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「日本は難民に冷たい」は本当か? データが示す認定率低下の裏側と、2010年制度緩和が生んだ「歪み」

海老原嗣生(サッチモ代表社員 、大正大学表現学部 客員教授)

2026年02月11日 公開

「日本は難民に冷たい」は本当か? データが示す認定率低下の裏側と、2010年制度緩和が生んだ「歪み」

実は、マスコミで騒がれる不法滞在外国人問題は、2010年代に生じた政策の瑕疵にその根源があるのではないかと言われています。

発端は、2010年3月に難民認定制度が変更されたこと。それまで難民申請者は就労が認められなかったものが、それ以後は、申請から半年した段階で、就労できるようになりました。ここから、難民申請者が激増するのです。

雇用ジャーナリストで「外国人問題」に詳しい海老原嗣生氏に、その実像をデータを元に解説して頂きます。

※本稿は『外国人急増、日本はどうなる?』(PHP研究所)より一部を抜粋・再構成したものです。

 

難民申請中も「就労可」となったら、一気に申請数が1000倍の国も!

難民申請が激増した国、漸増に留まった国

日本の難民認定制度において、就労条件が緩和された2010~2017年の状況を少し細かく見てみましょう。この間に、大幅に申請を増やしたのが図表①に挙げた10カ国です。たとえばフィリピンは、緩和前の3年間の平均申請数が5件だったものが、ピーク時には4895件と1000倍近くに跳ね上がっています。インドネシアは、緩和前3年間に申請は全くなかったのにピーク時には2038件です。同様にネパールは18件から1768件と100倍、インドは26件から601件で23倍です。

これら10カ国でピーク時には年間1万4000件以上の申請となり、申請数の70%以上にも上っています。緩和前3年間の平均が10カ国合計で394件だったから、実に36倍!

一方で、それほど申請数が増えなかった国もあります。

ミャンマー、イラン、ウガンダ、コンゴ、アフガニスタン、エチオピアの6カ国は、ピーク時のトータル件数が1222件、緩和前3年の平均値の合計が789件で、1.5倍しか申請数は増えておりません。

 

難民がほとんどいなかった10カ国で難民申請が激増

難民認定率

この激増国とあまり増加しなかった国(漸増国)ではもう一つ、難民認定率にも差が見られます。漸増国は難民認定率が4.98%(2007~2009年平均)と元々高かったのですが、制度緩和後の2010~2015年の平均値も2.69%と漸減に留まります。

一方、難民申請の激増国は、緩和前から認定率が0.59%とそもそも低かったものが、緩和後の認定率は0.005%へと劇的に低下しています。

このような状況は、「もともと難民があまり見つからなかった国から、就労目的の偽装認定が膨大な量に膨らんだ」と考えるのが自然でしょう。

ここで、「難民申請が悪い」と誤解しないでほしいところです。漸増国のように昔から難民が多く認められている国は、緩和後も申請は異常な増加などせず、過去と大差ない状況で推移しているのです。

そうした「本当に困っている国」の人たちは、逆に、被害者でもあります。就労目的で難民申請をする人が膨大に増えたために、難民審査のスピードが極端に落ちているからです。2012年には難民申請の1次審査に要した期間は5.8カ月だったものが、2020年には25.4カ月にまで伸びました。(出入国在留管理庁「現行入管法上の問題点」2021年3年12月より)

 

かつて日本の難民認定率はそれほど低くなかった

難民認定関連

よく、人権派の団体からは、「日本は難民認定率が低すぎる」との批判がなされます。この点についても、少し考察をしておきましょう。
2022年以降、ウクライナ問題が発生して世界の難民状況が一変してしまったので、ここでは2021年のデータを見てみます。G7各国の認定率は、①イギリス56.6%、②カナダ55.4%、③アメリカ18.1%、④フランス15.7%、⑤ドイツ15.1%、⑥イタリア10.4%となっています。(国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)発表数値)

対して日本は2021年の認定率は3.1%とそこそこ高く思われますが、これはコロナ禍で申請数が少なかった(審査結果は前年や前々年の申請分が入る)ことと、ミャンマー案件という特殊事情で数字が嵩上げされているためでしょう。2020年は1.2%(この年もコロナの影響あり)、2019年は0.4%となっています。2010年代中盤の数字は0.1~0.4%であり、他国と比べると、文字通り二桁違うような状況でした。

ただし、これは先ほど書いた通り、就労目的だと思われる膨大な申請数が含まれた数字です。緩和前の2007~2009年を見ると、難民認定率は5.0%、3.6%、2.2%となり、G7との違いは1桁程度となります。加えて、難民認定までは至らないけれど人道的に対処すべき保護措置率が、2007年15.8%、2008年22.5%、2009年36.1%とかなり多く、両者を合計するとG7に引けを取らない数字となっています(図表③)。

しかも、欧州もアメリカもカナダも、他国と地続きなので、本当に困窮している難民が徒歩で入国することも可能でしょう。イギリスとて、ドーバー海峡はわずか34㎞の幅であり、海流が速いとはいえ、遠泳可能で小舟でも横断できる距離です。

対して島国の日本は、その多くが飛行機による入国であり、それだけ金銭的にも時間的にも余裕があり、出国手続きまでしていられるような「危険が差し迫る状況にない」人の割合が高いと思われます。その分、認定率がこの程度低くても違和感はなかったといえるでしょう。

こうしたことから考えると、2010年の就労緩和前までは、世界的に見て異常なほど難民認定が厳しいとはいえない状況だったものが、緩和後の申請数激増で状況が一変した、と考えるのが妥当ではありませんか。

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