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SpotifyとCDは共存するのか? 定額制ストリーミング時代のパッケージの生き方

山口哲一(エンターテック・エバンジェリスト/音楽プロデューサー)

2018年05月21日 公開 2022年08月22日 更新

それでもパッケージを買う理由がある? CDよりもアナログレコードが売れる?

こうなるとCDのようなフィジカルなパッケージは消滅してしまうのか? という話になります。

あえてパッケージを買う理由があるとすれば、それは「コレクション」です。
もしコレクションが目的だったら、CDよりバイナル(アナログレコード)のほうがいい。そういった一定数の方々が存在しています。

単純に音楽を聴くのはもうストリーミングで、スマートフォンで聴く――つまり音楽消費はクラウド型ストリーミングが主役になるはずです。

そこで補完できない部分をフィジカルなパッケージが一定の役割を持って残っていくと思っています。

パッケージはアーティストとの関係性を形として示す記念品として、またはコレクションの喜びを満たすという役割で一定数が残っていくと思っています。

しかしながら、CDについては先に伝えた通り、多くの方が再生プレイヤーを持っていないという状況です。そうするとプレイヤーそのものを売らなければなりません。

世界でも飛び抜けてCDが売れ続けていた日本では、そもそも、このCDそのものが日本特有の文化とも言えます。
海外でCDを買っても再生できないようなものもありますが、その点、日本のCDは非常にクオリティが高いのです。ジャケットも凝っています。

ですので、僕はレコード販売店で、外国人向けに「日本のお土産にCDを。ついでにCDプレイヤーもどうぞ」と展開したらどうかと提案しています。

しかし日本のCDは単価が高い。アメリカでのCDの単価は10ドルから12ドル。日本では3000円です。もし売るのであれば、付加価値をつけなければいけないでしょう。

だとすれば、タワーレコード渋谷店を観光名所にしてしまって、観光名所の土産としてCDを買うというような付加価値を作り出してしまうようなこともあるのではないでしょうか?

そして、「音楽を聴くためだけにパッケージを買うわけ無いじゃん」という共通認識を前提に、パッケージの価値を訴えていくわけです。

アーティストもアルバムを想定して作品を作るケースがまだまだ多いですし、ジャケットのアートワークやブックレットにもこだわって作っていますから、その制作過程と作品性を共通体験するためにパッケージを買うという行為にも意味がある訳です。

日本でもストリーミングが間違いなく主流になるという未来を見据えて、CD、アナログといったフィジカルなパッケージの価値を伝えることは、コンテンツの世界に関わる方々にとってすごく重要だと思います。

そして、これまで音楽産業の中心だった、パッケージビジネスが、生態系の幹ではなくなり、ストリーミングを活用したユーザーへの音楽提供と、コンサートに代表させる体験を組合せになっていきます。

どちらもポイントはテクノロジー活用。あらゆる産業が、X-techという形で再定義されているように、音楽ビジネスもエンターテック(EnterTech)の時代になっているのです。

 

※本記事は2018年4月に開催されたイベント「ニューミドルマンデイVol.3 「音楽未来予測」 ~テクノロジー革命が音楽ビジネスに与えるもの~」の内容を一部抜粋、再構成したものです。

関連サイト:ニューミドルマンコミュニティMeet Up Vol.2ー「音楽クリエイターの2020年代サバイバル術」

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