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人財なくして会社の成長はありえない~堀場厚(堀場製作所会長兼社長)

松下幸之助経営塾講義再録

2016年03月04日 公開 2022年07月11日 更新

人財なくして会社の成長はありえない~堀場厚(堀場製作所会長兼社長)

『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』2014年7・8月号Vol.18より一部抜粋転載

 

人のチェーンに支えられるわれらがホリバリアン

人財育成は手間暇を惜しんではいけない

当社では毎年、80人から100人ほどの社員を新規採用しています。景気の悪いときでも人数をそれほど落とさず続けてきました。それは、技術の伝承を途切れさせないためなのです。HORIBAのような技術系の会社では、人財育成は技術の伝承が最重要項目です。ところが、これは簡単なことではありません。

よくドキュメンテーション(文書化)が大事といって、とにかく記録に残せば技術の伝承も何とかなると考える人がいますが、それでは何ともなりません。技術は書いたものだけでは残せないのです。

ものづくり技術には「匠の世界」が存在します。HORIBAのようなハイテク技術にもそれはあります。匠とは、類まれな技術を獲得することだけではなく、大事な技術を磨き上げていくその精神を指します。これが会社の財産として従業員に伝承され、共有されなければならないと思うのです。また、この匠の精神があるから競争力のあるユニークな商品も世に出せるわけです。しかしこれは、生身の人間が実際にやってみないと分からないもの。ゴルフの解説書を読んでゴルフが上達するのなら、皆さんだってすぐにシングルプレーヤーですよ。経営もこれと同じです。

特に、人を育てる――技術の伝承は、時間がかかります。そしてそれを会社の財産としていくためにも、途切れることなく伝えていかなければならないわけです。

当社は自動車、科学、環境・プロセス、医用、半導体の5つの分野で計測システムに関わるビジネスをグローバルに展開しています。

それぞれ市場が異なり、お客さまも違います。商品は1000モデル、売上の6割が海外です。競合会社も以前は先進5カ国(米、仏、独、英、日)の中だけでしたが、今やグローバルに広がってきました。

こんな状況の中で、グループをどうマネジメントしていくのか――海外の会社とどう向き合うのか、どう長い目で人を育てるシステムを構築していくのか――あらゆる工夫が求められます。

そのためには、先ほどの話とは逆説的になりますが、ドキュメント(教材)による教育・伝承もまた必要になってきます。その意味で、書いたものを残す努力も行なっています。

実は、技術伝承の格好のドキュメントがあるのです。ホリバリアンたちがプレゼントしてくれたホリバカレッジの講師のノートがそれです。

職場では「生きた教材」であるベテラン(匠)の彼らが、若手を教えるために持っている技術について整理し、また場合によっては勉強し直して文章化したものです。私がほしかったのもまさにこれで、会社にとっても貴重なバイブルとなるはずです。彼らに「技術ノウハウについて書類を書け」と言っても、まず出てこないでしょうが、人を教えるとなると、これができる。これもありがたいプレゼントとなりました。

結局、経営では「人のチェーン」をつくることが大事なのです。縦にも横にも。そしてそれは「心のチェーン」でなければなりません。人財育成は手間暇がかかりますが、これを惜しんではいけないのです。

 

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