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生き方

自己暗示で運気を上げる法則

樺旦純(思考心理学者/評論家/著述家)

2013年11月28日 公開 2022年12月21日 更新

 

マイナスの言葉をやめれば運をつかめる

 私は心理学の専門家で、占いができるわけではありませんし、人の運命をよい方向に持っていく力もありません。しかし、人の運気がどんな状態にあるのかは、数分だけ会話を交わせばわかってしまいます。なぜなら、運気が落ちている人には共通した傾向がみられるからです。その傾向とは、マイナスの表現が多いことです。

 たとえば、
 「明日の会議は失敗しそうだな」
 「がんばってプレゼンしても、どうせ契約は取れないさ」
 「課長はオレのことを嫌っているから」
 などといった具合です。

 たかが言葉じゃないか、と考える人もいるでしょうが、これはとても危険なことです。なぜなら、マイナスの発言をしていると知らぬ間に暗示にかかり、心までマイナスになってしまうからです。心がマイナス状態になってしまったら、自信など跡形もなく消えてしまいます。そうなれば、何をやってもうまくいかないのは当然のこと――これは、私たちがよく口にする「運気が下がっている」という状態です。つまり、マイナスの言葉を使えば使うほど運気は下がり、ツキは逃げていくというわけです。

 信じられない人には、「クエイズム」という精神療法を紹介しておきましょう。

 これはフランスの精神療法学者エミール・クーエが考案したもので、マイナスの言葉を排除するだけで効果が得られる暗示療法です。

 たとえば、膝関節の痛みに苦しんでいる患者さんには、「痛みは消える、消える、消える」という言葉を繰り返し聞かせます。すると、患者が永年苦しめられてきた膝の痛みは消えてしまうのです。こうしてクーエは、多くの難病患者を痛みから救いました。

 そういえば、子どもの頃、怪我をすると、お母さんが手当てをしてくれながら優しく「大丈夫ちちんぷいぷい」などと言ってくれたものです。これも暗示の一種で、今となってはその言葉で痛みが消えたかどうかまでは覚えていませんが、たとえ痛みは残っていたとしても、安心感を覚え、落ち着くことができたはずですね。

 マイナスの言葉は、「できない」「ダメ」などだけではありません。「嫌い」や「嫌だ」「悪い」「失敗」「痛い」なども含まれます。

 前出のクーエも、「痛み」という言葉は1度しか使っていません。否定語である「痛み」を使わなければ、クエイズムの効果はより高くなるのだそうです。

 「疲れた」という言葉が口癖になっている人がいます。「疲れた」と言っていると、実際には疲れていなかったにもかかわらず、本当に疲れてしまいます。体が疲れたら、何をやってもうまくいかないでしょう。

 口を開けば必ず「どうせ」「しょせん」という言葉が最初に出てくる人もいます。これは、物事を悲観的に考える人によくみられる口癖で、自ら可能性に限界をつけて努力することを放棄している証拠です。こうした言葉が口癖になっているタイプは、やってもいないうちからあれこれ考え込んでしまい、結局は行動しません。これでは運気が上がらないのは当然。何事もやってみなければ、うまくいくかはわからないものです。まず一歩を踏み出すためにも、マイナスの言葉は避けるべきですね。

 では、運を上げるためにはどういう言葉を使えばいいのでしょうか。簡単なことです。「大丈夫」「元気」「よし!」「やるぞ」などと言えばいいのです。体のどこかに痛みを感じている場合は、「楽になる」と繰り返してもいいでしょう。プラスの言葉は、大脳生理学的にも効果があるとわかっています。脳の潜在意識を司る部分をプラスの言葉で繰り返し刺激することによって、意識もまたプラスの方向に向くようになります。

 サッカーの日本代表・本田圭佑選手は、デビユー当初は「ナマイキだ」という批判を受けることがよくありました。当時、フリーキックをさせたら日本一と言われていた中村俊輔選手に「俺に蹴らせてくれ」と詰め寄ったこともあるそうですから、そう思われてもいたしかたないでしょう。

 しかし、そんな批判を受けても、彼は自信にあふれる態度をとりつづけました。その結果、自他共に認める世界的なサッカー選手になれたのです。その理由が彼の実力にあったのは事実です。しかし、たとえ実力があったとしてもネガティブな思考の持ち主だったとしたら、今のような“運”はつかめなかったでしょう。運やツキは訪れるのを待つものではなく、暗示をかけ自分でつかみに行くものという好例です。

 

目標を書き、「できる」と言うだけで可能性は高まる

 大手生命保険会社が、全国の小学6年生までの子ども200人を対象に「将来何になりたいか」というアンケートを行ったところ、男の子の1位は「サッカー選手」で、女の子の1位は「食べ物屋さん」でした。

 この結果を聞いて、「子どもは夢があっていい」と他人事のように考える人は、運が下がる一方でしょう。

 たしかに、子どもと大人では世界や環境は異なりますが、このアンケートの回答のように、目標を漠然としたものではなく、具体的に明確にすることがポジティブな暗示をかけるためには欠かせないことだからです。

 具体的な目標を思い浮かべたら、今度はその目標にどうやって到達するかを考えなければいけませんが、それにはまず紙に書くことです。具体的な目標を、いつも目につくところに貼っておけば、知らず知らずのうちに暗示にかかり、それが潜在意識に刻み込まれていきます。潜在意識に目標がくっきりと刻み込まれれば、自分で意識しないまま目標へ向かって行くことができます

 受験生時代、勉強部屋に「○○大学合格!」などと書いた紙を貼った人もいるでしょう。これは単なる気休めではなく、確実に効果があったということですね。

 さらに強く潜在意識に刻み込むために効果的なのが、目標を口に出すことです。大声で叫ぶ必要はなく、独り言のように小声で口に出すだけで充分です。

 作家やプロのスポーツ選手などがスランプになると、「俺はできる!」と繰り返し叫ぶそうですが、これと同じです。「俺はできる!」と叫ぶことによって、知らず知らずのうちに自信が回復し、やる気が出てきます。これは“気のせい”ではなく、自己暗示の一種なのです。

 このときのポイントは、小さくてもいいから必ず声に出すこと。英単語を必至に暗記したときのことを思い出してください。頭の中だけで繰り返したときよりも声を出したときの方が記憶に残ったはずです。この違いは、大脳生理学的にも認められているところなので、目標は必ず口に出して繰り返すように。

 小さな子どもは独り言を言いながら遊んでいたりします。これは、自分の考えていることを言葉にし、その言葉に刺激されて自分の行動を進めているのです。もちろん、子どもと大人では目標は異なりますが、それを実現するための努カ――自己暗示をかけるためのヒントにはなるはずです。


<書籍紹介>

運は暗示で強くなる!
一瞬でツキが手に入る自己暗示の法則

樺 旦純 著

運は持って生まれたものじゃない。心の持ち方や行動習慣であっという間に強くなるもの。心理学を駆使した運のあげ方を紹介します。

<著者紹介>

樺 旦純(かんば・わたる)

思考心理学者、評論家、著述家

岩手県生まれ。産業能率短期大学で人事労務関連教科を担当。同大学経営管理研究所で創造性開発・能力開発の研究、指導(兼任)に携わり、産業教育研究所所長を経て、現在に至る。企業などの社員研修、能力開発を全国規模で精力的にこなすほか、わかりやすい語り口のセミナー・講演も人気を博している。
著書に『ちょっとしたひと言で疲れさせる人 会いたくなる人』『カチンとくる話し方 好かれる話し方』『会話がはずむ人 はずまない人たった1つの違い』(以上、青春出版社)などがある。

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