元CIAがこっそり明かしてくれた 投資に必要な「未来予測の技術」
2014年08月25日 公開 2024年12月16日 更新
当然のことながら、明日何が起こるかを見通すことができれば、誰しも成功できる可能性は飛躍的に上がる。本稿では、「経済の千里眼」の異名をもつ国際金融コンサルタント・投資家の菅下氏に、先行き不透明な時代で先を読む奥義を開陳していただいた。
※本稿は、菅下清廣著『一生お金に困らない「未来予測」の技術』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。
貴重な情報は「日常」にこそ存在する
ニューヨーク・マンハッタン。アメリカ最大の証券会社メリルリンチの新入社員教育を受けるため、28歳の私はウォール街の中心に降り立ちました。
「メリルリンチの研修期間を無事に終えることができれば、他社からは引く手あまたになるだろう。1.5倍の報酬を提示してくれるところもあるらしい」
そんな「都市伝説」がまことしやかに語られるほど、メリルリンチの研修制度はレベルが高いといわれています。配属されたのは179期、同期のクラスメイトは60人ほどだったと記憶しています。その中で、特に親しくなった人物がいました。
その人物を「スコット」と呼びましょう。授業が終わったあと、私はしばしばスコットと連れ立ってバーに出かけました。あるとき、彼が私にこんな告白をしたのです。
「僕は、元CIAなんだ」
本当か? 本当だとしたら、そんなことを言って大丈夫なのか?私は驚きながら尋ねました。しかしスコットは、涼しい顔をしています。
「もうCIAを辞めているから、まったく問題ないさ」
お酒を飲みながら、スコットはCIAについての話をしてくれました。スコットによると、CIAには「オーバー」と「アンダー」という2つのタイプが存在するということです。
オーバーとは、CIAの身分を隠してまったく別の職業に就いて活動している人たちを指します。たとえばジャーナリストや旅行代理業者、ビジネスパーソンなどに扮してあらゆる国に潜入し、表向きの仕事をしながら集めた情報を本国に送っているのです。
一方のアンダーは、CIA職員を公言して拳銃を所持し、職務上必要であれば人を殺害することもあるような、ある意味でイメージ通りの存在です。映画の「007」に登場するタイプのCIAですね。
私が在籍していた当時のメリルリンチ東京支店長も、元CIAか現役のCIAと噂されていたものですが、スコットは、現役時代、「オーバー」だったそうです。別の職業に就きながら情報を収集するプロフェッショナルです。そのスコットが、私にこう言いました。
「ミスター・スガシタ、よく覚えておけ。重要な情報は、日常生活のなかにある」どういうことでしょうか。
「CIAは、特殊な情報などまったく集めていない。世の中に広く流布している目の前の情報を分析し、そのなかからいろいろな事件を予測したり、解決したり、犯人を捜したりしているんだ」スコットはそう言います。
「CIAのやっていることは、世界中の新聞や雑誌などの分析だよ」
集めるのは、あくまでも日常にある情報だと言うのです。これは、裏を返せば、「私たちもCIAが頼りにしている情報と同じものに囲まれている」ということになります。CIAだけが特別な情報を持っているわけではないのです。
「普通の人は気づいていないだけなのさ。俺たちプロフェッショナルは『どんな情報が大切か』、それをわかっているんだ」
では、大切な情報を知るにはどうしたらいいのか。私はスコットに尋ねます。返ってきた答えは、これも特別なことではありませんでした。
「長年やっていればわかるよ。大工だってそうじゃないか。屋根瓦を作る人が、最初からいいものを作れると思うかい? 10年、20年かかって、やっと一人前になるだろう? 俺たちはカーペンター(大工)と同じなのさ」
さらにスコットが続けます。
「世の中にある情報を自分なりの視点で集めて、CIAと同じように、分析すればいいだけなんだよ」
これは私にとって、その後の人生を変えるほど、示唆に富んだ言葉でした。そういえば、「オマハの賢人」と呼ばれる世界有数の投資家ウォーレン・バフェットも、身近なところに目を向けるのが特徴の投資家です。
みんなが大好きなコカーコーラは、絶対に世界からなくなることはないだろう。コカ・コーラの株主になれば必ず儲かる。こうした発想をします。
日常生活のなかから、どのようにして自分にとって重要な情報をピンポイントで見つけることができるか。これが非常に重要だということを、メリルリンチの研修で、元CIA職員であるスコットから教わりました。