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生き方

遊びのお金はきれいに使ってこそ楽しい

川北義則(生活経済評論家/出版プロデューサー)

2013年06月20日 公開 2022年11月10日 更新

《PHP新書『みっともないお金の使い方』より》

 

 歌手の桑名正博さんが亡くなったとき、彼と親しくつきあっていたカメラマンの男性が、こんな思い出を話していた。

 上海ライブの打ち上げで一緒に飲んだとき、カメラマン氏はその日泊めてもらうはずの地元の友人とはぐれてしまい困っていた。それを知った桑名さんは、「オレの泊まっているホテルへ来いよ」と言い、わざわざ部屋をとってくれた。

 翌朝、彼が目覚めると、桑名さんはもう発ったあとで、彼のぶんの支払いもすべてすませてあったという。

「また1人、きれいに遊ぶことのできる大人が、この世から去ってしまった」

 彼はそう嘆いていた。同感である。私が若いころも、先輩たちのなかには、じつに気持ちよく遊べる大人が大勢いた。気持ちよく遊べるとは、お金に関して気をつかわなくてすむということである。

 何人かで連れ立って遊ぶときは、どこかの段階で支払いの問題が出てくる。しかし、お金の心配をしながら遊ぶのでは、少しも楽しくない。だから、仲間と遊ぶときは、お金をどう払うのか前もって決めておく必要がある。

 それから、遊びであっても分不相応なお金を使ってはいけない。きれいに使うためにも、自分の身の丈を知っておくことだ。身の丈に合うというのは、一見、「地味のすすめ」のようだが、そうではない。お金のある人間は、あるように使うのが身の丈に合った使い方だ。

 漫画家の赤塚不二夫さんは、それができた人だ。人気漫画家で収入も多かったころ、連日タモリさんを連れて遊び歩き、散財しただけでなく、住んでいた高級マンションを彼に明け渡して、自分は木造2階建てのアパートに寝泊まりして仕事をしていた。

 理由を尋ねられると、「タモリのあのすごい才能を生かすには、ぜいたくを知らなきゃダメだ」と答えた。その後、順調に売れ出したタモリさんは、逆に赤塚さんが落ち目になると、みずから設立した会社の顧問になることを要請し、毎月30万円ずつ律儀に振り込んだという。

 それだけではなく、赤塚さん所有のベンツやキャンピングカーを買い取って、赤塚さんのプライドを傷つけないかたちで支援した。だが、赤塚さんのほうは、タモリさんが振り込んだお金には一銭も手をつけていなかった。それを知った人が理由を尋ねると、赤塚さんはこう言ったという。

 「芸人なんて2年で飽きられる。そのときはこの金でタモリを食わせてやるんだ」

 こんなふうに書くと感動話に聞こえるだろうが、彼らのあいだでは、これらのすべてがギャグ(遊び)のうちなのである。漢字学者の白川静氏によれば、遊びとは、「神と人とがともに遊ぶこと」だという。人は神なしには遊べない。お祭りというのは、神様と人間が一緒になって遊ぶ儀式なのである。神は1人でも遊べるが、それでは楽しくない。だから人間と遊ぶ。祭りの原点はこんなところにあったのだ。

 しかし、神と遊ぶとなると、おのずと襟を正すことになる。遊び上手がきれいに遊ぶのは、遊びの本質を本能的に理解しているからか。きれいに遊ぶと、神から恩寵が得られるのかもしれない。そんな遊びができる大人が少なくなった。

 

川北義則
(かわきた・よしのり)

生活経済評論家

1935年大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。東京スポーツ新聞社に入社し、文化部長、出版部長を歴任する。77年に独立して日本クリエート社を設立。出版プロデューサーとして活躍するとともに、生活経済評論家として新聞、雑誌などさまざまなメディアに執筆。講演も多い。
おもな著書に『「孤独」が一流の男をつくる』(アスコム)、『「20代」でやっておきたいこと』(三笠書房・知的生きかた文庫)、『大人の「男と女」のつきあい方』(中経出版・中経の文庫)、『男はお金とどうつき合うべきか』(大和書房・だいわ文庫)、『男の品格』『人生・愉しみの見つけ方』『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』(以上、PHP文庫)、『人間関係のしきたり』『みっともない老い方』(以上、PHP新書)など多数ある。
ykawakita@nifty.com


<書籍紹介>

みっともないお金の使い方

川北義則
本体価格760円

家庭も企業も節約節制。そんなしみったれた根性では、いい仕事も豊かな人生も送れやしない。お金と幸福を結びつけるのはもうやめよう。

 

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