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まだ大企業でくすぶってるの? 社長だから言える「ヤバい会社」の仕組み

青野慶久(サイボウズ代表取締役社長)

2018年03月03日 公開 2022年08月09日 更新

青野慶久
 

我慢する人ほど偉くなっていく日本のカイシャ

カイシャには、その我慢レースのための仕組みがたくさん入っています。

例えば、わかりやすいのが「年功序列」という仕組みです。毎年、同じ年次の人たちは同じくらい給料が上がっていくという、横並びの仕組みです。

年功序列の仕組みを採用しているカイシャでは、「今年はこんなに大きな成果を出したので、一気に給料を上げてください」という社員の主張を認めません。大きな成果を出し続けている五年目の社員と、ここ数年、大して仕事をしていない部長を比べると、部長の給料の方がずいぶん高い、ということになります。若い人に対して、「お前、今は我慢しろ。あとで給料上げてやるから」という仕組みになっていると言えます。

退職金の制度もそうです。退職金は、長くいればいるほど増える仕組みになっています。

私は最初のカイシャで、3年3カ月働きました。大学を卒業し、一九九四年の四月に入社して、97年の7月に退職しました。そのときの私の退職金は、19万2000円。私は計算してみました。もし、一次関数的に退職金が増えていくのであれば、3年働いて19万2000円ということは、30年働いてもらえる退職金は、その10倍で192万円でしょうか。これはさすがに少ないですね。

年功序列を採用しているカイシャの多くは、勤続年数が長くなればなるほど、退職金の額は飛躍的に上がっていく仕組みになっています。つまり、「我慢すればするほど、もらえるお金が増えやすい仕組み」になっている。「今辞めると損するでぇ。もうちょっと我慢した方がええんちゃうか」。そんな声が聞こえてきます。

今の日本のカイシャには「我慢させる」ための仕組みがいろいろと揃っています。「昇進」もそうです。日本の大企業では、基本的に上司が年上。部下が年上というのはレアケースです。つまり、歳をとらないと権限をやらない。

「転勤」もそうです。部下は、上司が決めた自分の勤務先を断ることができません。転勤辞令を受け取ったら、多くの場合は辞令に従うしかありません。それが、新居を買ったばかりだったとしても、子どもが学校に慣れてきたタイミングだったとしても。もし配偶者も働いていたとしたら、その仕事をやめてもらうか、自分だけが単身赴任するか、厳しい選択を迫られます。
 

カイシャではなく、社長を見よう

これらの日本的な雇用形態のことを「メンバーシップ型雇用」と呼びます。勤務地や職務内容に制限をつけずに雇用するこの形態は、人事権を持った人が社員の勤務地や仕事の内容を自由に決めることができます。一方、他国では主に「ジョブ型雇用」といって、雇用契約で勤務地や職務を明確に定めてから働きますので、合意のない転勤は起きません。

日本のメンバーシップ型雇用は「終身雇用」も一つの特徴です。終身雇用だから解雇されることがなくて安心だ、とよく言われます。しかし、実際には、定年制度によって六十歳前後で必ず解雇されます。本当は「終身」雇用ではありません。これから「人生百年時代」を迎え、年金も期待できない未来を想像すると、いきなりカイシャから追い出される定年制度は、働く身としては危険な制度です。ちなみに、米国では定年制度は年齢差別に当たるため、憲法違反として認められていません。

つべこべ言わずに我慢しろ、甘い汁を吸いたかったら、今は我慢なんだという、「我慢の仕組み」が日本のカイシャに入っている。歳を取れば、有無を言わさず追い出す制度まで整っている。その我慢レースのルールを作っているのは誰か。それがまさに、カイシャのトップにいる代表取締役です。

「お前ら、俺みたいにいい思いをしたかったら我慢しろ。歯を食いしばって働け」と、言うことを聞かせる。

だから、楽しく働きたいと思ったら、どんな人が代表なのかをよく見ておいたほうがいい。この代表のためだったら働いてやってもいいなという気持ちが持てないと、我慢ばかりのつらい時間を過ごすことになってしまう。

巨大になったモンスターは、格好良く見えるかもしれません。でも、それを実際に動かしているのは、所詮、普通の人間です。いや、あなたのカイシャの代表は、じつは人間ではなく、何十年も我慢レースを走り続けて人間性を失った、ミニ・モンスターかもしれません。
 

※本記事は、青野慶久著『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』より一部を抜粋編集したものです。

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