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御社の働き方改革がダメダメな理由

2017年08月13日 公開

白河桃子(少子化ジャーナリスト、相模女子大学客員教授)


 

白河桃子(しらかわ・とうこ)
相模女子大学客員教授、少子化ジャーナリスト、作家。東京生まれ、慶應義塾大学文学部社会学専攻卒。住友商事、外資系金融などを経て著述業に。山田昌弘中央大学教授との共著『婚活時代』(ディスカヴァー携書)で婚活ブームを起こす。少子化対策、女性のキャリア・ライフデザイン、女性活躍推進、ダイバーシティ、働き方改革などをテーマに著作、講演活動を行なう一方、「働き方改革実現会議」「新たな少子化社会対策大綱策定のための検討会」などの委員として政府の政策策定に参画。著書に『専業主婦になりたい女たち』(ポプラ新書)など多数。

 

働き方改革は経営改革である

「早く帰れ! 以上!」ではダメダメな理由

昨今、働き方改革セミナーが花盛り。雑誌には「生産性を上げよう」という特集が組まれる。でもこれは「各個人が働き方を変える」だけで解決する問題なのだろうか?

2017年5月、IT企業サイボウズのポスターが話題を呼んだ。グループウェアを売るサイボウズは、新しい働き方を実践する企業。「ノー残業、楽勝! 予算達成しなくていいならね。」「労働時間削減、結局現場にムチャぶりですか?」といったコピーが「労働時間削減」を押しつけられた会社員たちの共感を呼んだのだ。サイボウズの青野慶久社長によれば、「2016年末に電通の経営者が従業員の過労自死の責を負って辞任した衝撃が大きく、どの会社もまずは残業させないように……となっている」とのことだった。「経営者よ、落ち着け」ということで筆者と氏の意見が一致した。今は混乱期なのだ。

働き方改革を、ただの時短、残業代削減、業務効率化、生産性向上、テレワークやAIなどのIT投資と矮小化して、とらえてはいけない。それらはツールであり、プロセスである。その結果、企業の抱える課題が解決できなければ意味がない。「利益が上がる」「イノベーションが起きる」「社員が幸せになる」「より社会に貢献する」「会社が魅力的になり、人材が押し寄せてくる」などの、もっと先の果実を目指すもののはずだ。制度を整える見せかけの改革ではなく、本気の「経営戦略としての働き方改革」に取り組まないと、最悪のシナリオとなる。

見せかけの働き方改革をすると、逆に売上が落ちたり、離職率が上がり人材不足に陥ったりする。最悪の場合、サービス残業等で労働関連の訴訟などが起きるブランドリスクもある。一度「ブラック企業」の汚名を着てしまうと、人材がとれなくなる。

見せかけの働き方改革とは「早く帰れ」と言うだけ、または「テレワークの制度を整えました!」と、「制度つくって魂入れず」の状態を言う。「意識改革セミナー」で「個人の生産性のお尻をたたくだけ」の状態も散見される。
 

最悪のシナリオの例を挙げてみよう。

 

ケース1:10時消灯、ノー残業デー、PCの強制終了など、「早く帰れ」のかけ声のみ

サービス残業、持ち帰り残業の増加
社員のモチベーションダウンで、離職率が上がる。または労働訴訟などで会社のブランディングのリスクが発生。
 

ケース2:若手だけが帰る

残業代の発生しない管理職がオーバーワークに
どこで取材しても同じことを言われるのだが、「早く帰れ」と言うと入社五年目までの若手は素直に実行し、仕事が終わらなくても帰る。その結果、その分の仕事を管理職がカバーせざるを得なくなり、オーバーワークに陥る。
 

ケース3:いっさいの残業を厳格に禁止する

雑談もなく新規提案もない、ギスギスした会社に
無駄な業務のカットおよびジョブディスクリプションを明確にし、個人の仕事のみをやるようになるとどうなるか。最悪の場合、短期的には業務効率は上がるが、余計なことが発生しないよう働く姿勢になるため、新規提案もなく、イノベーションも起きず、会話もなくひたすら作業に集中する、ギスギスした会社となる。「残業がなくなりました」で終わるのは、本当の働き方改革ではない。
 

ケース4:「好きで働きたいという人は良いのでは」と、例外を認める

改革のブレーキとなる。また、好きで働く人も、いずれ生産性が落ちる(体力・気力)
これはよく議論になるが、例外を認めると、全体の改革のブレーキとなる。ある企業幹部によると、「上司には長く働いて今の自分があるというDNAが刷り込まれているので、残る部下のほうが可愛く見えてくる」という。そうした人が上司から評価されている姿を見ると、まわりも「やはり長時間労働したほうが評価される」となり、なし崩し的に残業が増える。
だが、産業医の大室正志氏曰く「人間が本気で集中できる時間はそんなに長くない。医学的に言えば、脳は起床後13時間も使えば集中力の有意な低下を認めます。つまり、長時間会社にいてもどんどん集中できなくなっていくだけなんです」。つまり、長期的に見て生産性は落ちていく。
 

ケース5:生産性を高めた結果、給料が減り、不満が増える

「なぜ、生産性を高め、短時間に結果を出したほうが給料が安くなるのか?」という社員からの疑問が起きる。応えないとまた長時間労働の社風に戻る。
これはキリンの営業女子チームがママになりきって働く「なりキリンママ」プロジェクトを実施した後に出てきた課題だ。「なりキリンママ」とは、子どものいない営業女性が「五時退社」「突然の呼び出しに対応」など一カ月間「ママ」に「なりきって」仕事をしてみるという、ユニークなプロジェクトである。実施した結果「前年比より高い成果、短い労働時間」という成果を上げた。しかし残業代が減った結果、個人の毎月の給与は下がったというのだ。
じつは、経営者が働き方改革をするときの本気度として「評価と報酬の設計」にまで手を突っ込んでいるかというのがひとつのポイントだ。これは労組などとの折衝も必要になるので最終段階になる会社も多いが、早くに手を入れると変化のスピードが早い。
 

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