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社会

なぜ、イスラム系のテロ組織が多いのか―テロにまつわる4つの疑問

ワールドミリタリー研究会

2016年03月27日 公開 2022年07月08日 更新

キリスト教や仏教に比べて、イスラム教のテロ組織が多いのはどうして?

欧米諸国による身勝手な政策がテロ組織をつくった

 IS、アルカイダ、タリバン、ハマス、ボコ・ハラム、アル・シャバブ……。世界各地で起こるテロ事件の多くにイスラム教を掲げるテロ組織が絡んでいる。これはなぜだろうか。

 イスラム教は好戦的な宗教だとよくいわれるが、実際にはそんなことはない。本来、イスラム教は暴力を否定し、平和を大切にする宗教だ。この問題は、欧米諸国によって虐げられてきたイスラム世界の歴史と強く関わっている。

 中東や北アフリカのイスラム世界は、近代までオスマン帝国(オスマン・トルコ)の支配下に置かれており、そこに暮らす人々は民族や宗派が違っても同じイスラム教徒として共存していた。

 しかし第1次世界大戦前後、イギリスやフランスが弱体化したオスマン帝国を分割し、自分たちの都合で勝手に国境線を引いていった。

 さらに第2次世界大戦後には、アラブ人が住んでいたパレスチナの地にユダヤ人国家イスラエルが建国され、アラブ人は追い出された。その結果、イスラム世界は大混乱に陥り、民族や宗派の対立が起こってしまう。

 その後、冷戦時代にも欧米諸国は中東諸国を都合よく利用し、冷戦が終わってからもさまざまなかたちで介入を続けた。こうして欧米諸国に翻弄されてきた歴史は、イスラム世界で反欧米の思想を増長させた。そのなかからイスラム過激派が台頭してきたのだ。

 

ヨーロッパで疎外されたイスラム教徒がテロに走ることも

 社会問題的な側面もある。中東には石油や天然ガスなどが豊富にあるが、そこから得られる利益の多くは欧米企業へ流れていた。そこで貧しいイスラム教徒は経済的豊かさを求めてヨーロッパなどへ移民したが、ヨーロッパのキリスト教社会は彼らをなかなか受け入れない。彼らは疎外感に苛なまれ、過激思想に染まっていくといった事例も多い。

 しかし、テロに走るようなイスラム教徒はごく一部の人間だけ、ということを忘れてはならない。世界16億人以上のイスラム教徒のうち、圧倒的多数はテロ行為を強く非難している。また、イスラム教徒のなかからもテロによる犠牲者が多数出ている。「イスラム教徒=テロリスト」という誤った考えは絶対にしてはならない。

 

治安のよさは世界屈指の日本でも、テロが起こる可能性が高まっている?

伊勢志摩サミットや東京オリンピックが危険

 欧米や中東で起こるテロ事件のニュースを見聞きしていても、どこか現実感がなく、遠い世界のこととしか思えない人もいるだろう。2013年1月のアルジェリア人質事件、15年3月のチュニジア銃乱射事件などで日本人がテロの犠牲になったこともあるが、いずれも海外での事件である。日本にいるぶんには安全だと信じている人が多いに違いない。

 しかし、テロはもはや対岸の火事ではない。いつ何時、日本国内でテロが起こったとしても不思議はないのだ。

 実際、日本はISの標的となっている。15年1月に起こった日本人ジャーナリスト殺害事件の際、ISの兵士が「日本はアメリカとともに“十字軍”に参加した」と非難。人質殺害の場面を撮影した動画では、「今後、どこにいようと日本人を殺す」と宣言した。さらにインターネット上のIS機関紙「ダービック」でも、繰り返し「日本をターゲットにする」と言明している。

 日本では今後しばらく国際的なビッグイベントが続く。2016年5月には伊勢志摩サミットが開催され、2020年にはいよいよ東京オリンピックがある。特に懸念されるのは後者だ。

 オリンピックムードが高まるにつれて、「トウキョウ・ジャパン」への注目が高まっているが、テロ組織にとっては開催期間中が最高のアピールタイムになる。

 このタイミングでテロを行ない、世界をあっといわせようと考えている輩がいたとしても不思議はない。もしかすると、すでに日本に潜入している可能性もあるのだ。

 尊い人命を守るため、また国際的な信用を失わないためにも、日本政府には万全のテロ対策が求められている。

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