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生き方

うまくいかぬ時代には、好きな道に賭けよう!

本多信一(作家)

2013年03月28日 公開 2020年09月08日 更新

◎ “身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ”という生き方

ま、無料相談が人生目的ゆえ、高校中退で始めてもよかったのですが、やはり社会体験ができたことで、少しは相談内容が充実しましたね。

集団ダメ人間が経営コンサルタントをするなんてじつにおかしなことですが、相談に訪れる人々の過半はビジネスマン、OLや中間管理職、社長さん方ですから、それらの方たちに少しは役立つ相談をするためには、経営コンサルタント活動は役に立ちました。

この仕事は平均すると「週に1度、会社へ出向く」ぐらいなので、自分にもできたわけです。自分には「考えてばかり」のクセがあるため、思索力や経営向上のアイデア力は多少あります。しかしそんなことより、まったく無心ですし、別に自ら報酬を求めたこともないので、「会社のなかに光を投げ入れる」ことが大切な役割と思ったりもしました。

かつての“ダメ高校生”の私が、多少は社会勉強で成長することができました。そうしてかつては国策会社の同盟通信社だった時事通信社に入り、情報分析力(インテリジェンスというのでしょう)は身につきました。数多くの企業トップと会い、勉強ができました。

でも、私自身の生来的気質は不変で、いまも“集団ダメ人間”にして超内向型なんですね。しかし、自分のモットーとしての「己の成功は断念し、他のために生きる」願いはまったく変わっていません。

たまたまフリーライターとして新聞、雑誌に原稿を書いたり、6~70冊の本を出版できたことでホームレスにならずにすみました。でも、本を出すという営みは、読者から100円玉1個ずつ(1000円の本の印税は100円です)もらうというわけです(何かに似ていますね……)。

立派な作家になったなんて気分はまったくありません。私は単に会えない人に“相談レター”的な文を綴っているという気分があるばかりです。私は自分の人生で本を出したことを喜んだりする気持ちはあまりなく、とにかく無料相談人生を生きられたことを喜んでいます。

もちろん、皆々様に「無料相談人生」をやるべしと勧めているわけではありません。普通の人生を持てる男女はその方向で頑張ればいいのです。ただ、自分自身をよく眺めて「我が道」を発見してください。

そして、もし「わが人生に成功なし」と分かったなら、その段階で自死するのでなく、「他者を生かす」方向にシフトしたら生きる道は開かれると思います。人ではなく他の動植物や自然のために生きることもいいでしょう。いまの世の中、「解決すべき難問」は百千とありますから、そのうちの1つをテーマに生きてもいいわけです。

要するに、私は“身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ型人生”なんですが、ノーマルコースになじめないと分かったなら、こんな生き方をしてみるのもいいわけです。単に「身を捨てる」なら投身自殺ですが、自分にとって「できそうな世界」に成算、採算を考えずに飛び込んでみるわけです。

すると、浮かぶ瀬に出てくるものに救われ、「生きられる」ということになります。ノーマル人生は一見すると安全に見えますから、たくさんの人々が目指すため、押し合いへし合いの満員電車の車内のようなもの。一方、安定なきコースは怖くて人々は近づけませんから、ガラガラなんですね。人生、別に“みんなと一緒”でなくともいいのですから。

 

◎ その道しか考えられないなら、進むしかない

私たち現代人は、自分でも知らぬ間に「成功病=うまくやらなければいけないと思い込む心の病」に取りつかれているようです。なぜそうなるのか? マスコミが“成功物語”を取り上げるせいでしょうか?

でも、いつの世も成功者って千分の1、万分の1です。昔の格言の“一将功成りて万骨枯る”、つまり「一人の将軍が生き残り、功績を挙げる折には多くの兵士の死がある」ってことは実社会の在り様にもいえるんですね。

一人の社長、局長、有名タレント、スポーツ選手の成功の陰には、同じ座を志して敗れ去った幾千人、幾万人がいるんです。それが分かったら、“成功競争”には参加しないほうがいいんじゃありませんか?

成功病から卒業し、真に自分の合っている道に淡々と向かいましょうよ。多くの人々は自分に合う道が分からないから困り果てますが、じっくり自己分析し、虚心に自分を見つめれば“こうありたい生き方”は必ず分かるものです。

好きな道って「収入にならない」ことが多いわけです。でも、その道しか考えられないなら、進むよりありません。その道に入った上で、アルバイトやパートで生きる糧を求めたらいいんです。好きな仕事を食べられないからという理由で自ら諦めてしまうと、人生が暗くなります。そして、食べるためにイヤな仕事に就くと、生きているのが苦しくなるものです。

それに対して、「身を捨ててこそ」の決心で好きな道に入ると、生きる毎日が楽しくなり、いつもニコニコなんです。そうなると眠る時間を削ってバイトしても大して身体に影響がなくなります。

私自身、昼間はだいたい無料相談をしているので、夜は12時~1時に寝て午前4時起きし、3時間ぐらい原稿を書く30数年でしたが、60代後半までは1度も病気はしませんでした。眠る時間って「短くても深い」なら、短時間睡眠でもいいと知りましたね。うまくいかぬ時代には「好きな道に賭ける」―― こんな生き方もあると確信しています。

 

本多信一

(ほんだ・しんいち)

1941年(昭和16年)、東京生まれ、杉並区阿佐谷育ち。私立城北高校、中央大学法学部卒。マスコミの時事通信社に6年勤務の後、1971年、内気で悩む人のための人生相談業をしようと決意し、現代職業研究所を設立。「個人のための無料職業&人生相談業」を始める。以来、執筆・講演・中小企業診断士などの活動で生計を立てながら、一万数千人の老若男女の相談を無料で受けてきた。またその中で、内向型男女に合う各種職業の研究も続けてきた。現在は、体調をこわし療養中ゆえ相談は休業中。
主な著書に、『これからの職業』(毎日新聞社)、『内気な人でも100人の前で話せる秘密』(日本経営協会総合研究所)、『がんばらなくてもいい』(こう書房)、『内向型人間だからうまくいく』F内気な人の営業にはコツがある!』(PHP文庫)など多数ある。

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