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これから浮上する国、沈む国 ~ 世界経済のからくり

2012年02月03日 公開

ワールドエコノミー研究会

《 『[図解]一目でわかる!世界経済のからくり』より 》

中国のつぎに「世界の工場」となるのはどこの国?

中国から東南アジアへ、東欧から北アフリカへ

 先進国のメーカーの多くは、人件費や地代の安い途上国に生産拠点を置き、そこで製品をつくって世界に売るという戦略をとる。1990年代以降、世界のメーカーが生産基地を置いたのはアジア、とくに「世界の工場」と呼ばれる中国だった。

 ところが近年、そのメーカーが生産拠点を中国から移動させている。経済成長を続ける中国では、工場で働く従業員の賃金が上昇しているのだ。また、人民元の切り上げが行なわれたり、インフレが起こったため、中国に工場を置くうまみが薄れてきている。その結果、中国よりもさらに賃金が安い東南アジアに工場を移す企業が増えている。

 タイには自動車メーカーが集まってきている。安価で質の高い労働力に加え、タイ政府による税制優遇政策が多くのメーカーを引きつけ、タイはいまでは「アジアのデトロイト」と呼ばれる自動車生産拠点となった。

 ベトナムにも自動車、家電、衣料品など多数のメーカーが工場を移転させている。アメリカの大手スポーツ用品メーカー、ナイキの世界最大の生産拠点は、2011年に中国からベトナムに移った。また、日本のユニクロ、スウェーデンのH&Mといった衣料品メーカーはバングラデシュへ進出している。

 いっぽうヨーロッパでは、近年まで新たにEUに加盟した東欧諸国に生産拠点が置かれる傾向にあった。しかし人件費の上昇にともない、最近は南東欧やトルコ、北アフリカなどへ企業の進出が続いている。たとえば北アフリカのモロッコは、ヨーロッパから地中海をはさんですぐ向こう側にあり、距離が近い。そのうえ、EUとの連合協定によってEU向けの輸出は関税ゼロという利点があるので、急速に注目が集まっている。

 アメリカ大陸では、アメリカのメーカーがメキシコに工場をつくる動きが活発化している。その背景には、やはりFTAがある。メキシコはNAFTAに参加しているため、アメリカ、カナダへの輸出に関税がかからないのだ。さらに、メキシコはEUともFTAを結んでいるので、ヨーロッパ市場へ輸出する際にも恩恵を受けられる。

 どのメーカーもいかに安く生産し、いかに高く売るかという戦略にもとづいて動いている。こうした戦略が「世界の工場」の地図を塗り替えつつあるのだ。

 

次にとって代わる国、代わられる国

 2010年、中国はアメリカにつぐ世界第2位の経済大国になった。中国だけでなく、インド、ブラジル、ロシア、南アフリカなどの成長も目覚ましく、世界経済における新興国の役割が年々重要になってきている。
 一方、これまで世界経済を引っ張ってきたアメリカ、ヨーロッパ、日本の3極の先行きは不透明である。
 世界のヒト・モノ・カネの流れが変わっていくなか、次にくる国はどこなのか。注目すべき21カ国を検証した。

アメリカ・栄光は風前の灯火に……「日本化」が進む超大国
ドイツ・驚異的な輸出力を誇るヨーロッパ一の経済大国 
フランス・経済縮小の原因となる少子化問題を解決した成熟国
イギリス・金融危機以降、低迷が続くかつての世界経済覇権国
スペイン・ユーロ消滅を招く恐れのあるもうひとつの重債務国
デンマーク・25%もの消費税を課しながら「世界一幸せ」でいられる国
ロシア・石油と天然ガスで大国の座に返り咲いた北の資源大国
中国・日本を抜き去り、世界2位に躍り出た新経済大国
インド・教育の充実、英語力、若さが強みのアジアの巨頭
韓国・新興国や途上国への影響力を増しているアジアの虎
タイ・自動車の生産拠点となった「アジアのデトロイト」
ベトナム・成長は著しいものの、高いインフレ率に悩む社会主義国
インドネシア・消費力旺盛な若者が経済を担う東南アジアの雄
シンガポール・巧みな国家戦略で経済大国に成長した熱帯の極小国
トルコ・政治・経済の十字路に位置する未来の経済大国
メキシコ・40年後、世界5位の経済大国になるラテンアメリカの旗手
カタール・世界一の経済成長率を誇り、W杯を開催する中東の新興国
ブラジル・五輪、W杯を起爆剤にさらなる成長をめざす新興大国
南アフリカ・「ブラック・ダイヤモンド」が牽引するアフリカのリーダー
ボツワナ・ダイヤモンドを基盤に飛躍するアフリカ屈指の成長国
日本・復活の日はいつ!? すっかり成長がとまったアジアの盟主

(ここでは、少子化、消費税、成長余力の観点から3カ国を紹介します。その他の国々については 『[図解]一目でわかる!世界経済のからくり』 でご覧ください。:WEB編集担当)

[フランス] 経済縮小の原因となる少子化問題を解決した成熟国

 ドイツとともにヨーロッパ経済の牽引役となっているフランスは、多くの産業基盤をもち、豊富な労働力がそれを支えている。労働力については将来的にも不安は小さいといえる。なぜなら、少子化問題にいち早く取り組んで解決策を編み出したからである。

 少子化による人口の減少は労働力や消費力の低下、社会保障負担の増加につながり、経済規模を縮小しかねない。そこでフランスは多様なアイデアでこの問題に対処した。たとえば育児休業から復職後の地位を保障したり、ふたり以上の子供をもつ家族に所得制限なしで家族手当を支給する「全国家族手当金庫」をつくるなど、女性が子供を産みやすく早期に職場復帰を果たしやすい環境を整えた。

 その結果、1993年に1.66まで落ち込んだ合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の数の推計)が、わずか15年で2.0を超えたのだ。いっぽうの日本の出生率は1.39。フンスの政策は、少子化が進む日本でも注目されている。

 

[デンマーク]25%もの消費税を課しながら「世界一幸せ」でいられる国

 2011年9月、日本のトップに就いた野田佳彦首相は、財源確保のため10年代半ばまでに消費税率を5%引き上げるという方針を示した。この表明に、「どこまで上げれば気が済むのか」という不満や反発の声が湧き上がっている。

 だが、消費税率にスポットを当ててみると、現在の5%という日本の水準は世界的には非常に低い税率といえる。世界には15%以上の国が多数存在する。とくに北欧諸国はどこも高く、デンマークの消費税率は25%にも達している。

 デンマークでは、国民生活に直結する食料品にも25%の税率が課せられる。自動車にいたってはなんと約180%。100万円の価格がついた車は、280万円支払わないと購入できないということだ。消費税だけではない。所得税も最低40%、最高税率は60%。収入の半分以上が、税金として徴収されるシステムになっている。

 しかし、税の負担と社会保障負担の対国民所得比を示す国民負担率を見ると、デンマークは世界最高水準の69・9%となっている。つまり国民の税金への依存度が高いのに、国民は「自分たちは世界一幸福だ」と感じているのである (日本は40・6%)。

 では、負担が重いのに日本人よりも幸福感を得ているのはなぜか。それは徴収した高い消費税などを、医療費の無償化や高い教育への投資、社会福祉制度の整備などに使っているからだ。

 充実した社会福祉が保障するかわりに、製品やサービスへの税金を高く設定する。デンマークは高額の税金の徴収で国内経済をうまく循環させ、幸福を感じさせる経済構造をつくることに成功している国である。

 

[ブラジル]五輪、W杯を起爆剤にさらなる成長をめざす新興大国

 BRICs4カ国のうち、今後もっとも伸びるといわれているのがブラジルである。

 その理由は豊穣な国土にある。単純に国土面積をとって見ても世界5位の広さをもち、そこから石油や鉄鉱石など豊富な資源が得られる。2006年と10年には世界最大級といわれる海底油田が発見され、ブラジルの石油自給率は100%を超えた。これで世界の石油市場が混乱したとしても、ブラジルは臆することなく経済活動に邁進できる。

 また、国土の99%は開墾可能な平坦な土地だから、農作物がつくりやすい。農産物のなかで注目されるのが輸出量世界一のサトウキビ。サトウキビは新エネルギーとして期待が

かかるバイオエタノールの原料になるほか、バイオエタノール車などオリジナリティあふれる産業の創出にもつながっている。

 人口が多く、政治的に安定していることも経済成長を後押しすると考えられている。

 そして数年後には、経済成長のさらなる起爆剤になり得るビッグイベントが控えている。14年に開催されるサッカーのワールドカップと、16年に南アメリカ大陸ではじめて開催されるリオデジャネイロ・オリンピックだ。どちらも世界的なイベントだから、鉄道網や道路などインフラ整備が飛躍的に進み、景気が大きく刺激されるというわけである。実際、日本や中国などはオリンピックの開催地となったあと、経済大国へと成長している。

 そもそもブラジルがこうしたビッグイベントの開催国に選ばれたのは、経済成長を続ける有望国だということが大きく影響している。ふたつの大会が終わった頃、どれくらい発展を遂げているのか、いまから楽しみである。

 

◇書籍紹介◇

[図解]一目でわかる!世界経済のからくり

ワールドエコノミー研究会 著

本体価格1,000円

 

ユーロ圏で不穏な経済状況が続いている。これは世界大恐慌の始まりなのか? 長引く不況から抜け出せず財政破綻も懸念される日本。経済がよくないのに、なぜ超円高なのか?……

いまや経済問題を理解するポイントは連鎖。世界の経済は国境を越え、瞬く間に相互に影響を及ぼし合う。グローバル時代のヒト・モノ・カネの流れと相互連関をつかむことが、世界経済を理解する鍵なのである。

本書は、相互に関連し、互いに影響を及ぼし合っているグローバル経済のしくみを図解でわかりやすく解説。日頃の素朴な疑問もこれでスッキリ解決!

 



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