毎日生活していると、職場や外出先でストレスを感じることもあるでしょう。そうした嫌なことや辛いことがあってストレスが溜まった時、「ストレスをなくす良い方法」を知っていると、少しは心がラクになるかもしれません。
では、どんな方法でストレスを軽減できるのか――本稿では、ストレスが溜まる仕組みと、脳科学者の西剛志さんが勧める「心をラクにする方法」を紹介します。
※本稿は、西剛志著『脳科学でわかった仕事のストレスをなくす本』(アスコム)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
ストレスが生まれる脳の仕組み
①扁桃体(へんとうたい)が反応
危険を察知すると最初に反応する場所です。嫌なことやつらいことがあったり、会社で理不尽な目にあったりすると、扁桃体が「警報ボタン」を押します。このシグナルを出すかどうかは、脳の司令塔である前頭前野が判断しています。
②脳内物質が放出
扁桃体の警報により、数秒でノルアドレナリンやアドレナリンという神経伝達物質(脳内物質)が脳全体に広がります。これは「緊急事態」を知らせる脳内の伝達システムであり、心拍数を上昇させることで、闘争・逃走に備えます。
③体全体に指令が出る
危険と判断されると、コルチゾールというストレスホルモンが全身に流れ、体全体でストレスに備えようとします。胃痛などの身体症状が現れることもあります。長期のストレスにさらされると、思考力が低下します。つまり、前頭前野が扁桃体の警報ボタンを押さずにすめば、ストレスになりそうな出来事があったとしても、ストレス反応は抑制されるのです。
扁桃体の反応を抑えて心をラクにする「4つの例外探し」
・やり方:苦手な相手、理不尽な相手の「例外的な行動」を4つ探す
・得られる変化:相手の言動にいちいちストレスを感じることがなくなる
・効く相手:理不尽な上司、苦手な同僚など
・こんな場面で:相手のすべての行動が不快に思えたり理不尽に思えたりするとき
扁桃体を反応させないコツをお伝えします。
「田中部長はいつも理不尽だ」
「佐藤さんは絶対に人の話を聞かない」
「山田先輩は必ず嫌味を言う」
私たちは他人について考えたり話したりするとき、しばしばこのように「いつも」「絶対に」「必ず」といった言葉を使います。こうした思考パターンを、認知科学の世界では「過度の一般化」と呼びます。
特に苦手な人に対して、私たちは強固な「一般化」を作る傾向があります。会社の人間関係に限らず、家族や友人に対し、「絶対にごみを捨てない」「いつもイライラしている」「必ず遅刻する」といった一般化をしている人は少なくないはずです。
しかしこの一般化こそが、あなたのストレスを何倍にも増幅させている犯人であり、ストレス製造装置です。たとえば、「田中部長はいつも理不尽だ」という一般化ができると、あなたの心身は次のような反応を起こします。
①会う前から身構えてしまう
「今日も理不尽なことを言われる」と予期し、朝から胃が痛くなったりします。実際にはまだ何も起きていないのに、脳が勝手にストレス反応を起こすのです。
②中立的な行動も「攻撃」に見える
部長が普通に「おはよう」と言っただけなのに、「今日も何か企んでいるのか」と警戒したり、ただ資料を見ているだけで「また文句を言われる」と身構えたりします。脳が「脅威探知モード」になっているため、すべてが攻撃に見えてしまうのです。
③ストレスが雪だるま式に増える
「今日も理不尽な目に遭ったらどうしよう」「明日も理不尽に違いない」「来週もずっと理不尽なんだろう」といった具合に、「部長はいつも理不尽である」という一般化は、365日のストレスをあなたに与えます。
一般化を崩す「4つの例外探し」メソッド
このストレス製造装置を止めるためには、一般化の構造を理解し、それを崩す必要があります。まず、一般化は「テーブル」のようなものだと考えられます。たとえば、「田中部長はいつも理不尽だ」というテーブルは、次のような脚(経験)で支えられています。
・会議で急に怒鳴られた(脚1)
・金曜の夕方に無理な仕事を押しつけられた(脚2)
・自分のミスじゃないのに叱られた(脚3)
・指示がコロコロ変わる(脚4)
これらの脚によって、「田中部長はいつも理不尽だ」というテーブルが安定して存在してしまうのです。
では、ここで質問です。田中部長は、本当にいつも理不尽なのでしょうか?理不尽でない瞬間も、時々はあるのではないでしょうか?一旦「田中部長はいつも理不尽だ」という一般化から離れ、冷静に過去を振り返って、例外を4つ探してみると、たとえば...
・新人のころ、残業していたら「無理するな」と声をかけてくれた
・プレゼンで失敗したとき、フォローしてくれた
・体調不良で休んだら、心配のメールをくれた
・忘年会では、意外と気さくに話してくれた
など、何かしら例外が見つかるかもしれません。
4つの例外という「新しい脚」ができると、脳はそれらをもとに、「田中部長は、プレッシャーが強いと理不尽になることもあるけど、根は悪い人じゃないかもしれない」という新しいテーブル(認知)を作り、「田中部長はいつも理不尽だ」という古いテーブルはお払い箱になります。
ここで重要なのは、必ずしも「田中部長は、実はいい人だった」などと結論づけたり、無理に田中部長を好きになろうとしたりしなくていいということです。あくまでも、4つの例外を探すだけでかまいません。「田中部長はいつも理不尽だ」という一般化があると、前頭前野は田中部長を見るたびに「危険だ!」と判断し、扁桃体が警報を鳴らします。
しかし、4つの例外によって、「田中部長は、状況によっては理不尽ではないこともある」という認知に変わると、前頭前野は「田中部長は、必ずしも危険というわけではない」と判断し、扁桃体の過剰反応を抑えるようになるのです。
実際、このように認知の柔軟性が高まると、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌が低下することが、研究により証明されています。「いつも~だ」→「場合によって~だ」という認知の変化により、身体レベルでストレスが減少するのです。
ではさっそく、以下の手順に従って、4つの例外探しを実践してみましょう。
①苦手な人に対してあなたが思っている「いつも○○」を書き出してみる
②「本当にいつもそうだろうか?」と自問する
③例外事例を最低4つ探す(どんな小さなことでOK)
④新しい認知を言語化する
繰り返しますが、無理に相手を好きになったり、好意的に解釈しようとしたりする必要は一切ありません。ただ、「いつも」という呪縛から自分を解放するだけで、ストレスは確実に減ります。明日からその人に会っても、「今日はどっちのモードかな」と冷静に観察できるようになる。それだけで、あなたの心と体は、ずっと楽になるはずです。
なお、4つの例外探しに似た方法として、「苦手な相手の長所を20個書き出すことで、相手の見えていない特徴を脳に学習させ、扁桃体を活動させにくくする」というものもあります。いずれにしろ、見えるものが変わると、扁桃体も活動しづらくなるのです。








