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生き方

品格ある男になれ~凛とした男の生き方

川北義則(生活経済評論家/出版プロデューサー)

2013年08月01日 公開 2022年11月10日 更新

行列してまでラーメンを食べるな

余計なお世話かもしれないが、ラーメンを食べるために、店の前に行列をつくるのはいかがなものか。あまり様子のいい光景には見えない。

戦後のモノ不足の時代は、配給のためよく行列をつくった。ソ連時代のロシアでは行列が名物だった。私たちの世代にとって、行列とはモノ不足の象徴なのだ。

もちろん、ラーメンの行列は不足のための行列ではない。おいしいラーメンを食べたいという人たちが並んでいる。だから他人がとやかくいう筋合いではないが、次のような見方のあることも知ってほしい。

「いまの日本って、品がいいとか悪いとかいわなくなったね。俺たちが子供の頃は、そば屋に行列するとか、立ち食いとかは恥ずかしいという感覚があったけど……」

私がいいたいのは、これだ。自分が好きでする行為であっても人からあきれられたり、顰蹙〈ひんしゅく〉を買うこともある。それに気づかないのは鈍感である。

何でもかんでも「他人の目を気にする必要はないが、ときに自分の姿が「他人の目にどう映るのか」ぐらいの判断基準はもっていてほしいということ。

子供の頃、何かしようとすると「みっともないからやめなさい」と、親からよくいわれたものだ。そのとき「どうして?」と不服に思うこともあった。しかし、そういわれたことが、以後の自分のすることの価値判断に、一定の影響を与えたことは間違いない。

いまは「みっともない」の価値基準が違ってきている。昔の人の基準と、いまの若者が考えるみっともなさには大きな隔たりがあるかもしれない。価値観が多様化した時代は、とくにそうだ。

だが、電車の中で化粧をする人間を見ていると、1つの特徴がある。服装にしても、人相風体にしても、品のある人は決してそんなことはしていない。飲み食いにしてもそうだ。やはり品性とか品格ということになると、年長者の判断のほうが勝る。この点は、謙虚に受け止めてほしい。

結局、行列してまでラーメンを食べようとする人たちは、流行を追っているのだろう。メディアで紹介された「評判の店のラーメンを食べた」というステータスが欲しいのだ。それはそれでけっこうだが、そんなセンスでは、とても真のグルメは語れない。

最近では格安の立ち食いのフレンチとかイタリアンができて、ここにも行列ができている。われわれの年代から見ると何をかいわんやである。

昔の親は、なぜ「みっともない」という言葉を使ったのか。この言葉は「見たくない」「見苦しい」という意味からきた言葉だ。

どんなものがそれに該当するかを何度も伝えることで、人から後ろ指をさされたり、あきれられたりしない人間を育てようとした。いわば、品格教育のようなものである。

ところがいまの親は、昔の親ほど「みっともない」ということをいわない。だから、いまの若い人たちは、何がみっともなくて、何がみっともなくないのか、わからなくなっている。

こういう話がある。息子が立て膝で食事しているのを見て、父親が激怒した。息子は反発した。息子は、それが非礼とは思っていなかったのだ。

コートを着たまま、帽子をかぶったままでレストランで食事をする姿もよく見かける。それも若者に限らない。家の中でもその格好で食事をするのだろうかと疑ってしまう。

たしかに「みっともない」の判断は、けっこうむずかしい。だが、大人は自分の価値基準でどんどん指摘すべきだし、若い人たちは「世間は、つねにそういう目で見ている」ことを意識するべきだ。その意識が品格を高めるからである。

ちなみに、ある評判のラーメン屋は、評判ゆえにできた長い行列が周辺の苦情を招き、閉店に追い込まれた。本末転倒ではないか。


<書籍紹介>

凜とした男の生き方

川北義則著 
本体価格571円

「『明日死ぬ』と思って生きてみよ」「『一人旅』をしなさい」など、美学をもって、凜とした力強さを身につけるための男の指南書。


<著者紹介>

川北義則(かわきた・よしのり)
生活経済評論家
1935年大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。東京スポーツ新聞社に入社し、文化部長、出版部長を歴任する。77年に独立して日本クリエート社を設立。出版プロデューサーとして活躍するとともに、生活経済評論家として新聞、雑誌などさまざまなメディアに執筆。講演も多い。おもな著書に『「孤独」が一流の男をつくる』(アスコム)、『「20代」でやっておきたいこと』(三笠書房・知的生きかた文庫)、『大人の「男と女」のつきあい方』(中経出版・中経の文庫)、『男はお金とどうつき合うべきか』(大和書房・だいわ文庫)、『男の品格』『人生・愉しみの見つけ方』『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』(以上、PHP文庫)、『人間関係のしきたり』『みっともない老い方』(以上、PHP新書)など多数ある。

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