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プロ棋士・羽生善治の「勝利の思考法」

羽生善治(将棋棋士)

2018年01月05日 公開 2022年10月06日 更新

 

感情は無理に押しころさず自然に受け止める

当たり前ですが、常に、対局では自分の考えている通りにはなりません。

意表をつくような手がきたり、思いがけないことが起こるのは日常茶飯事で、驚天動地な一手が現れたということでもない限りは、気持ちをすぐに切り替え、その局面でどうするかを考えます。

しかし、上手くいかないときには、自分に腹が立つ感情も生まれます。良くないことですが、ただ、その沸き上がる感情があるからこそ、いろんな発想やアイディア、集中力、し瞬発力を生むことがあります。だから私は、一概に、サイボーグのように感情を全部排除してやるのがいいとは思っていません。

むしろ、感情があることをごく自然なことだと受け止めて、それをどう変換させていくかが大切だと思います。

感情というものは、人為的にどうこうできるものではありません。ここは怒らないでおこうとか、今は楽しい気持ちでいようとか、悲しい気持ちでいようとかのように、感情は調節ができるわけではないですから。

なので私は、起爆剤のようにその感情を利用しようとしています。それが深い集中力を生んだり、モチベーションを生んだりすることもあります。たぶんアスリートも、そういった気持ちの高ぶりが、大きな瞬発力を生んだりするということが、あるのではないでしょうか。

冷静さはとても大事な要素だとは思いますが、一概にその気持ちや感情の変化が全部が全部、マイナスになることはないのです。そうなったときは、感情を無理に押しころしてしまうのではなく、その場面、その場面でちゃんと受け止め、そこから自分がどうしていくかを前向きに考えていくことが、本当に大切なことではないかと思っています。

 

著者紹介

羽生善治(はぶ・よしはる)

将棋棋士

1970年、埼玉県生まれ。二上達也九段門下。85年、中学3年生のときにプロ入り。89年、19歳で初のタイトル竜王を獲得。96年、史上初のタイトル7冠(名人・竜王・棋聖・王位・王座・棋王・王将)を果たす。2017年、永世7冠を達成。18年、国民栄誉賞受賞。著書に、『決断力』『大局観』(以上、角川書店)、『直感力』『捨てる力』(以上、PHP研究所)など。

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