「記憶に残る接待」で差をつけよ!~仕事のできる人の接待道
2013年10月02日 公開 2022年11月09日 更新
《『THE21』2013年10月号より》
写真:永井浩
接待でわかる人間性とセンス
「接待」という言葉に古い印象を持つ読者は多いだろう。だが、ビジネスの最前線で活躍する遠藤功氏はむしろ、「接待ができる人こそが、ビジネスでも成功できる」と断言する。自身も「先輩の見よう見まねから始めて、徐々にコツをつかんでいった」という氏に、その「接待道」をうかがった。
私がある「接待」で激怒した理由
つい先日の出来事です。弊社のクライアントの社長および役員の方々との会食の予定があり、私は秘書から「先方のセッティング」だと聞いていました。
ところが、少し早めに到着すると、どうも様子がおかしい。決して悪い店ではないのですが、その社長が選ぶような店には思えない。そこで担当の若いパートナーに聞いてみると、実はこちらのセッティングだと言うのです。しかも、手土産1つ用意していない。
思わず激怒しました。なぜ相談もなく店を選んだのか。手土産すら用意していないとは何事だ。すぐにその場で買いに行かせましたが、接待の本質がまったくわかっていないことに愕然としました。
若い人は、接待なんて古くさい、意味のないものだと思っているかもしれません。しかしそれは大きな勘違いです。どんなビジネスでも決め手となるのは信頼関係。頭の善し悪しで仕事が決まるわけではありません。
信頼関係を築くには、自分を知ってもらい、自分を売り込まねばなりません。接待の場はその最大のチャンス。つまり接待とは、会議室では築けない深い人間関係を構築する場なのです。会社のお金で飲食する場だと思っていたら大間違いです。
一方で、だからこそ厳しい場でもあります。その人の人間性やセンスがさらけ出されてしまう。中途半端な接待なら、やらないほうがマシです。
私は接待とは、まさに接待「道」と呼ぶべきものだと思っています。それほどに奥深く、極める価値があるものです。
接待の際にはまず大前提として、「相手の貴重な時間をいただいているという意識を持つ」ことです。会食の時間が2時間だとすれば、相手は別のことに使えたその2時間を、自分たちのために割いてくれている。それに対する感謝の気持ちです。
次に、「接待の基本をわきまえる」こと。これも基本中の基本ですが、最近は相手のお酒のグラスが空になっても何もしない人がいて驚きます。それは論外としても、他にも押さえておくべき基本は数多くあります。
あなたが、取引先の60代の社長を接待することになったとします。まず、時間を決めねばなりませんね。あなたなら何時スタートにしますか。
もし19時やそれ以降と答えたら、残念ながら失格です。仲間との飲み会ならともかく、年配の経営者との会食は、18時開始が基本です。
それなりの地位の経営者であれば、夕方以降は通常業務の予定は入っていません。会議や報告などで日中は埋まっていても、夕方以降は外部とのおつき合いなどの時間帯です。比較的高齢の方も多いので、接待は早めに始めて早めに切り上げるのが常識です。
また、偉い人ほど決まって時間より早めにいらっしゃるもの。だから私は必ず15分前、できれば30分前には到着するようにしています。
遅刻は言語道断ですが、早く着いていれば、事前に座る場所をチェックして、下座のほうが景色が良いからあえて下座に座っていただく、などの工夫もできるというものです。
私がもらって嬉しかった最高の手土産とは
ここまではいわば「初級編」です。ですが、やはり接待をする以上、相手の印象に残らなければ意味がありません。その際に大事なのは「I CARE YOU」の精神。相手の目線に立ち、「気を遣ってもらっているな」ということが相手にさりげなく伝わるよう準備をすることです。店選び、料理選び、酒選び、手土産選び、すべてこの「I CARE YOU」が基本です。
だからこそ、事前リサーチは必須です。私も初めての方を接待するときは必ず、相手の好みをリサーチします。その方の秘書に連絡を取って、好みや酒量などを確認します。
接待に対する大きな誤解の1つに「自分の好きな店に連れていけばいい」というものがあります。もちろん、接待に使える自分のなじみの店を作っておくことは大事です。ただ、あくまで大事なのは相手目線。たとえば、酒が飲めない方をこだわりの銘酒の店に連れていっても先方は喜びません。
そして、店を選んだら再び秘書の方に「この店に行ったことがありますか」と聞いたうえで決定する。そこまでして初めて「I CARE YOU」なのです。
手土産も同様です。よくあるのが、ボリュームのあるクッキーなどの詰め合わせ。奥さんと2人暮らしの年配の方には食べきれません。相手のことを考えないからそれに気づかない。一方、私が嬉しかったのが「奥様にどうぞ」と海外で買った気の利いたフレグランスをいただいたとき。その気遣いに感激したものです。
相手との会食が2、3回と繰り返されるようになったら、「サプライズ」を織り込むことを考えるべきでしょう。
先日私はあるグルメな社長を、五反田の小さな、知る人ぞ知る焼き鳥の店にお連れしました。有名店は知り尽くしているので、あえて「外して」みたのです。まさに赤提灯という言葉がふさわしい店でしたが、社長は喜んでくれて、以後、顏を合わすたびにそのときの話になります。店選びそのものがサプライズなのです。
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