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ホンダの福井元社長も“撤退”でV字回復に導いた? 「回避」して成功する人生の選択

太田彩子(営業育成コンサルタント)

2011年12月06日 公開 2022年10月06日 更新

 

性差の特長を活かす

ユニクロの野菜事業の撤退などもそうですが、事業を拡張することだけが前進ではありません。撤退することによって、新しい活路が見出せるようになる場合もあります。

これは何も企業だけに言えることではありません。個人でもそうです。私がまだ「営業思考」を身につけることができずに「戦力外」だった当時、圧倒的なパワーでガシガシと契約を取ってくる男性の先輩たちを見て、私は焦燥に駆られていました。

私も体力が続く限り飛び込み営業をかけよう、先輩が一日50件回ったと聞いたら、私は51件回ろうと、真っ向から挑もうとしていました。結果は散々なものでした。肩に力が入りすぎて、空回りしていたのです。結果、半年間自力契約ゼロという成績だったことは、前にもお話しさせていただいたと思います。

思い返してみれば、当然のこと。体育会系で外目も体力無限大に見える男性の先輩たちにまともに挑みかかっていっても、なんといってもこちらは女性です、敵うはずがありません。そもそも、男性ホルモンのテストステロンは、攻撃性とやる気の持続性を促す作用があります。

つまり、もともと男性は真っ向から攻めるやり方に向いている作りになっているのです。一方の女性ホルモンには記憶力の促進や、繊細な精神構造にするなどのさまざまな作用が報告されていますが、男性のような攻撃性や持続性というものはなく、やはり女性らしさのもとになっているようです。もちろん、個人差はありますが、もともと、男性と女性では作りが違うのです。

そのことを無視して、精神論でなんとかなるだろうと思っていました。そして、無理をして越えられるはずのない壁を越えようとしていたのでした。それでは、いつまでたっても成果を残せるはずがありません。

どうやれば契約を取れるか、悩みに悩んでいたある日、私は、開き直りにも近い考えに思い至りました。

「正面から壁にぶつかるのを避けて、女性の強みを活かしてみよう。女性には女性に合ったやり方がきっとあるはずだ」

そう、私は真っ向からスーパーセールスマンたちに挑むことを避けたのです。傍目には、もしかして逃げたように見えたかもしれません。けれども、今振り返ってみると、この回避こそが間違いなく大きな前進となったのです。

 

「自分仕分け」で自分のステータスを知ろう

不向きなことに正面からぶつかることを「避け」て、自分の「スタンス」を見つけるためには、そもそも自分のことを誰よりもよく知らなければなりません。自分とは近いようで、案外遠いものです。わかっているようで、結構わからない部分が多く、誰にでも、人に言われてはじめて自分を知ったということがあるのではないでしょうか。

やはりここでも、第三者の客観を借りたほうがいいでしょう。自分が思っているよりも、自分には可能性がある場合もあります。また、逆に自分を過大評価している場合もあります。

自分で客観的に自分を見られる人はいいのですが、そうではない人はぜひ周りの人の意見も聞いてみましょう。意外な自分の一面を発見することと思います。

蓬舫さんの活躍がテレビなどで紹介されて有名になりましたが、政府は事業仕分けというものをやっています。徹底的に予算を洗い直して、無駄を見極めるというのが事業仕分けの目的です。

そのように、自分を一度徹底的に洗い直してみると、長所、短所、さまざまなことが浮き彫りになってきます。

そう、「自分仕分け」です。ここで重要なのは、自分の可能性を否定しないということです。「ビジョン」と同様、はじめのうちは輪郭をぼんやりさせておいたほうがいい。

実を言うと、私は大学生の頃は、マスコミで記者をしたいと思っていました。それでテレビ局でアルバイトなどもしていたのですが、今は逆に記者の方から取材していただく機会が多くなりました。

また、実は何をやっていいのかわからなかったときに、小説家を目指してカルチャースクールに通ったこともありました。もっとも、空気に馴染めずに2回で行くのをやめてしまいましたが、今こうして本を書いています。人生、本当にわからないものです。

そのわからない部分を許容できる余地を、「自分仕分け」の際も持ってほしいと思います。

「自分仕分け」によって自分のことを知り、それに基づきチャレンジを繰り返していくうちに、自分に合ったフィールドがいくつか出てくるようになると思います。

その中でどのフィールドを選ぶのか、またはどのフィールドとフィールドを組み合わせるのかなどと、戦略を立てる必要があります。自分のスタンスを固めるために、戦略、すなわち「仮説」を構築します。

もちろん、仮説は仮説です。それは状況に応じて変化していっていいものです。こうかもしれない、いや、あっちが正しいかもしれない、と試行錯誤していくうちに、仮説は研磨されて、自分が守るべきスタンスが明確になってきます。

 

【PROFILE】太田彩子(育成コンサルタント、株式会社ベレフェクト代表取締役)

1975年生まれ。早稲田大学法学部卒後、株式会社リクルートにて『Hot Pepper』創刊時にメンバーとして携わり、営業として社内表彰制度のMVPに3度入賞。2005年、リクルート退社。2006年、株式会社ベレフェクト設立。営業の育成コンサルタントとして研修・講演・コンサルティングを年間200個以上実施し、40,000人以上の営業を支援してきた。女性営業の育成を得意としており、営業女子のための応援コミュニティ「営業部女子課」を主宰(現在800人以上の女性営業が登録)。NHKのドキュメンタリー番組「グラン・ジュテ」ではアンコール放送になるほどの反響を呼んだ。
主な著書に『売れる女性の営業力』(日本実業出版社)『働く女性! リーダーになったら読む本』(日本能率協会マネジメントセンター)『1億売るオンナの8つの習慣』(かんき出版)などがある。

 

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