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社会

文系出身が物理学者に聞いて驚いた「物理学者の習性」

深井龍之介(COTEN代表)、野村高文(音声プロデューサー)

2022年07月15日 公開

文系出身が物理学者に聞いて驚いた「物理学者の習性」

各学問のトップランナーとの対話を通し、教養(リベラルアーツ)の核に触れることで思い込みを捨て新たな視点が得られるヒントとなる書『視点という教養 世界の見方が変わる7つの対話』。

本稿では同書より、元楽天常務執行役員として日本を含む海外5拠点の組織を統括し、一方で物性物理の理論物理学者として、『Science』などの学術雑誌へ20本以上の論文を発表した経歴を持つ物理学者の北川拓也氏に、『歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)』オーガナイザーの深井龍之介氏と、Podcast Studio Chronicle代表・音声プロデューサーの野村高文氏が「そもそも物理学とは何か」を率直に聞いた一節を抜粋し・紹介する。

※本稿は『視点という教養』(深井龍之介・野村高文[共著]、イースト・プレス刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

文系にとっての物理学の存在

【野村】深井さんは「物理学」になじみはありますか?

【深井】もっともなじみから遠い分野です(笑)。大学は文学部ですし、高校時代は物理を選択する必要がなかったので、一度も習っていません。

でも興味はめちゃくちゃあって。というのも素人の感覚ですが、物理学で出てくる話題が、僕が勉強している社会科学や社会の動きと、リンクするように見えることがあるからです。どこか、つながっているような気がするんですよね。

【野村】2つの分野に橋を架けるような話ができたらいいですね。ではゲストをお迎えしましょう。物理学者の北川拓也さんです。

【北川】よろしくお願いします。

【深井】北川さんは好奇心のかたまりのような人で、気になることがあると、いろんな人に食い気味に質問するんです。僕はそれに触発されたので、今日はいっぱい質問します

 

現代の物理学の2つの潮流

【深井】さっそくド直球の質問ですけど、そもそも物理とは何ですか?

【北川】ハーバード大学で僕の指導教官だったユージーン・デムラーは、その問いについて「物理学者がやることはすべて、物理なんだ」と言っています。

【深井】え、どういうことですか?

【北川】物理学は「物(もの)の理(ことわり)」と書くように、ものごとを原理的に理解する学問です。

ユージーンは芸術家から物理学者に転向した人なので、物理学と他分野の橋を架けることに寛容です。とくに変化が激しいこれからの時代は、その「物の理」をもっと幅広くとらえ、他の分野にも取り入れるべきだと考えているから、こういう言葉が出るのだと思います。

現在の物理学は、大きく2つに分けられます。1つは、物をどんどん小さい単位で見ていき、世界が何で構成されているかを解き明かすもの。何からできているかさえわかれば、世の中が理解できるはずだという考え方です。「素粒子理論」や「超ひも理論」は、こちらに分類されます。

もう1つはそれとは逆で、原子や分子を組み合わせると何ができて、どんなことに役立つのかを研究する分野です。「物性物理」と呼ばれていて、僕はこちらを専攻していました。

まずは、物理にはミクロとマクロの2つの分野があることを理解してもらえればOKです。

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