※本記事は、匠英一監修『相手のホンネは「しぐさ」でわかる』(PHP文庫)より、一部を抜粋編集したものです。
何でもない質問に答えるときに口元に手をやった相手にはご用心
人の心は複雑ですが、案外、ストレートに動作に出ることも多いです。たとえば、次のような状況ではどうでしょう。
上司「そういえば、例の資料はもうA社に送ってあるよね?」
部下(口元に手をやりながら)「え、ええ。コホン、コホン」
上司「え、何? 送ったんだよね?」
部下(せきばらいをしつつ、口元を覆い)「え、ええ……」
こんなとき、部下がごまかそうとしているのは、誰の目にも明らかでしょう。答えは「ノー」だと上司は解釈して対応するのが得策です。
人間は何かをごまかそうとしたり、ウソをついたりするとき、無意識のうちに口元や鼻などに手をもっていきます。
本当のことを隠そうとするときに、口元を手で覆い隠すのですから、実にわかりやすいしぐさといえるでしょう。表情の変化を相手に見破られないように、頭で考えるよりも先に、顔のパーツに手をやると考えられています。
また、本当のことが言えない心理的葛藤を抱えているときには、鼻のまわりの皮膚組織が刺激されて自然と手をやるとする説明もあります。ウソをつくとカテコールアミンという化学物質が分泌され、鼻の内部組織が膨張し、末梢神経が刺激されてムズムズするメカニズムが働くともいわれます。
いずれにせよ、偽りを口にするときは、鼻から口元を覆うしぐさが広く認められます。ムズムズするために、鼻の頭をしきりとこすったり、つまんだりすることもあります。
また、こうした動作は、明らかなウソによって相手をだまそうとする場合に限らず、自分にとって不本意な話をする場合にも出るものです。商談相手に対して、自分は望まないが、上司から命じられた内容を会社の方針として伝えるといった状況が挙げられます。
もちろん、そのほかの可能性も排除できません。花粉症で鼻がムズムズしているのかもしれませんし、口臭を気にして口元を覆っているのかもしれません。口元に手をやる相手に対し、「何か怪しい」と身構えて話を聞いていたら、そのうちニンニク臭が漏れて漂ってきたなどということもあるわけです。