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ドクターそこのけの健康通・伊達政宗の変わった特技「独眼流推脈」とは?

若林利光(脳神経外科医)

2017年06月07日 公開 2024年12月16日 更新

政宗が実践した「独眼流推脈」とは

政宗の変わった特技、それは推脈である。推脈とは、指で脈をとること、つまり脈拍の触診だ。医師の診察を受けると、手首に指をあてられて脈を調べられることがあるが、そのことである。政宗はこの推脈のことを、

「わが身の養生はつねづね油断なく、みずから脈をとり」

と、自慢している。普段と違う脈が出ると、さっそく主治医を集めて治療方針を立てたといわれている。治療方針を決めるためのカンファレンスをしていたのだ。また、自分だけではなく、体調不良の家臣の脈もとって、やはり医師に指示を出していた。しかもそのみたては、

「悪き事遂に御座なく候」

というように、的確であったのだ。そのため、

「医者衆、感じ申し候」

と、医者たちが感心するほどであった。

推脈(脈診)により、現代であれば心電図をとって治療方針を決めるのに相当することをしていたのだ。ここまでくれば、立派な「伊達政宗先生」であった。効くか効かないかわからない薬をつくるよりは、よほど科学的だったのだ。

脈をとるということは単純なことだが、奥は深い。高血圧や不整脈の大まかな見当がつくからだ。不整脈の中でも心房細動という不整脈は特に危険で、脳梗塞を起こすことがある。

この心房細動は年をとるにつれてふえていく不整脈なので、高齢化社会が本格化するにつれて、ますます心房細動による脳梗塞がふえるということになる。政宗にならって自分の脈をとる習慣をつければ、脳梗塞を未然に防ぐことに役立つのだ。「つねづね油断なく、みずから脈をとり」という、「独眼竜」ならぬ「独眼流推脈」を勧める次第だ。

※本記事は、若林利光著『戦国武将の病が歴史を動かした』(PHP新書)より、その一部を抜粋編集したものです。

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