世界の一流は「朝食のメニュー」を固定化する? 決断疲れを防ぐルーティンの効果
2026年05月29日 公開
毎日の小さな選択が、あなたの思考力を徐々に奪っています。何を食べるか、何を着るか...こうした些細な決断の積み重ねが、本当に大切なことを考えるエネルギーを削り取っているのです。世界のトップリーダーたちが実践してきた「決断を減らす技術」と、脳科学が示すルーティンの効果を、書籍『脳をオフにせよ 仕事も人間関係もうまくいく集中術より解説します。
※本稿はマルク・ティッヘラー,オスカル・デ・ボス[著],児島修[訳]『脳をオフにせよ 仕事も人間関係もうまくいく集中術』(日経BP)より一部を抜粋・再構成したものです。
ルーティンを使って決断疲れと戦う
人間(正確に言えば、特に男性)は、歩いているときに質問をされると、思わず立ち止まってしまうことが多いのをご存じでしょうか? 私はいつも、これはとても面白い現象だと思っています──特に、自分自身がまさにこれに当てはまるので。質問をされて一時的に脳に大きな負担がかかることで、私たちは足を止めてしまうのです。その質問について深く考える必要があればあるほど、"歩く"といった基本的な行動を取るための脳の余力が減ってしまうのです(※)。
(※これは交通事故が起きたときに、そばを通過する車のドライバーが事故現場を覗こうとして、交通渋滞が起こる原因でもあります。ドライバーたちは、いったい何が起きたのかがとても気になり、窓の外を覗かずにはいられなくなります。目から情報が入ると、脳はそれを処理しなければなりません。そのため、一瞬ペースが落ちてしまうのです。)
思考にはエネルギーが必要です。長く考え続けると疲れてしまい、クリアに考える能力が失われてしまいます。そのため、私たちが1日にできる意識的な意思決定の数には限りがあります。数が多くなればなるほど、良い決定ができなくなります。この現象は「決断疲れ」と呼ばれています。
スーパーのレジ付近で甘いお菓子が売られていることが多いのはそのためです。スーパー側は、レジに来るまでのあいだに「低脂肪ヨーグルトにするか全脂肪ヨーグルトにするか」「今晩はライスにするかパスタにするか」「20種類もあるパスタソースの中でどれが一番いいか」を決めてきた買い物客の脳が疲れ、甘い物の誘惑に弱くなっていることを知っているのです。
だからこそ成功者の多くは、日常的な決定を悩まずに行うことを習慣にしています。スティーブ・ジョブズは毎日同じセーターとジーンズを着ていましたし、バラク・オバマも毎日同じメニューの朝食を食べることで知られています。これは理にかなっています。ジョブズと同じく毎日同じ服を着ていることで有名なフェイスブック(現メタ)の共同創業者マーク・ザッカーバーグは、そのことを次のように説明しています。
「生活はできる限りシンプルにして、フェイスブックに最大限の貢献をするため以外の決断は極力減らしたい。くだらないことやつまらないことにエネルギーを使っていると、自分がすべき仕事をしていないような気がしてしまうんだ(※1)」
脳の観点からは、日常的な事柄について考える時間はできるだけ少なくするのが賢明です。些細なことを考えれば考えるほど、重要なことについて考えるための思考力が減ってしまうからです。だからこそ、ルーティンに価値があるのです。いつものルーティンに従っていれば、余計な頭を使わずにすむため、思考力を温存できます。
ルーティンは分散認知の一形態です。私たちが毎日同じことを繰り返しているとき、脳の前側(前頭前皮質など)は活性化されず、脳の後ろ側がそれを管理しています。この領域は主に大脳基底核細胞で構成されています。この細胞は、ある作業を何回か繰り返すと活性化し、以降は特に注意を払うことなく同じことを行えるようになります。
私たちが靴紐を結びながら他人と話ができるのは、この細胞のおかげなのです。大脳基底核細胞が靴紐を結ぶ作業を引き継ぐことで、私たちが誰かと会話するための脳のスペースを確保できます。熟練のドラマーが4本の手足を使って異なるリズムを刻むことができるのも、同様の理由です。
(※1)Saul, H. “Why Mark Zuckerberg Wears the Same Clothes to Work Everyday,” Independent, January 26 (2016), https://www.independent.co.uk/news/people/why-mark-zuckerberg-wears-the-same-clothes-to-work-everyday-a6834161.html
朝の儀式を確立する
私にはたくさんのルーティンがありますが、「朝の儀式」と呼ぶべきお決まりの習慣が特に効果的だと感じています。目が覚めたら、まず冷たいシャワーを浴び、着替え、5分間瞑想し、レモンジュースを飲み、朝食をとってから仕事に向かいます。これが私の平日の朝のルーティンです。
前の晩のうちに翌日に何を着るか決めておき、3パターンのシンプルな朝食をローテーションで食べています。1日目はシリアル入り低脂肪ヨーグルト。2日目は野菜オムレツ。3日目はグリーンスムージー(※2)。
前日にグリーンスムージーを飲んでいたら、今日はシリアル入り低脂肪ヨーグルト。迷うことはありません。このシンプルさがとても気に入っています。些細なことをあまり考えずに、この本の執筆のような重要なことに集中できるからです。
私はできる限り、日常的な行動を何も考えずに行えるようにルーティン化しています。いつも決まった時間に昼食をとり、毎月同じ金額を自動的に貯蓄し、決まった曜日にジムに行き、集中したいときはSpotifyで同じプレイリストを聴き、決まった時間にメールをチェックします。こう書くと、何事もきっちりとこなしていく人間のように思えるかもしれませんが、友人たちに言わせれば、私はそれとはまるっきり正反対の人間です。
私は時々、物事の収拾がつかずにドタバタしてしまうことがあります。だからこそ、ルーティンをつくることでそうした事態に陥るのを避けようとしているのです。あらかじめルールを決めておけば、深く考えずに行動できます。いちいちどうすべきかを考えてから行動に移すよりも、はるかに楽です。考えることは時間と同じく、有限の資源です。それは、今この瞬間に一度しか費やせません。だからこそ、慎重に使うべきなのです。
(※2)De Leth, R. Oersterk in 6 weken. Netherlands: De Leth Uitgevers, 2019.







