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松下幸之助『事業は人なり』~経営者の使命を教えられた書



2015年04月01日 公開

小笹芳央(リンクアンドモチベーション会長)

《『PHP松下幸之助塾』2015年3・4月号「松下幸之助と私」より》

松下幸之助の生誕120年、および没後25年(ともに2014年)を期して、PHP研究所ではPHPビジネス新書で「松下幸之助ライブラリー」を刊行中。松下の著書の装いを改め、よりビジネスパーソンが手に取りやすいシリーズにラインナップされ好評を得ている。

本企画「松下幸之助と私」は、この機会に各界で活躍中の方々に松下幸之助の著作や哲学に対する思いを語っていただくシリーズ。
今回は、早くからワークモチベーションの多様化に着目し、独自の技術で企業改革や組織活性化を支援してきた小笹芳央氏に、人事の妙味と大切さについて語っていただいた。

 <取材・構成:若林邦秀/写真撮影:山口結子>

 

時代を超えた経営者のバイブル

 今の時代、技術や製品はすさまじい速さで進化しています。それは反面、陳腐化するのもおそろしく速いということを意味します。

 新しいビジネスモデルを構築しても、すぐに競合する他社に追いつかれたり、市場を塗り替えられたりしてしまう。もはや技術やビジネスモデルだけに頼ることはできない。それ以上に大切なことは、いかによい人材を育てるか、いいかえればいかによい企業文化を創造するかが、企業の命運を分ける――若い世代の経営者たちと話しても、ようやくこのような考え方が浸透してきたなと感じます。

 ところが、松下幸之助という人は、何十年も前からそのことに気づいていて、メーカーであるにもかかわらず、企業は技術や製品以上に人で成り立っていることを強調されていました。これは瞠目(どうもく)すべきことです。

 私は、父が松下さんと同じ和歌山県出身ということもあって、若いころから松下幸之助という人に親しみを覚えてきました。社会人3、4年目の20代半ばごろに松下さんの著作『道をひらく』に出合ってからの大ファンで、いろいろとご著書も拝読しました。どれを読んでも非常に納得できるというか、共鳴するところが多い。

 最近では、「自分が考えていることが、すでに全部本に書かれている」という思いさえしますが、よく考えてみれば長いあいだ松下さんの本を読んできて、その考え方が私の体に染みついているのだと思います。企業経営の真理を教えてくださった存在、それが、私にとっての松下幸之助さんです。

 なかでも『事業は人なり』(旧書名『人事万華鏡』)は、組織人事のコンサルティング事業を推進してきた私にとっては、まったく非の打ちどころのないバイブル的な書物といえます。

 私はリクルートで14年間勤めたあと、2000(平成12)年に起業したのですが、「経営者としての悩み」を突き詰めていけば、最終的には人の問題に行き当たるということを痛感しています。

 もちろん、創業当初はキャッシュフローが潤沢でなく、資金繰りに苦労したりもしました。これは、スタートから軌道に乗るまでのあいだ、多くの企業家が経験することだと思います。

 ところが、いくつかのステージを乗り越えていったとき、浮かび上がるのは人事の問題です。だれをどのポストに就けるのか、だれとだれを組み合わせるのか、登用した人材が十分に力を発揮できないときどうするのか、エネルギーが低下気味の社員のやる気をどう引き上げるのかなど、人に関する悩みは尽きることがありません。

 人事は、それぞれの人の気持ちに直結しているので、単に制度やシステムを整備すれば問題が解決するわけではないのがやっかいなところです。『事業は人なり』にも、「人を使うは苦を使う」ということわざが紹介されていますが、ときには傷ついたり、はらわたが煮えくり返るような思いをしたりするのが、人を使う苦労というものでしょう。人を使い、活かしていこうと思うかぎり、人に関する苦労はつきまとう。経営者は腹をくくってそれと向き合い、すべて背負っていくしかない。それが経営者の役割であり、使命であることを教えられた書です。

(隔月刊誌『PHP松下幸之助塾』より)

 



著者紹介

小笹芳央(おざさ・よしひさ)

リンクアンドモチベーション会長

1961年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートに入社し、人事部で採用活動などに携わる。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て独立。2000年に株式会社リンクアンドモチベーションを設立し社長に就任。’13年から現職。モチベーションエンジニアリングという同社の基幹技術を確立し、幅広い業界からその実効性が支持されている。
著書に、『会社の品格』(幻冬舎新書)、『松下幸之助に学ぶ モチベーション・マネジメントの真髄―ダイバーシティ時代の部下の束ね方―』『1日3分で人生が変わるセルフ・モチベーション』『変化を生み出すモチベーション・マネジメント』(以上、PHPビジネス新書)など多数。

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