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次々と現れる新ウイルス…なぜ21世紀に感染症が大流行するのか

岡田晴恵(白鴎大学教授)

2015年01月15日 公開 2023年01月12日 更新

次々と現れる新ウイルス…なぜ21世紀に感染症が大流行するのか

※本稿PHP新書『エボラvs人類 終わりなき戦い』より一部抜粋・編集したものです
 

わずか40年で40以上の感染症が出現

エボラ出血熱という病気がどのようなかたちで人間の世界にやってきたかについてはすでに記した。

しかし、そもそもアフリカの「風土病」のような流行に留まっていたエボラ出血熱がなぜ、2014年には世界を震撼させるような影響力をもったのか。

エボラだけではない。実は1970年代以降、わずか40年程の間に40以上の新しい感染症が出現してきている。ハンタウイルスによる腎症候性出血熱や肺症候群、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)によるエイズ、イギリスのプリオン病(異型クロイツフェルト・ヤコブ病)やニパウイルスによる脳炎などが、それである。

アメリカ・カナダのウエストナイル熱、アフリカ全域でのリフトバレー熱、ベネズエラではベネズエラ出血熱が発生している。

比較的最近では、重症急性呼吸器症候群(SARS)やメキシコ発の豚インフルエンザ(2009年の新型インフルエンザとなった)、そして、多くの薬剤耐性を獲得した細菌である多剤耐性菌等がある。

H5N1型鳥インフルエンザは、600人以上の感染者を出し、いまも「強毒性新型インフルエンザ」となるリスクを抱えている。

厚生労働省の試算では、1918年に世界的流行(パンデミック)となったスペイン・インフルエンザ、1957年に流行したアジア・インフルエンザなど過去に大発生したインフルエンザの罹患率、死亡率をベースに算定した結果、新型インフルエンザが日本で流行した場合に国民の約25%が罹患、医療機関を受診する患者数は最大で約2500万人に達するという推計を示している。

この前提での日本国内での入院患者数と死亡数は、アジア・インフルエンザ級の場合(致死率0.53%)で入院患者数約53万人、死亡者数約17万人。スペイン・インフルエンザ級の場合(致死率2.0%)で入院患者数約200万人、死亡者数約64万人となると推計。

また、全人口の25%が罹患し、流行が各地域で約8週間続くと仮定した場合は、アジア・インフルエンザ級で、1日当たりの最大入院患者数10.1万人、スペイン・インフルエンザ級の場合で39.9万人と推計している。しかし、これらは呼吸感染に限定した、我々がよく知っている弱毒型の新型インフルエンザである。

これに対し、2003年からとくに問題となってきたH5N1型高病原性鳥インフルエンザは、鳥に対しても人に対しても、全身感染を起こす強毒型のウイルスである。

このH5N1型鳥インフルエンザウイルスが遺伝子の変異を起こして、人から人に連続して感染する「強毒性新型インフルエンザ」が発生したならば、スペイン・インフルエンザ以上の健康被害が起こると強く示唆される。まさに、人類に対する21世紀最大の感染症の脅威の1つとなるであろう。

これらの新しく興った感染症(新興感染症)は、1990年代以降、とくに問題となってきた。WHOでは、新興感染症を「かつて知られていなかった、この20年間に新しく認識された感染症で、局地的あるいは、国際的に公衆衛生上の問題となる感染症」と定義している。

【主な新興感染症年:病原体(ウイルス・細菌等)→ 疾 病

1973:ロタウイルス→小児の下痢
1977:エボラウイルス→エボラ出血熱
1977:レジオネラ・ニューモフィラ→レジオネラ症
1977:ハンタウイルス→腎症候性出血熱
1980:HTLV-1→成人T細胞白血病
1982:病原性大腸菌O157:H7→出血性大腸炎、溶血性尿毒症症候群
1983:HIV → エイズ
1983:ヘリコバクター・ピロリ→胃潰瘍
1988:E型肝炎ウイルス→E型肝炎
1989:C型肝炎ウイルス→C型肝炎
1992:ビブリオ・コレラ(O139)→コレラ
1993:ハンタウイルス→ハンタウイルス肺症候群
1996:牛海綿状脳症プリオン→異型クロイツフェルト・ヤコブ病
1997:H5N1型鳥インフルエンザウイルス→インフルエンザ
1998:ニパウイルス→脳炎
2002:SARSコロナウイルス→SARS
2009:新型インフルエンザウイルス→インフルエンザ

新興感染症の主なものは、野生動物由来のウイルスや細菌等が人に感染した病気である。

森林や密林を人間が開拓することによって、野生動物が生息するエリアに立ち入る機会が増えた。このことにより、野生動物がもっているウイルスなどが人に感染するケースがたびたび発生している。

そのような偶発的な感染から、新しい病気が地域社会に広がり、流行を起こすことがある。エボラウイルスのアウトブレイクの発生は、まさにこの典型的な事例であった。

こうして発生した感染症は、現代の世界的な高速大量輸送網の波に乗って、地域の限定した風土病に留まらず、短期間に国際的な疫病に発展する可能性がある。2002年のSARSの原因ウイルスとなったSARSコロナウイルスは、国内での流行を中国政府がWHOに報告した翌日には香港経由で国境を越えてベトナムやシンガポールに拡散し、わずか1週間で大陸を越えて北アメリカ大陸のトロントまで飛び火していった。

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