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ストレスに強くなる眠り方とは?

井原裕(獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授)

2017年04月05日 公開 2023年09月08日 更新

ストレスに強くなる眠り方とは?

「短時間睡眠でも平気」はあり得ない!

 

 獨協医科大学越谷病院の井原裕氏は、「日本人の『うつ』の最大の要因は睡眠不足である」と指摘する。睡眠不足は、身体だけでなく、メンタルにも深刻な不調をもたらすのだ。睡眠がメンタルに与える影響と望ましい睡眠の取り方についてお聞きした。

 

「徹夜明けのハイ」はメンタル不調のサイン!?

「24時間戦えますか」という栄養ドリンクのテレビCMが流れていた頃から長い月日が経ちましたが、いまだに日本には、寝ないで働くことを良しとする、不思議な「ビジネスマン美学」があるようです。

 この価値観は、医師の立場から見れば大間違い。睡眠不足は、心と身体に不調をきたし、仕事のパフォーマンスも下げる最大の元凶です。

 睡眠不足と「うつ状態」の関連性については数多くの研究報告があります。日本大学医学部の内山真教授の研究では、7時間睡眠を取っている人が最も「うつ兆候」が少なく、それより短くても、長くても、うつ兆候を示す人が多くなることが判明しています。

 私たちは、日常生活の中で、心身にさまざまなストレスを受けています。そのストレスに対応する「ストレス応答力」に関わる人体のシステムには、自律神経系、視床下部-下垂体-副腎皮質系、免疫系の3つがあり、これらはいずれも睡眠と深く関係しています。だから、睡眠不足になるとストレスに対応できなくなり、メンタルに不調をきたすのです。

 メンタルへの影響でとくに重要なのは自律神経系です。自律神経には、活動時に優位となる交感神経と、リラックス時に優位となる副交感神経があります。この両者が、1日の半分ずつ、交代で優位になるのが理想。24時間のうちの12時間は副交感神経優位の状態にすることが、メンタルを健康に保つためには不可欠です。

 そして、副交感神経優位の12時間のうちの後半7時間を睡眠に当てることが重要です。睡眠時間を削ると、交感神経優位の時間が増え、メンタルに明らかな不調が出てきます。

 徹夜をすると、明け方には喜怒哀楽の反応が過剰になり、些細なことで怒りがわいたり、笑いがこみあげたり、泣けてきたりと、感情のブレーキが利きにくくなる。そういう経験をしたことがある人が多いと思いますが、これは、交感神経優位の時間が長く続きすぎて、メンタルに不調が現われてきた状態なのです。

 視床下部-下垂体-副腎皮質系というのは聞き慣れないかもしれませんが、ホルモンを司っているシステムです。ホルモンのうち、成長ホルモンや性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモンなどの同化ホルモン(生体物質を作る)は、睡眠中に分泌が高まります。身体のメンテナンスは夜間作業なのです。

 中には、「自分は7時間も寝ていないが元気だ」という人もいるでしょう。しかし、短時間睡眠にもかかわらず眠気を感じないのは、疲労を感じるセンサーが働かなくなっているからなのかもしれません。放置しておくとうつ状態を招く危険性があります。

 

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リズムを一定にすれば時間帯はいつでもOK

著者紹介

井原 裕(いはら・ひろし)

獨協医科大学越谷病院こころの診療科教授

1962年、神奈川県生まれ。東北大学医学部医学科卒業。自治医科大学大学院(医学博士)、ケンブリッジ大学大学院(Ph.D)修了。国立療養所南花巻病院勤務後、順天堂大学医学部精神科准教授を経て現職。『うつの常識、実は非常識』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

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