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あの人とウマが合わない本当の理由



2013年04月24日 公開

樺 旦純(思考心理学者)

『【愛蔵版】ウマが合う人、合わない人』より


 

たった一度の過ちが……

 それまでうまくやってきても、一度悪い印象を与えると、以前のようなよい印象を取り戻すことは非常に難しい。

 これは心理学では「負効果」と呼ばれる。プラスの情報よりも、マイナスの情報のほうが大きな効果をもっていて、定着しやすく変化しにくいというものである。

 たった一度でも汚職事件などで有名になってしまった企業は、後々まで「あ、あのときの……」と、ダーティなイメージで見られてしまう。ありもしないスキャンダルをめぐって名前が取りざたされただけで、周囲からの視線はとたんに冷たくなる。

 一度結びつけられてしまった悪いイメージは、事実であろうとなかろうと、他人の心からはなかなか消し去ることはできない。いわゆる「レッテルが貼られた」状態である。

 逆に、営々と積み上げてきた信用を壊すのは簡単だということである。だからこそ企業や芸能人などは万全のマスコミ対策をして、イメージを壊さないように必死になるのだ。

 一般の人間関係においても、相手へのイメージというのは、ほんのささいなきっかけで決まってしまう。特に悪いほうへは、ちょっとした一言や仕草などで、いとも簡単に変化してしまうのである。

 あなたが嫌っている相手も、実はたいしたことをしたわけではないのに、ある一瞬があなたに不快感を与えてしまい、結果として嫌いになったのかもしれない。

 なんとなく嫌いという人がいる場合、嫌いになった原因をよく考えてみることも必要ではないだろうか?
 

言い訳はマイナス効果絶大

 ハンディといえばゴルフであるが、よく「昨日も残業で寝不足でねえ」などと言い訳しながらコースをまわっている人がいる。

 自分に「寝不足」というハンディを自ら付けているわけである。そして、もともとゴルフが下手なせいで成績が悪かったとしても、「やっぱり寝不足だったから」と自分を納得させてしまう。また他人をも納得させようとする。

 こういった自己防衛的な言い訳の言動のことを「自己ハンディキャップ化」と呼んでいる。

 一般に、自分を低く評価している人ほど、自己ハンディキャップ化をしやすい。

 では、言い訳をすると、周囲はその人をどう見るだろうか?
   

 2人で協力してパズルを解かせるという実験がある。うち1人は実験者側のサクラであり、次の4パターンが用意された。

 ・包帯を巻いて「ケガをして手を動かすと痛い」と訴える
 ・包帯をしているが、何も言わない
 ・包帯を巻かずに「ケガをして手を動かすと痛い」と訴える
 ・包帯を巻かないし、何も言わない

 「ケガをして手を動かすと痛い」というのが自己ハンディキャップ化の言動にあたる。

 そして、別々の部屋で練習をした後、相手のパズルの成績が悪かったと知らされたとき、相手のパズルの能力に対する評価と、相手に対する好感度を尋ねる。

 結果、包帯のありなしに関係なく、言い訳をした場合には、好意は減少する傾向がみられた。また、能力に対する評価にはあまり差がなかった。
   

 仕事でしくじったときに言い訳をするのは、その失敗は自分の能力が劣っているせいではなく、別の不可避な要因によるものだと印象づけることが狙いであろう。しかし、この実験結果をみる限り、言い訳による効果は他人からの好意が減少するだけ。つまり嫌われるだけである。

 マイナス評価を避けるための言い訳が、かえってマイナスになってしまうことは多いのである。
 

コミュニケーションがないと信頼できない

 いったん嫌いだと思うと、その人とは口をきくことさえ嫌になる。同じ部屋で一緒に仕事をしている同僚であっても、極力離れていたがり、いざ意見を交わす局面になれば、あえて対立するような行動をとってしまう。こうしてますますお互いの仲は険悪なものになっていく。
 

 「囚人ジレンマ」という状況がある。

 ある事件の共犯者2人が捕まった。警察は物的証拠をつかむことができず、2人が黙秘を通すと別件の1年の刑しか課すことができない。そこで、2人に自白をさせようと、別々の部屋で次のような司法取引をもちかけた。

 「お前が自白したら、本来なら5年の刑を3カ月に減刑してやろう。ただし、相棒にもこれと同じ話をもちかけている。お前が黙秘を通して相棒が自白したら、お前の刑は13年になる」

 2人の共犯者は連絡がとれない状況に置かれ、疑心暗鬼に陥る。自分が黙秘を通しても、相棒がしゃべってしまえば、自分だけ13年の重刑になってしまう。かといって、2人ともそう考えて自白してしまうと、犯罪じたいを認めることになり、2人とも本来の5年の刑になる。さらに、自分がしゃべって相棒が黙っていた場合、自分の刑は軽くなるが、相棒を裏切って「売る」ことになる。

 これが「囚人ジレンマ」である。
   

 相棒への信頼が確固たるものならば、自分も黙秘を貫くのが一番である。しかし、実験結果は違った。2人とも自白して、2人がともに損をする状況に陥る傾向が強いことがわかっている。

 2人ともが損をするこの状態を、「共貧関係」と呼んでいる。

 2人ともが自白する状況は2人にとってよくない。これを避けるためには、自分が13年の刑をくらう覚悟で相手を信頼して、黙秘を通さなければならない。

 しかし、一般的な傾向としては、そんな犠牲を払うよりは、自分が自白して助かろうという行動に出てしまうのだ。
   

 さて、この「囚人ジレンマ」実験で、2人の共犯者が連絡できるようにすると、話しあいによって協力して黙秘するという選択をすることができる傾向が高まる。コミュニケーションによって、信頼関係が確立されるのである。

 実際の職場で、仲の悪い2人がいがみあっている状況を想像してみよう。

 同じ職場の2人が仲が悪いのは、誰にとってもよくないことだ。そんなことは常識的な社会人である2人はもちろん理解している。

 しかし、自分から関係を修復しようと相手にはたらきかけようという心理状態には絶対になれない。

 相手を信頼せよと言われても、それができないから仲が悪いのである。自分から一方的に相手に歩み寄るのは、不快であり自尊心が許さない。

 お互いにそう思っているから、2人の関係は、いつまでたっても対立構造のまま。まさに「共貧関係」である。

 このような状況を打破するには、やはりコミュニケーションをとるべく努力することである。他人の手を借りてでもコミュニケーションをとることによって少しずつ信頼関係は築かれていくものだ。                       `

 2人が課長のポストをめぐって競っていたとしても、あまりに険悪なムードだとしたら2人ともレースから排除されかねない。2人の関係がよくなり、企業全体にプラスになれば、課長のポストだって増えることもありえる。一般に「競争」とされていることの中には、「どちらかが勝ち」というケースだけでなく、「2人とも勝ち」というケース、つまり「共栄関係」が成り立つこともありえるのだ。

 

樺旦純(かんば・わたる)

心理学者、作家。1938年、岩手県に生まれる。産業能率短期大学で人事労務関連教科を担当。同大経営管理研究所で創造性開発・能力開発の研究、指導(兼任)に携わり、産業教育研究所所長を経て現在に至る。企業等の社員研修、能力開発のほか、セミナー・講演も全国規模でこなす毎日。忙しさを縫っての執筆活動だが、多彩な事例と鋭利な分析、平易な筆致のファンは多い。主な著書に、『うっとうしい気分を変える本』『女ごころ・男ごころがわかる心理テスト』『「外見」だけで評価を上げる技術』(以上、PHP文庫)などがある。


<書籍紹介>

[愛蔵版]ウマが合う人、合わない人          
人間関係でイライラしない心理法則

樺 旦純 著
本体価格 590円   

ガンコな上司、口の悪い同僚、ワガママな恋人とどうつき合う? 性格のメカニズムを徹底分析して、苦手なタイプへの対処法を解説する。



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