。それは「誰のために書いたか」でした。過去3作については、「100パーセント読者のために書いてきました。読んでいる間だけでも嫌なことを忘れて、物語に没入してもらえたら、それ以上の幸せはありません」と振り返ります。

一方で今作については、「もちろん読者の方に楽しんでいただくのが大前提ですが、今回は30パーセントくらい、自分のために書きました」と語りました。

 

ワゴンに並ぶ定番商品が好き 王道小説に挑戦した理由

雨穴氏が「自分のために書いた」と語る30パーセントの正体は、「王道小説」への挑戦でした。「こんな格好をしておいて何を言っているんだと思われるかもしれませんが、私は王道とかオーソドックスが大好きなんです。ワゴンで売られている定番商品が一番好きです」と語ります。

ただし、自身に求められているのは「邪道や変化球」だという自覚もあり、王道小説への思いは長く胸の内にしまってきたといいます。「ですが、4作目で集大成になるだろうと感じて、今回初めて王道に挑戦しようと決めました」と明かしました。

雨穴氏が考える王道小説とは、「主人公が旅に出て、仲間と出会い、冒険の中で成長し、謎を解き、敵を倒し、最後に少しほろ苦い別れをする」物語です。地図やイラストを多く挿入したのも、「読者の方に主人公と一緒に旅をしてほしい」という思いからでした。

実際に王道小説に挑戦してみて、「めちゃくちゃ難しかったです」と率直に語ります。「王道が一番大変ですね。やっぱり志村けんさんは偉大だと思います」と述べ、会場の笑いを誘いました。これまでのホラーミステリーとしての作風を保ちつつ、王道の物語構造を組み合わせることに苦労し、完成までに10カ月以上を要したといいます。

制作期間が長引いたことで、「世間から忘れられてしまうのではないか」と不安に感じた時期もあったそうです。初版部数を聞いた際には、「本当に売れ残るんじゃないかと思いました」と当時の心境を明かしました。

 

最後は感謝の歌で締めくくり

雨穴

しかし発売後は、初日から多くの読者が手に取り、全国の書店員が工夫を凝らした売り場を作ってくれたことに触れ、「とても温かい気持ちになりました」と語りました。ビルボードジャパン、出版社、書店、そして読者に向けて、丁寧に感謝の言葉を述べました。

雨穴氏は「この1位は、私だけの力ではありません。応援してくださった皆さんが取らせてくれた1位です。皆さんの1位だと思っています」と語り、舞台上から会場に拍手を送りました。

雨穴

スピーチの最後には、「せっかくビルボードのステージに立たせていただいたので」と前置きし、趣味で制作した楽曲を披露しました。緊張するとのことで、生歌ではなく口パクという形でしたが、「全国の書店さんへ向けた感謝の歌」を熱唱し、授賞式を締めくくりました。

雨穴雨穴

 

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