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オートファジー(細胞の自食作用)とは何か?

水島昇(東京大学教授)

2013年10月04日 公開 2022年08月25日 更新

オートファジー(細胞の自食作用)とは何か?

2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典博士による研究をきっかけに、医者や生物学者から注目を集めている「オートファジー」。

細胞を活性化させ、老化の抑制効果もあると何かと話題の生命現象だが、そもそもなぜ、生物にはこのような仕組みが備わっているのだろうか。また、この仕組みはからだの成長や老化、病気や免疫とどう関わっているのか…。

大隅良典博士の下でオートファジーの研究を行っている東京大学教授の水島昇氏が、いま最も熱い研究領域のひとつといわれる、オートファジーの仕組みや役割について解説する。

※ 本稿は、水島昇著『細胞が自分を食べる オートファジーの謎』(PHP新書)より、内容の一部を抜粋・編集したものです。

 

オートファジーはタンパク質を分解している?

まず、実感できる話から入ろう。3大栄養素といえばタンパク質、炭水化物(糖分)、脂肪である。もちろんこれら以外にもミネラルやビタミンなども必須の栄養素であるが、必要量として多いのは圧倒的にこの3つである。この中でも、タンパク質は特に重要だと感じている人が多いであろう。

私たちは食事からいろいろなタンパク質を見境なく摂ってそれを腸でアミノ酸にまで分解している。ちょうどひもでつながったビーズをほぐしてビーズ1つひとつにわけているのと似ている。これらのアミノ酸を体に取り込んで、人間用の配列をもったタンパク質としてつなぎ直しているのである。

さて、ここで簡単な質問を2つ出そう。

【第1問】私たちはどのくらいのタンパク質を毎日食べているか?

最近ではいろいろな食品の表示にタンパク質量が記されているので気にされている人もおられるだろう。100gの肉に含まれるタンパク質は20g程度、卵1個に5~6g程度、牛乳1杯に3g程度である。答えは、「体重1kgあたり約1g」である。つまり70kgの人は1日約70gのタンパク質を食べている。

【第2問】私たちはどのくらいのタンパク質を毎日合成しているか?

食べたタンパク質を腸で分解・吸収して、それをもとに作るわけであるから、単純に1日70gとなるであろうか?答えは否である。200g程度と見積もられている。しかし70gの食事由来のタンパク質から得られるアミノ酸をつなぎ直すだけでは、70gのタンパク質しか作ることができないはずである。200gもの体のタンパク質の材料をいったいどのように調達しているのであろうか。

実は、私たちの体自身に由来しているのである。私たちは1日になんと200g程度の自分のタンパク質をアミノ酸に分解している(図)。これは食事の約3倍にあたる。口から食べているタンパク質より、ずっと多い量の自分のタンパク質を食べているのである!

といっても、自分の手や足を本当に食べてそれを腸で分解しているわけではない(当たり前だが)。ではどこで食べているのか?

それは主として、私たちが意識することのない細胞の中である。毎日こつこつと、そしてときに激しく行われている。その主なしくみが「オートファジー」である。

 

水島昇 オートファジー

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