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生き方

なぜいつも「お母さん」はイライラしてるのか? 心の奥底に残る「女は家で家事」

金井篤子(名古屋大学大学院教授)

2011年09月01日 公開 2024年01月16日 更新

 

不満足感は女性のほうが強い

一方、男性はどうでしょうか。妻が専業主婦の夫と共働きの夫を比べてみても、抱える葛藤の大きさに大差はみられません。いずれも時間的な葛藤が一番高くなっています。とはいえ、男性の葛藤は女性よりも小さく、フルタイムで働く女性がもっとも強い葛藤を感じています。

気をつけなければいけないのは、葛藤は上手に解消していかなければ、うつになったり気持ちが落ち込んだりして、家庭や生活全般への不満足感につながっていくということです。

頑張れば頑張るほど思い悩み、家族関係が悪くなるのでは、一体何のために働いているのかわかりません。こうした状況に陥らないためには、自分は今どのような「ワーク・ファミリー・コンフリクト」を感じているのかを考えてみる必要があります。

では、どうすれば、さまざまな葛藤を小さくできるのでしょうか。大切なのは、葛藤をため込まないことです。「どうして、私ばかりしんどい思いを....」という不満足感を一人で抱えていては、家族との関係がギクシャクしてくるのも無理はありません。

一度きちんと自分の心と向き合って「何が問題だと感じているのか」を整理してみましょう。そして、夫に相談してみてください。心に抱える思いや悩みを吐き出してみれば、今まで思いつかなかった解決方法が見えてくるはずです。

「最近少しつらくて....」と打ち明けてみると、案外スッと両親の協力が得られたり、夫の勤務先で働き方をサポートしてくれるいい情報が手に入るかもしれません。

近年は仕事だけでなく、家事も担っている男性が多く見られるようになりました。毎日の務めを果たそうとしているのは夫も同じです。口には出さなくても仕事のことで苦しんでいるかもしれません。夫婦ともによりベストな状態で働くためにも、お互い問題点を共有することが大切です。

 

「時間」が全てではない

子どもに対しては、十分にかまってやれていないことをいつも悪いと感じている人が多いと思います。よそのお母さんと比較して、できていない部分を反省するばかりで、1人でストレスを抱えていることもあるでしょう。

そんなときは、後ろめたく思わずに、子どもに自分の仕事について話をしてほしいと思います。母はなぜ働いているのかを説明してあげると、子どもはその年齢なりに理解するものです。

母親が仕事をするということは、何らかの我慢を子どもにさせていることに違いないのです。一緒に過ごせる時間が短い分、できる限り会話やスキンシップを図りましょう。子どもと触れ合う時間は、実は子どもだけでなく、親であるあなたの精神的な負担も軽くしてくれるのです。

 

声を上げてみたら意外に…

今回、ご紹介したように、パートタイマーであっても、正社員であっても、働く人にはさまざまな葛藤がある事実がわかっています。

しかし、意外かもしれませんが、適度な葛藤があるときのほうが、仕事の意欲や満足度が高くなるという数値も得られています。あれこれ思い悩みつつも、家族の協力を得ながら働くことは、大きな充実感にもつながるといえそうです。

それでもどうしてもつらいときには、今の働き方を見直してみてください。辞めると決める前に、会社側と相談したり交渉するのも手。自分や家族のライフスタイルに合わせて、働き方は柔軟に選択していくことが大切です。

あなたがイキイキと元気でいることが夫や子どもの明るさになるのです。家族みんなで理解し合いながら、毎日を明るく過ごしたいですね。

 

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