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Corporate Core Competency(コーポレイト コア コンピテンシー)と企業の成長戦略

三鍋伊佐雄(元大東建託社長),竹内朗

2016年01月29日 公開 2022年12月28日 更新

Corporate Core Competency(コーポレイト コア コンピテンシー)と企業の成長戦略

『コーポレイト コア コンピテンシーで考える「企業成長戦略」と「企業の期待価値向上」』より

稼ぐ力・成長する力・承継する力

 

企業価値とは、本来何を指すべきなのか?

「企業価値」とは、「企業を永続的に発展させ」「社会や顧客にとって時代を重ねて価値あるものに成長させていく」価値観をいう。いわゆる「稼ぐ力・成長する力・承継する力」の総称である。それは、大企業・上場企業のものだけではなく、むしろ数では圧倒的に多数を占める地域発、非上場企業・中小企業・零細企業・零細事業の求めるものである。

一方、通常は企業価値と混同して使われている言葉である「投資価値」とは、企業価値の一要素として、上場企業という、株式公開により会社の所有を市場の原理に委ねる経営を選択した企業を中心に、広く投資家と企業の間に問われるものであり、非上場企業では創業者(家)を中心とする会社所有者(インターナルな株主)や、資金調達などで連携する金融機関など、きわめて少数の関係にしか存在しない経営ファクターである。

 

「問題を解決する経営」から、「あるべき姿に創り替える経営」に

企業活動は問題解決の連続である、その解決こそが企業発展の道筋である……、と解説する経営コンサルタントは多い。しかし、筆者はそうは考えない。むしろ「問題が百あり、すべての問題を解決したら企業価値は向上するだろうか」と問いたい。

ランチェスター戦略には「弱者の戦略」と「強者の戦略」が書かれている。「局地⇔広域」「差別化⇔ミート」「一騎打ち⇔確率戦」など有名な戦い方があるが、これらは皆、「自分の立場を理解した上で、より有利となる戦い方をせよ」と説いている。つまりは、「弱点で戦うな」という教えである。「強みで戦かえば弱みは隠れ、それどころか経過と共に是正されていく」ことを教えている。企業経営とはそれでいくほうがよい。

本書は「C.C.C.(Corporate Core Competency:コーポレイト コア コンピテンシー)で考える企業成長戦略」を説いている。C.C.C.とは「もともとその企業が所有する独自の強みと言い換えること」すらできる。着目すべき考えはここにある。

「不足を補うことに労力と費用を使う経営」とは決別をしよう。企業に求められている根幹は「稼ぐ力・成長する力・承継する力」に代表する「企業価値を高める行動」である。

我が社の明日はどうあるべきか! 中長期ではどんな会社を目指すのか!にしっかりと照準を当てた、そしてその姿に会社を創り替えていくことにのみ純粋に注力していく、そのような経営を行う企業が国内を網羅するとき、日本企業に再びの隆盛が復活するものと確信する。

 

企業の優劣は「上場・歴史・過去功績など」のすでに勝ち得た過去の勲章で測られるものではない。本書中でも記載する「未来に向かう期待する価値」でその企業価値が決められる。だから、企業の大小でも、歴史の長短でも、有名無名でもないのである。また、経済が長きにわたり不活性であったことは、次世代経営者層にとってはきわめてラッキーに作用する可能性も持ってきた。無策を続ける経営陣には、強い批判と交代を求める声が周辺から出る時代に前進してきているのである。横一線、英知と行動を発揮したものが次世代に勝利するのである。

 

〈著者略歴〉

三鍋伊佐雄(みなべ いさお)
1952年、愛知県生まれ。1973年、国立豊田工業高等専門学校土木工学科卒業後、広告代理店等を経て、84年に大東建託入社。取締役テナント営業統括部長・能力開発部長、常務取締役営業本部長、専務取締役業務本部長・経営企画室長等を経て、2007年に代表取締役社長就任。2013年6月退任。現在、オフィス3主宰。ローランド株式会社の社外取締役。賃貸不動産経営管理士。一般社団法人 家族信託普及協会会員。2013年、米国経済誌『Institutional Investor』IRランキング「2013年日本住宅・不動産部門ベストCEO」に選出される(セルサイド&バイサイド両部門)。著書に『弱者が勝つ戦略』『まじめに、賃貸経営』(共にPHP研究所)がある。

竹内 朗(たけうち あきら)
1967年、東京都生まれ。弁護士、公認不正検査士。1990年早稲田大学法学部卒業後、96年、弁護士登録。2001〜06年、日興コーディアル証券株式会社(現SMBC日興証券株式会社)法務部に企業内弁護士として勤務。2010年プロアクト法律事務所開設。企業のリスクマネジメント、有事の危機管理、コーポレートガバナンス等を専門とし、“proactive”な視点に立って企業のリスクマネジメント業務を支援する。カブドットコム証券株式会社社外取締役、GMOペパボ株式会社社外監査役、日本道路株式会社社外取締役。東京弁護士会民事介入暴力対策特別委員会委員長。主な共編著に『企業不祥事インデックス』(商事法務)、『リスクマネジメント実務の法律相談』(青林書院)、『企業による暴力団排除の実践』(商事法務)などがある。

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