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[専門家が語る]コンプライアンスを学ぶ本当の意義とは?

野村修也(中央大学法科大学院教授/森・濱田松本法律事務所客員弁護士)

2015年03月05日 公開 2023年02月01日 更新

 

コンプライアンスの理解を深める「ビジネスコンプライアンス検定」

 

 企業の「社会的責任」という言葉が一般的になって久しいが、ここ数年はさらに、企業の「コンプライアンス」に対する世間の関心が高まっている。たった一人の社員の軽率な振る舞いが、企業全体を危機に陥らせることもある。社員一人ひとりがコンプライアンスの意義を正しく理解し、「自分は世間と自社を結ぶ存在である」という意識を持たねばならない時代になっているのだ。

 コンプライアンスの理解を深めるその一助となるのが、「ビジネスコンプライアンス検定」。受験に向けた学習を通じ、体系的にコンプライアンスの知識を得ることができる。中央大学法科大学院教授・野村修也氏の解説を交えつつ、「BASIC」「初級」「上級」の3つのレベル別に問題を見てみよう。

<BASIC>

 次の事例におけるAさんの行為に関する考え方として、適切なものを選びなさい。

 Aさんはネットが大好きで、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログで日常の出来事やグルメ等、さまざまなことについて情報発信を行ってきた。ある日Aさんは社内で、来月発売予定の新製品が発売中止になったという情報を偶然立ち聞きし、それについてブログに書き込んだ。その情報は世間に公表されていないが、Aさんが書き込んだのは「発売中止」という事実のみであり、ブログの内容は詳細についてふれていない。

ア.たとえ社員であっても、会社の業務に関連する内容を私的に発信することは問題となる可能性があるため、控えたほうがよい。

イ.プライベートでの情報発信は、会社といえども一切関与できない。発信するのは個人の自由なので、問題はない。

ウ.発信した内容は「発売中止」という事実のみなので、会社の機密情報にはあたらないため特に問題はない。


 「『BASIC』では社内はもちろん、プライベートでも起こりがちなシーンを取り上げます。いわば社会常識を問う問題。それを通じ、自分の行動を顧みることが目的です。というのも、普段は見過ごしがちな行動が、大きな企業不祥事をもたらす事例が後を絶たないからです。どんな行動がどのように企業に影響するかを知ることで、日頃の行動を考え直すきっかけとなります。

 そう考えると、不特定多数が目にするSNSの取り扱いには細心の注意が必要だとわかる。個人があえて企業情報を発信する必要はない。したがって『ア』が答えとして相応しいでしょう」

 

 次に「初級」を見てみよう。

<初級編>

 X社は、全国の販売店に商品を卸している大手食品メーカーであるが、ある販売店から、同社の製品Aを飲食した複数の消費者が食中毒症状を訴えて病院で手当てを受けていると連絡が入った。この事例におけるX社の対応として、適切なものの組み合わせはどれか。

(1): 原因が特定されていない段階での悪意による風評被害を避けるため、連絡をしてきた販売店に対して、原因が特定されるまで、食中毒が発生した旨を外部に漏らさないように依頼した。

(2): ただちに、製造・販売責任者等を連絡してきた販売店および病院に向かわせ、事実関係の確認を急ぐとともに、製品Aが原因であることも念頭に置き、食中毒の発生原因の特定を急ぐ。

(3): 食中毒の原因が製品Aに起因する可能性が高いと判断された場合には、直ちに、製品Aを取り扱う全販売店に対して、把握している事実を伝えて製品Aの販売を停止するように連絡する。

(4): 食中毒の原因が製品Aに起因する可能性が高いと判断された場合には、消費者の不安を解消させるため、直ちに記者会見を開き、代表取締役自らが、製品A以外の他の製品は安全である旨を宣言する。

ア .(1)と(2)/ イ .(2)と(3)/ ウ .(2)と(4)/ エ .(3)と(4)


 「常識を問う『BASIC』に対し『初級』はより業務に即した問題。ポイントは『この行動は、誰のためか』を常に考えること。答えはもちろん顧客です。不祥事が起きた際には、自己保身に走るのではなく、社員一人ひとりが『お客様のために何ができるか』をまず考えること。さらに、その価値観を全社で共有することが大切です。設問を見ると、選択肢(1)は情報の隠蔽で論外。(4)の『記者会見』も、自身のリスクを最小化しようとする自己保身の行動です。したがって『イ』が正解です」


 自社の利益ではなく、まず顧客の立場で考えること。この切り替えを促すのが初級です。

 

<上級編>

 A社が経営するアミューズメントパークXで、遊覧車から子供が転落して死亡する事故が発生した。事故発生の連絡を受けたA社の担当部署がとるべき対応の(1)?(4)について、コンプライアンスの観点から順序を考えた場合、最も適切なものはどれか。

(1): 事故発生を社長に報告する。
(2):緊急記者会見を開く。
(3): Xの管理責任者から事情聴取し、遊覧車の取り扱いマニュアルを確認するなどして、事故防止対策の実情の基本的事項を調査する。
(4): 遺族に謝罪する。

ア.(1)→(2)→(3)→(4)
イ.(1)→(3)→(2)→(4)
ウ.(4)→(1)→(2)→(3)
エ.(4)→(1)→(3)→(2)


 「責任者レベルでの対応を学ぶのが『上級』試験。例題は、テーマパークで死亡事故が発生したケースで、取るべき行動の順序が問われています。ただ、正解したからといって、それだけで満足してはいけません。

 まず行なうべきは、経営責任者に報告し、次にその責任と判断の元で、事故の調査をすること。よって、解答は『イ]となります。解答では『謝罪』の前に『記者会見』とありますが、実際には記者会見と謝罪、どちらが先でも問題はありません。遺族に謝罪したのち、記者会見を開くのが正解のこともあり得ます。

 なお、責任者として遺族の元へ謝罪に行くことは、『自社の責任を認め、損害賠償することも視野に入れる』ことを意味します。企業に責任があるかまだ未確定な段階ならば、まずは部課長レベルが遺族の元へ駆けつけ、すべての調査が終わったのちに社長が訪問するのが妥当でしょう。しかし、明らかに企業に過失がある場合は、先に遺族へ謝罪するほうが適切です。謝罪前に記者会見を開き、その記者会見を遺族がテレビなどで観れば、企業への不信感を募らせることになるからです。

 上級者レベルでは、こうした『例外』についても考えさせられる問題が出題されます。ただ、現実においても、絶対の正解がないケースのほうが多いはず。

 コンプライアンスの意義を正しく理解しておけば、現実にこうしたケースが起こっても自己保身ではない対応がとれるようになります」

 

 情報化が進んだことで、我々が日々直面するトラブルはより複雑化・多様化している。ビジネスにトラブルはつきもの。現代に生きる私たちには、臨機応変な対応スキルが求められている。こうした中で、コンプライアンス検定は、体系的なスキルを養うのにうってつけだ。時代が要請する知識をいち早く身につけ、自身の〝働く力〟を高めてみてはいかがだろうか。

 



コンプライアンスを学ぶ意義

 「この検定の目的は、一言一句を丸暗記することではありません。検定問題を通じて、事件の何が問題とされているのかを正しく理解し、事件の対処法を自分の言葉で説明できるようにすることが重要。それができれば、企業に不測の事態が起きたとしても、大きな不祥事になることを未然に防ぐことができるでしょう」

 野村氏がこう主張するように、大切なことは、自分が健全な社会通念と正しい価値判断基準を持つこと。そうすることで不祥事が起きた際、適切な行動を取ることができるだろう。社会の中で生きる限り、自分が原因ではなくとも問題に巻き込まれるケースは数多く存在する。人や企業の真価は、問題が起こったときにどう行動したのかで決まると言われているが、果たして、あなたはそのとき、適切な行動をとれるだろうか。

 「ビジネスコンプライアンス検定」は問題に直面し、岐路に立たされたビジネスマンが、どう行動すべきか、その指針として役に立ってくれるはずだ。
 


 

サーティファイ コンプライアンス検定委員会

■ 第21回公開試験受付中

  • 試験日: 2015年8月2日(日)
  • 試験時間 : 初級10:30~11:50
                     上級13:30~15:50 ※試験前説明時間含む
  • 実施都市 : 札幌/仙台/東京/横浜/新潟/静岡/名古屋/大阪/広島/福岡
  • 受験料 : 初級 5,300円 上級 7,700円
  • 申込締切 : 2015年7月12日(日)
  • 申込方法 : Webまたは、郵送にて受け付けております。
            詳細は、以下をご覧ください。
            http://www.sikaku.gr.jp/co/open/

■ ビジネスコンプライアンス検定 BASIC WEBテスト

「重要な取引先の社員から、金券を渡された」など、ビジネスシーンで起こりそうな事例をもとに、社会通念に沿った対応のあり方と、コンプライアンスの基本的な考え方を、ネット上で測定するスキル・チェックツールです。 ※法人向けコンテンツ

  • 受験料 :3,200円
  • 時間/設問数:40分/30問
  • 評価方法:得点に応じたレベルを3段階で認定
  • URL  http://sikaku.gr.jp/co/basic/

■ お問合わせ先

株式会社サーティファイ 認定試験事務局
〒103-0025 東京都中央区日本橋茅場町2-11-8 茅場町駅前ビル
TEL:0120-031-749 FAX:0120-031-750
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