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認知症リスクを高める「果物の食べ方」とは? 糖質の摂りすぎに潜む盲点

下村健寿(福島県立医大主任教授/医師)

2026年07月01日 公開

認知症リスクを高める「果物の食べ方」とは? 糖質の摂りすぎに潜む盲点

糖を摂りすぎると脳の認知機能が低下し、アルツハイマー病などの認知症につながる――近年の研究から、糖質が脳に与える影響が注目されています。

日本人の食事は糖質過多になりがちだと、元オックスフォード大学研究員で脳と糖の専門家である下村健寿さんは指摘します。糖質とうまく付き合いながら健康的な食事を摂る工夫とは?

※本稿は、下村健寿著『糖毒脳』(ダイヤモンド社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

糖質の「完全排除」は禁物

インスリン抵抗性の予防のために注意すべき食事の内容について説明していきます。

ここでも重要なのは、血糖値を上げすぎないことです。朝、昼、晩の食事をとる度に高血糖になってしまっては意味がありません。それぞれの食事をとったときに、膵臓が必要な適正量のインスリンをきちんと分泌できるようにする必要があります。

では、一体何をどのように食べれば良いのかについて考えてみましょう。まず大前提となるのは、バランスのいい食事が大事ということです。現代日本の食事は、どうしても糖質過多になりがちです。まずは、摂りすぎている糖質を適切な量に戻すことを目標にしましょう。とはいえ、極端な糖質制限は絶対にしてはいけません。

脳は全身で最も糖をエネルギー源として使う臓器です。脳に糖がきちんと供給されないと、パフォーマンスが低下してしまいます。脳に適切なエネルギーを供給するためにも、糖の摂取は絶対に必要です。

また、糖質制限ダイエットのなかには、糖質の摂取をほぼゼロにする代わりに、脂質とタンパク質はいくらでも摂ってよいとするものもあります。ですが、これは非常に危険な考え方です。脂質とタンパク質を過剰に摂りすぎてしまった場合、腎臓への負荷が高まります。実際、動物実験で極端な糖質制限を課すと、実験動物の腎臓が腫大(異常に大きくなること)することが確認されています。

 

甘くない「隠れ糖質」に要注意

どうすれば、摂取している糖の量を適切にできるのでしょうか。まず大事なのが、「糖」と意識しないで摂取している「糖質を含む食べ物」を避けることです。

たとえば、糖尿病の患者さんを診ていると、たまに「せんべいはしょっぱいから糖じゃないですよね?」と聞かれることがあります。ですが、せんべいはもち米からできています。残念ながら、米は糖質の塊です。「糖」というと甘いものを連想しがちですが、甘くなくても糖を含んでいる食べ物はたくさんあるのです。

そもそも、舌の甘味受容体は「単体の糖」しか感知することができません。私の知り合いにグルメを自称する人がいますが、彼と高級なお店に食事に出かけると、じっくりとご飯を味わいながら「さすが国産米は、米本来の甘さを感じる」などと言います。

もちろん、国産米であることは関係ありません。お米に含まれる糖が舌の上の甘味受容体で感知されて、脳に「甘い」というシグナルが送られただけです。お米などの中では単体の糖が鎖のように長くつながって存在しているため、本来はお米を食べるだけでは「甘い」と感じません。ですが米が口の中に入ると、米の中で鎖のようにつながっていた糖分が唾液の中の酵素によって分解され、口の中で単体の糖になるため、舌の上で「甘さ」として感じられるのです。

つまり「甘い」と感じられるのは、口の中で単体に分解される糖を食べたときだけなのです。

一方で、舌より奥にある胃腸で「単体の糖」に分解されるような食物もあります。そういったものを食べた場合、糖を摂取したことには変わりありませんが、甘さは感じないのです。

米だけではなく、ジャガイモなども含めて、主食となる穀物類には甘さに関係なく糖がたくさん含まれています。それらの「甘さを感じない糖」が、ジワジワと身体に蓄積していることもあるのです。

 

糖を摂るときは「順番」に気をつける

インスリンは糖に反応して最も分泌されますから、まずは摂取する糖の量を控えめにすることが大事です。

ただ、そうは言っても、米やパンなどの主食は私たちの生活には欠かせません。大変おいしく感じますし、食べたいと感じるのは当然です。それならせめて、糖を摂るときは「順番」に気をつけてください。

「食べる順序を変えると血糖値が上がりにくい」。こんな話を聞いたことがないでしょうか。よく言われるのが、野菜を最初に食べて、次におかずを、そして最後にお米(主食)を食べるという方法です。確かにこの方法なら、血糖値が上がりにくいというのは事実です。実際に私も、この方法を推奨しています。ですがそこには、もう1つ別の意味があります。

それは、「おかわり対策」です。食事をしている人の様子を観察すると、米の味を楽しんでいるというより、おかずと一緒にご飯をかき込んでいる場合がほとんどです。おかずの味をリセットする「口直し」としてご飯を合間に挟んでいる人も少なくないでしょう。これだと、意識せずに大量の米を摂取してしまいます。さらに「おかわり」までしてしまうことも。でも、この「おかわり」は本当に必要なのでしょうか?

おかずを先に食べきってしまい、最後にお米だけ食べてもらう。私は患者さんたちに、そのようにアドバイスしています。すると、おかずがないということもあって、少量のお米でも満足してもらえます。それに、おかわりをすることも減ります。おかずを食べるために「おかわり」したご飯は、本来、体にとって必ずしも必要ではなかったということです。

 

「果物は体にいい」という誤解

次に気をつけたいのは果物です。果物は体にいいというイメージがあります。健康のために積極的に果物を食べるよう心がけている人もいるのではないでしょうか。

「果物の甘さは血糖に関係ない」「果物は糖尿病や高血圧を改善してくれる」という話を聞いた人もいると思います。しかし残念ながら、これは誤解です。

確かに、果物の甘さの素の一つである果糖は、そのままでは血糖にはなりません。ですが肝臓などで代謝されると、結局は糖になります。また、果物には果糖以外にも通常の糖(ブドウ糖)とショ糖(スクロース)が含まれています。ブドウ糖は食べればそのまま血糖になりますし、ショ糖も、果糖とブドウ糖が結合しただけの物質です。体の中に入れば速やかに果糖とブドウ糖に分解されます。

つまり果物を食べた場合、果物にもともと含まれている糖と、ショ糖から分解された糖が速やかに血糖値を上昇させます。「果物は血糖値を上げない」ということはないのです。

「果物にはミネラルやビタミンなどの重要な栄養素が含まれているから食べた方がいいのではないか」。そんな意見もあります。確かにそのとおりですが、ビタミンやミネラルといった栄養素は、普通に食事をとっていれば十分な量を摂取することができます。

つまり果物は、健康のために積極的に摂取するほどの食材ではありません。むしろ「おいしいから」という理由でこそ召し上がってください。週に1〜2回ほど、楽しむために食べる「嗜好品」だと考えるとちょうどいいのではないでしょうか。

プロフィール

下村健寿(しもむら・けんじゅ)

福島県立医大主任教授/医師

福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。英文原著論文多数(本書初版発売時点において発表した英文論文数は134本)。研究成果の還元に熱心に取り組む。近年は糖尿病が認知症の発症に深く関与していることが確認されており、その流れを受け、脳や認知機能の研究にも取り組んでいる。

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