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名越康文と鏡リュウジが考える「運は自力でつかめるのか?」

2018年07月05日 公開

名越康文(精神科医)&鏡リュウジ(占星術研究家・翻訳家)

鏡リュウジ/名越康文

 

前もって管理しようとすると予測不能なことに対応できない

(名越)日本にとって、2011年3月11日という日は、これまでも、これからも、忘れられない日になっていますね。

(鏡)人と人とのつながりが強まった反面、考え方や感覚のズレがはっきりして、今も分断をいっぱい生んでいると思います。

(名越)感受性の違いによって価値観の違いがあらわになったし、自分たちの生き方の問題に直面した。実際的なところでは、どこに住むのかとか、家を買うのか買わないのかとか。

それはつまり、「未来の描き方」が変わっていったということですよね。ただね、「あの日を境に変わった」という言説は、僕にとってはあまりリアリティがなくて。

じゃあ、3・11以前に僕たちは何かを信じてたのか? と思うんです。

(鏡)3・11の前には阪神・淡路大震災がありましたし、9・11のアメリカ同時多発テロ事件だってありましたしね。だけど実際、僕たちは忘れていたんですよね、この世界の危うさみたいなものを。

だから「まさかこんなことが起こるなんて」と言う。それでも、地震や津波は生態系の中のこと、自然現象ですから、長い時間が経てば自然の力で回復する部分もあります。

でも、原発に関してはいわば生態系の外側のことが起こってしまったわけで、そう簡単に元には戻れない。とてつもない異物が入り込んできたようなものだから、手に負えないんです。

(名越)そういうことを描いたファンタジーやSFってけっこうありますよね。

たとえばトールキンの『指輪物語』。世界を統べる力を持った指輪を所有しようと多くの人々が望むけれど、指輪の力が大きすぎて、自分が身を滅ぼしてしまう。所有したはいいけど、結局は扱えなくてそれを捨てに行く、という物語です。

あの指輪は、邪悪な欲望を濃縮して作られた、まさにとてつもない異物でした。

(鏡)指輪を作ったサウロンは「冥王」ですが、占星術的にみると、冥王星は地下の暗黒のエネルギーを表します。

人間が生み出したものなのに、いつのまにか勝手に暴走しはじめて、ついには人間の手でコントロールできなくなってしまうんです。

(名越)象徴的ですね。物語にはすでに描かれていた。だけど、僕たちが今いる世界では、そうした物語で予言されているものを排除してきました。

(鏡)以前、名越先生に教えていただいた養老孟司先生の本に、「『危機管理』というけど、人間は危機まで管理できると思ってる。それが間違ってる」というようなことが書いてあって、なるほどと思いました。

それはいわば「未来の植民地化」です。あらゆることを前もって管理しようとしてしまっている。すると、予測と違うことが起こったときに対応できなくなってしまいます。

(次ページ:占いは最新のテクノロジーだった)

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