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済生丸―瀬戸内海の「島の命」を守り続ける船の病院

2014年08月04日 公開

坂本光司(法政大学大学院教授)+坂本光司研究室

4代目済生丸、通称「済生丸100」が2014年に運航開始

 2012年10月末、関係4県からの地域医療再生計画での補助金が後押しする形となり、「済生丸四世号(仮)」の発注が神戸の金川造船に決まりました。

 また、これに加え国からの補助も受け、建造を進め、進水式は2013年8月8日、新船竣工披露式は翌2014年1月以降関係4県で実施され、岡山では新岡山港と笠岡港で行われました。

 そしてついに1月15日、4代目済生丸、通称「済生丸100」が笠岡諸島の北木島を皮切りに診療を開始しました。総建造費6億6000万円、全長約33メートル、幅7メートル、総トン数180トン、航海速力12.3ノット(時速約23キロメートル)で、定員は船員5名、診療班24名で、これに加え臨時乗貝は21名となっています。自動血圧計、解析付き心電計、胃部透視撮影装置、胸部X線、超音波検査、婦人科検診台、眼底カメラ、骨密度測定器、マンモグラフィ、生化学自動分析装置、AEDなども設備し、診察室2室と待合室も設けています。

 医療船の性質上、船底にレントゲンなどの検査機器が設置されているため、車いすや足の不自由な人は狭い階段の昇降が困難でした。そこで、済生丸100には、長年の夢であった4人乗りエレベーターを設置しました。また、段差をなくしたり、通路を2メートルに広げたり、高齢化が進んでいる離島住民に対応し、バリアフリーになっています。船体や機関、電気部門にわたり装備の充実も図っています。

 

日本唯一の病院船として大震災時に活躍

 日本には、災害時に備えた病院船がありません。全国で唯一の病院船である済生丸の存続意義はとても重要なのです。大規模災害時には、医師や診療物資の運搬、診療拠点にもなります。

 1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災の際は、愛媛県松山港に停泊していましたが、急きょ巡回診療を中断し、岡山に回航して「災害救助船」として医療救援活動に参加しました。

 兵庫県衛生部から岡山県保健福祉部を通じ依頼があり、新神戸港へ救援に駆けつけました。派遣のべ人数は、医師40名、看護師39名、薬剤師や放射線技師など医療技術員11名、事務他18名の合計108名(香川、岡山、広島、愛媛、鳥取、島根、山口、福岡、佐賀、熊本の各済生会より派遣)にのぼりました。

 混乱する陸路を避け、海路を使って、岡山~神戸間を何度も往復し、救援物資を運ぶなどしました。不足する紙おむつや粉ミルク、生理用品などの救援物資を運搬し、その量はトラック5台分にもおよびました。医師や看護師、ボランティアなども送り届け、神戸の長田地区では診療にも当たりました。また、診療する医師や看護師の宿泊施設としても活躍したことはあまり知られていません。約1カ月半にわたり、輸送および救護支援活動に大きく貢献したのです。

 

全国の人たちの力で「済生丸」を守り続けたい

 島の人たちは、病気になったとき、自由に医療機関を選べません。済生丸は病気を未然に防ぐ「予防医学」を実践し、瀬戸内の「無医島の人々の命」を50年もの長きにわたり守ってきたのです。人口の過疎化と医療の過疎化が進み、不安を抱き続けている70歳以上の島の高齢者にとっては、まさに「命をつなぐ船」なのです。

 瀬戸内海64の島と1地区の人たちの文化であり、「災害時の医療船」にもなりうる済生丸を維持、継続することは必要不可欠です。国民健康保険料を支払っていても平等に医療を受けられない島の人たちのためにも、また、それ以上に島で待っている人がいる限りやめるわけにはいかないのです。

 済生丸の維持管理には、多額の費用が必要です。そこで、国からの災害時の運搬救助船として認可を受けられるように、厚生労働省や各省庁に意見書を提出しています。

 今、このときも、済生丸は、重い負担をかかえて、巡回診療・検診を行っています。済生会4支部だけに任せず、全国の人たちの力で「島の命」の船の病院、済生丸を守り続けたいものです。

 全国の心ある人たちの「済生丸をなんとかしてあげたい」という気持ちを形にし、済生丸が存続できるよう、応援しようではありませんか。

 

<書籍紹介>

会社を元気にしたければ「F・E・D社員」を大切にしなさい

坂本光司+坂本光司研究室 著

7,000社以上の中小企業を訪問調査してきた著者が、「F(女性)・E(高齢者)・D(障がい者)社員」が活躍する元気企業を紹介。

 

<著者紹介>

坂本光司(さかもと・こうじ)

1947年静岡県生まれ。静岡文化芸術大学教授等を経て、法政大学大学院政策創造研究科教授。専門は中小企業経営論、地域経済論、福祉産業論。同大学院中小企業研究所所長ならびに静岡サテライトキャンパス長を兼務、経済産業省委員会委員、日本でいちばん大切にしたい会社大賞審査委員長、NPO法人オールしずおかベストコミュニティ理事長など、国・県・市の公務も多数兼任する。徹底した現場主義で、これまで訪問調査、アドバイスした企業は7000社を超える。
著書に『日本でいちばん大切にしたい会社(全4巻)』(あさ出版)、『社員と顧客を大切にする会社』(PHPビジネス新書)など多数。

坂本光司研究室

坂本光司教授の思想・理念を学ぶべく集まった社会人ゼミ生が約70名所属。職業は経営者、公認会計士、税理士、社会保険労務士、経営コンサルタント、市議会議員、心理カウンセラー、公務員など。
坂本教授との共著書に『幸せな職場のつくり方』(ラグーナ出版)などがある。近年、日本で最も活躍する社会人ゼミとして注目されている。



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