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いじめが発生する教室と発生しない教室。その違いとは?

2018年07月10日 公開

荻上チキ(評論家)

厳しい規律が生むストレス要因を取り除き、自由度の高い教室に

では、いじめが多い教室とは、どんな教室なのでしょうか。

いじめの議論の中で主要な理論の一つに「ストレッサー説」というものがあります。

これは、児童・生徒が感じたストレスを発散する際、学校空間ではその発散の仕方が限られてしまっているがゆえに、非行や不登校、いじめといった逸脱行動が発生するのだという説です。

学校の教室というのは、他人に時間を管理されている環境なので、自分好みのストレス発散がなかなかできません。

いじめというのは、「それなりにおもしろいゲーム」なので、そういう形でストレスが発露してしまうのですが、「なによりもおもしろいゲーム」ではありません。
もしもいじめが絶対的におもしろいものであるならば、どれだけ対策をしようともなくすのは不可能と言えるでしょう。

しかし、いじめという形でストレスを発散していた人が別の発散方法を手に入れると、いじめをしなくてもすむようになることがわかっています。

問題は、学校では「クラスから離脱する」ことも、「ゲームやスマホなどを持ち込み、ストレス発散する」ことも禁じられていることです。

いじめが起こりにくい環境にするためには、そうしたストレス要因を取り除くと同時に、より多くの児童が持つそれぞれの特性に対して寛容で、自由度の高い教室を作っていくことが重要なのです。

 

指導という名の体罰がいじめのきっかけを与えることも

個別のデータを見てみると、どんな教室でいじめが発生するのかを調べた調査がいくつもあります。

例えば、鈴木智之「学校における暴力の循環と『いじめ』」(社会労働研究、1998)などでは、体罰の多い教室はいじめが頻発することが指摘されています。

これにはいくつかの理由が挙げられると思います。

一つは、先生が体罰を振るうことによって、生徒に対して、暴力や制裁にゴーサインを出してしまうこと。

教師による体罰は、正義を口実にすれば、特定の生徒に対して暴力を行うことも許されるのだと生徒に学習させてしまう、すなわち「懲らしめの連鎖」を生んでしまうのです。

もう一つは、体罰自体が大きなストレッサーであることです。さらに言えば、体罰を行う教師は、体罰だけではなく普段から厳しい指導をする傾向があります。

例えば、怒号を発する、厳しいノルマを課す、過剰な「生徒指導」をするなどです。そうした教師のもとでは、生徒は体罰のみならず、様々なストレスを受けていることになります。

クリスティーン・ポラスらによる「敬意の欠如は社員と顧客の喪失につながる 『無礼』が利益を蝕む」(「ハーバード・ビジネス・レビュー」2013年12月)では、労働現場で行われる「無礼なふるまい」が、生産性を削ぐことが指摘されています。

ほかにも、目撃ストレスの影響に関する様々なレポートが存在します。直接暴言を吐かれた人の作業の処理能力、創造性、報告意欲、他人をサポートする意欲などが下がるのはもちろんのこと、他人が暴言を吐かれるのを目撃しただけの人にも同様のことが起きることがわかっているのです。

大人同士で行えば「無礼」だと思われる行為でも、子どもを相手にであれば平然と行う人は少なくありません。しかも、学校という場所では、「生徒指導」の名のもとに、そうしたことが行われてしまいます。

「無礼」がはびこる「不機嫌な環境」で生産性が下がるのは、大人社会でも子ども社会でも同じです。

体罰教師のいる教室では、先生自ら生徒にストレスを与えることで、いじめが頻発化します。

いじめが頻発化すると、ターゲットとなる児童・生徒が増えると同時に、特定のターゲットが長期間いじめられるケースも出てきます。頻度が上がると、いじめがエスカレートして、より深刻な内容になるのです。

体罰はそもそも禁止されてる行為ですが、ただそれを受けた児童・生徒の心の傷となるだけでなく、副次的にいじめなどの様々な問題を引き起こしてしまうことも、頭に入れておいていただきたいと思います。

(次ページ:理不尽な指導を受けて自殺した生徒が感じていたこと)

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