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名越康文と鏡リュウジが考える「運は自力でつかめるのか?」

名越康文(精神科医),鏡リュウジ(占星術研究家/翻訳家)

2018年07月05日 公開 2022年11月02日 更新

 

占いは最新のテクノロジーだった

(名越)前にリュウジさんにうかがったお話を思い出しました。
昔から人々は「運命」というものをさまざまに描いてきたんだけれども、時代が経つにつれてその姿は、荒ぶる神から優しい神になっていく。
だんだん「手なずけられる神」に変わっていくんです。

(鏡)どんどん矮小化されるんですよね。

運命は古代ギリシャ語では「モイラ」といって、もともとは「分け前」って意味なんです。運命の糸をあやつる三人の女神がいて、一人がつむぎ、一人が長さを計り、一人が切る。その運命の糸は、神様の王様であるゼウスですら変えることができないんです。

それがローマ神話では、英語の「フォーチュン(幸運)」の語源となる「フォルトゥナ」と呼ばれ、不安定な球に乗った女神として描かれます。

さらにルネサンスの時代になると、当時のイタリアで権勢をふるった思想家のマキャベリは「運命の女神は人間が鞭で打って従わせなければならない」と言うんです。
そのころ描かれた絵には、帆船のマストに運命の女神を縛り付けて船を走らせるというものがあります。

運命や未来を、人間がコントロールしようとする。人間の尊厳が急激に高まったともいえるし、傲慢になったという見方もできます。

(名越)歴史をさかのぼると、権力者が占いを参考にすることは頻繁にありました。

(鏡)中国の「易」はまさにそうなんですよね。政治を「まつりごと」と言いますが、そもそもは祭祀と同じものでした。

(名越)作物の種まきや収穫の時期といったことを、易を用いて国が決めていた。

(鏡)最新のテクノロジーとしての占いだったんですね。また、道徳律としての側面もあった。易も、儒教の根本経典である四書五経の一つです。ところが、そんなもの科学的でないからやめようと言いはじめたのが近代で、今にいたります。

(名越)科学的なものって確かなように見えるかもしれないけど、実はすごく不確かな一面もある。短期的には検証できても、それが未来も成り立つかというと、わからないと思いますよ。

(鏡)現実の状況はどんどん変わっていくし、複雑すぎますからね。新しい事実が発見されて、それまで正しいとされていたことが覆されるかもしれない。

(名越)数十年後に修正されている科学理論のほうが多いんじゃないかと僕なんかは思っています。僕の感覚では、20年くらいのスパンです。

(鏡)20年というのは、占星術だと一つの周期です。木星と土星、二つの大きな星が20年ごとに会合します。

地球から見て、木星と土星が同じ方向にくるのが20年に一度。このグレート・コンジャンクションが起こるときに、社会のしくみが刷新されて時代が大きく変わると言われています。

前のグレート・コンジャンクションは2000年で、次は2020年。だから今、僕たちは時代の転換点のど真ん中にいることになります。

(名越)そこには深い智恵がありますよね。人間だって、0歳から3歳くらいの育て方の結果が20歳くらいに出てきます。まさに20年スパン。

同じように、20代のときに学んだことや築いた人脈は、それを続けて、保っていったら、40代で結果が出てくると思うんです。

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