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世界大学ランキングトップ100をめざす広島大学の挑戦

2016年08月23日 公開

山下柚実(ノンフィクション作家)

PHP新書『広島大学は世界トップ100に入れるのか』はじめに より

広島大学病院

 

ローカル国立大学の挑戦

脱力した芸風で人気を博すお笑いコンビ、アンガールズは、プロ野球・広島東洋カープのファンとしても知られている。

そもそも、お2人(田中卓志さん、山根良顕さん)とも広島県出身で、大学時代にサークルで知り合ったそうだ。意外に思われるかもしれないが、田中さんが当時通っていた大学は広島大学。工学部第4類に所属し、建築学を専攻された。

田中さんはその縁で、広島大学の広報誌に登場し、日記をつけることを学生にすすめたりしている。そればかりか2016年5月31日には、広島大学の初代アンバサダーに就任した。広島大学アンバサダーは、「各界で活躍されている広島大学を卒業された方やゆかりのある方に学長が委嘱し、広島大学の良さやブランドを広く社会に発信していただく役割」を担う(広島大学ウェブサイトより)。

広島大学のイメージというと、実力はあるだろうけれど、なんとなくおとなしそうな大学といったあたりではないだろうか。それだけに田中さんの起用には、思い切ったことをしたなという印象を持つ人も少なくないのではないか。

実は、最近の広島大学はなかなか攻めている。

2015年度の入学式の日、広島大学は新聞の朝刊一面を使って広告を掲載した。

「広大広告」という大きな見出し付きで。

「広島大学はこれまで広告とあまり縁がありませんでした。
(中略)
でも時代は変わりました。そして、私たちも変わります。『見える』情報発信を始めます。
3912人の新入生を迎える今朝、その第1弾をお送りします」

なぜ、地方にある国立大学が、今新聞に一面広告を打つのか?

深刻な少子化が社会問題となる中、大学に異変が生じているのだろうか?

日本の大学が世界ランキングやアジアランキングで軒並み順位を落とし続ける中で、広島大学はこう宣言した。

「10年後に世界大学ランキング100位以内に入る」と。

広島大学は、いったいどこへ行こうとしているのだろう?

何にチャレンジしようとしているのだろう?

志願者数日本一となり人気を伸ばす私大・近畿大学を取材して、独特の経営術やマネジメント力の秘密を単行本に著した私は、今回、国立大学・広島大学の「大胆な挑戦」に興味を抱き、その挑戦の中身を探ってみようと考えた。

(以下、本書の本編より一部抜粋)

 

日本の大学は世界で何位?

大学に「世界ランキング」があるのを、ご存知だろうか。

中でも、世界で最も影響力があるといわれている「世界ランキング」がある。

それは、英国のタイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)が毎年発表している、その名も「世界大学ランキング」だ。

2015年9月、2015―2016年版が発表された。

そのとたん、日本の新聞やテレビが結果を大きく報道した。

なぜか。

東京大学がこれまで保持してきた「アジア首位」の座から滑り落ち、大きく順位を落としたからだ。

「世界大学ランキング」で世界1位の座に輝いたのは、どこの大学だったのか。

順位表を見ると、1位はカリフォルニア工科大学で、5年連続でトップだった。2位はオックスフォード大学で、3位にスタンフォード大学が続き、欧米の大学が世界ランキングのトップ10を独占した。

アジアの大学は、どのあたりの順位にいるのか?

アジアでトップに輝いた大学は、シンガポール国立大学で、26位だった。

日本の大学は?

東京大学は43位。昨年の23位から大きく後退し、中国の北京大学にも抜かれた。

京都大学は88位。昨年は59位だったので、こちらも大きく順位を落としたことになる。

日本の知性を牽引してきた東京大学と京都大学は、このランキングを信じるのならば、明らかに下降傾向にある。

だがさらに驚いたのは、2つの国立大学以外、上位200校以内に日本の大学名を、1つも見つけられなかったことだ。前回は、上位200校に東京工業大学、大阪大学、東北大学が入っていたが、この3つの大学は今回のランキングでは200位外へと姿を消してしまった。

「今後10年で、世界大学ランキングトップ100に10校ランクインを目指します。同時に、グローバルリーダーを育成できる高等学校も、作ってまいります」

安倍晋三首相は「成長戦略第二弾スピーチ」(2013年5月)の中で「世界に勝てる大学改革」をテーマに、こう高らかに宣言した。文科省ではこの宣言に基づいた国立大学改革プランを進めていき、第3期中期目標期間(2016年度から2021年度)には各大学の特色を生かした機能強化を推進し、「今後10年間で世界大学ランキングトップ100に我が国の大学10校ランクインを目指す」ことを「当面の目標」として掲げている。

にもかかわらず、なぜ、「世界大学ランキング」では、不本意な評価しか得られないのだろうか。

もちろんTHEの世界ランキングが、日本の大学を正当に評価できているかわからないという指摘はある。評価方法や評価基準について問題点があるという声も多々聞こえてくる。

だが、THEの世界ランキングが、今のところ世界中の大学を比較評価する1つの指標として機能していることは確かなのだ。

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