がんばりすぎ、考えすぎ...心と体が悲鳴をあげる前に知りたい5つの対処法
2026年07月23日 公開
がんばりすぎたり、我慢しすぎたり、怒りすぎたり…。つい、しすぎて後悔することが、誰にでもあるのではないでしょうか。うまく肩の力を抜いて、「適度」を取り戻す方法について、精神科医の井上智介さんが解説します。
※本稿は、『PHPスペシャル』2026年8月号より内容を抜粋・編集したものです。
「しすぎる」の罠
朝、目覚ましが鳴る前から目が覚めて、布団の中ではもう今日の段取りを考えている。日中は周りの機嫌ばかりを意識して、帰る頃にはクタクタ。それなのに家に着いたら着いたで、「まだあれもこれもやらないと…」と考えて休むヒマもない。
あなたは、こんな日々を送っていませんか?そして、「もっとがんばらなきゃ」「しっかりしないと」「こんなことでイライラしたらダメ」などと、自分に言い聞かせてはいないでしょうか?
がんばること、考えること、我慢すること、期待すること、怒ること。これらは、すべて人として自然な心の反応です。決して、それ自体が悪いわけではありません。しかし、その後ろに「すぎる」がくっつくと、途端に心と体は悲鳴をあげはじめます。
たとえば、がんばりすぎて倒れそうになる。考えすぎて眠れなくなる。我慢しすぎて自分の気持ちがわからなくなる。期待しすぎて裏切られたように感じる。怒りすぎて自己嫌悪に陥る。たった3文字の「すぎる」が加わるだけで、本来は自分の大切な心の反応が、自分を追い詰めるものに変わってしまいます。さらに厄介なのは、「しすぎている」最中には、そのことに自分でなかなか気づけないことです。むしろ、「まだ足りない」「自分が弱いだけだ」と、さらに自分を追い込んでしまう場合もあります。
でも、安心してください。「しすぎてしまう」のは、あなたがそれだけ誠実に生きている証拠。自分の生き方を否定する必要はありません。力の入れ具合をほんの少し調整すれば、毎日をずいぶんラクに過ごせるようになります。
ここでは、つい「しすぎてしまう」5つのタイプごとに、心と体の疲れをほどいて、「適度」を取り戻すためのヒントをお伝えしたいと思います。
ブレーキを知らない「全力疾走」な人
休むことに罪悪感をおぼえ、常に「もっとできるはず」と自分を奮い立たせてしまいます。周囲の期待に応えたい気持ちが強く、限界を超えても歯を食いしばってがんばり続け、気づけば心身ともに消耗しきっていることも。
がんばりすぎてしまう人におすすめしたいのが、がんばらないための予定を先にスケジュールに入れる方法です。たとえば手帳やカレンダーに、20時に「ストレッチをする」「漫画を読む」などと具体的に記入し、先に予定として入れてしまいましょう。がんばり屋さんは予定を守るのが得意なので、先にリラックスできることをスケジュールに組み込めば、それを遂行するかたちで自然と休めます。
さらに、一日の終わりに今日やったことを3つだけメモしてみてください。小さなことで大丈夫。資料に目を通した、メールを1つ返した、お風呂に入った。それだけでも充分がんばっています。「まだ足りない」ではなく、「これだけやっている」に気づくことが、がんばりすぎのブレーキになってくれます。
思考のループから抜け出せない人
1つのことが気になると、頭の中でぐるぐると思考が止まらなくなる傾向が。「あのとき、ああ言えばよかった」「この先どうなるんだろう」などと、過去や未来を何度も往復して、今この瞬間を味わう余裕をなくしてしまいます。
頭の中でひたすらぐるぐると考え続けてしまうのを止めるのに有効な手段が、体の感覚に意識を移すこと。たとえば、冷たい水で手を洗ってみてください。ひんやりとした感覚に集中するだけで、頭の中のぐるぐるがフッとゆるまる瞬間があります。
また、考えが止まらないときは、それを頭の外に出してしまうのも効果的です。裏紙でもメモ用紙でもいいので、頭に浮かんだことをそのまま書きなぐってください。きれいな文章でなくてOK。それだけで驚くほど頭がスッキリします。そして、書き出したものを見て、「それは『今』考えないといけないこと?」と自分に聞いてみてください。たいていの悩みは、今すぐ答えを出さなくても大丈夫だと気がつけますよ。
いつも譲ってしまう人
「自分さえ我慢すれば丸くおさまる」と、いつも自分の気持ちを後回しにしがち。相手を優先するあまり、本当はつらいのに笑顔をつくって、自分が何をしたいのか、何が嫌なのかさえ、わからなくなってしまいます。
まずは自分の本音に気づく練習から始めてみましょう。モヤモヤした気持ちがあるときは、一日の終わりに「今日のあの場面、本当はどう感じていた?」と、自分に聞いてみてください。声に出さなくても大丈夫。心の中で「本当は少し嫌だった」とか「じつは疲れていた」と、認めるだけでも構いません。それだけで、見えなくなっていた自分自身の輪郭がゆっくりと戻ってきます。
そして次のステップとして、ちょっとした場面で遠慮しないようにしてみましょう。ランチに行ったときに周りに合わせずに本当に食べたいものを注文したり、飲み物の好みを正直に伝えたり。そんな些細なことでいいのです。自分を優先する小さな体験の積み重ねが、我慢しすぎる自分をほぐしてくれます。
周りに求めすぎてしまう人
「きっとわかってくれるはず」「これだけやったのだから報われるはず」などと、相手や状況に対して理想を描きすぎてしまいます。現実と期待のギャップに落胆することが多く、そのたびに深く傷ついたり自信を失ったりしがちです。
いつの間にか期待が「こうあるべき」という執着に変わると、自分の思い通りにいかないことが増え、苦しくなります。そこで試してほしいのが、期待の語尾を変えてみること。「〜してくれるはず」から「〜だったらいいな」に置き換えるのです。これだけで、期待が願いに変わり、叶わなかったときのダメージがやわらぎます。
さらに、期待の分散も効果的です。ひとりの人や1つの結果にすべてを預けるのではなく、「こっちがダメでも、あっちがある」と、心の拠りどころを複数持っておきましょう。たとえば、仕事で評価されなかった日は、趣味や好きなお店、気の合う友人など、自分が満たされる別の時間や場所に目を向ける。心の拠りどころを分けるだけでも、心は軽くなりますよ。
怒りを爆発させてしまう人
些細なことでカッとなり、強い言葉を発したあとに「またやってしまった」と自己嫌悪に陥りがち。怒りの裏には、「わかってほしい」「大切にしてほしい」という切実な思いが隠れていることが多いですが、それを相手にうまく伝えられません。
怒りのピークは6秒ほどで過ぎると言われています。だからこそ、カッとなった瞬間に、まずは6秒だけ意識をそらすことを試してみてください。その間は、目に入ったものの色や形を頭の中で実況するのがおすすめ。「白い壁、丸い時計、青いペン…」と意識をそらしているうちに落ち着いてきます。
怒りが収まったあとは、自分は何を大切にしていたのかを探ってみてください。怒りは、自分の大切にしているものを傷つけられることで湧き起こります。それは物理的なものに限らず、「マナーを守る」「時間を守る」など、あなたの価値観かもしれません。怒りを分析すると、自分自身への理解も深まります。怒った自分を責めるのではなく、「それだけ大切にしているんだな」と、ねぎらってあげてください。
がんばりやの特効薬は「いい加減」
ここまで読んでくださったあなたは、きっと日頃から「もっとしっかりしなきゃ」とか「私が変わらなきゃ」と自分に言い聞かせるような、とても真面目でやさしい人だと思います。
最初に述べたように、「しすぎてしまう」のは、あなたの欠点ではなく、一生懸命に生きてきたからこそ身についた、あなたなりの生き方の1つ。だから、そんな自分をダメだと責めたり、大きく変えようとしたりする必要はありません。やりすぎていたなと気づいたら立ち止まり、そっと力をゆるめることを続けていけば大丈夫です。
「適度」に生きるとは、完璧なバランスで生きるということではありません。揺れながら、時にはやりすぎながらも、「あ、ちょっとしすぎたかも」と気づいたら戻り、「いい加減」に生きること。「いい加減」と聞くとネガティブな印象があるかもしれませんが、加えたり減らしたりの繰り返しそのものが、「適度」に生きるということなのです。
今回ご紹介した方法も、すべて試してみる必要はありません。この中のどれか1つでも、ちょっとやってみようかなと思えるものがあったら充分です。あなたがあなたのままで、ゆっくりとひと息つけるように、自分にやさしくしてあげてください。
![PHPスペシャル 2026年8月号[疲れない人が していること]](/userfiles/images/book2/B0H3TXGLYY.jpg)






