<<内閣府の調査により、18歳以下の自殺者数が最も多いのは夏休み明けの9月1日だということが明らかになった。
30年以上にわたり、日本でも世界でも様々ないじめ研究が行なわれ、数多くの社会理論が磨かれてきた。こうしたエビデンスに基づき、本当に有効ないじめ対策を行わなければならないと主張する荻上チキ氏。
評論家であり、NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事を務める荻上氏が「いじめを生む教室」の本質に迫った。>>
いじめの発生要因は環境要因や集団心理が大きく関わる
日本のいじめ研究は、1980年代中頃から出発しました。
初こそ、被害者や加害者の性格原因論が多くありましたが、徐々にクラスや部活など、所属する集団の特性に着目する研究が多く出てきました。
さらに、教師の指導法がクラスの雰囲気に与える影響や、集団に与えられているストレスの度合いなど、より広く環境面に着目する研究も増加しています。
他方で、個人がいじめを行わないですむため、いじめから避難できるようにするための実践教育の開発など、様々な分野での研究が進んでいます。
個人論から集団論、そして環境論へ、すなわち、個人モデルではなく環境モデルの重視へと移ってきました。
今ではいじめ対策を考える際には、個人の資質の問題だけではなく、環境要因が集団心理などにも大きな影響力を持つということに、しっかりと目を向けていく必要があります。
環境を是正することによって、いじめの発生を抑えたり、早期の対処を促したりすることができるのです。
私はこうしたことをわかりやすく伝えるために、教室には「不機嫌な教室」と「ご機嫌な教室」があるのだ、と言うようにしています。
「不機嫌な教室」とは、ストレスが多く、人間関係がぎすぎすしていて、いじめが起きやすい教室のこと。
一方、「ご機嫌な教室」とは、ストレスが少なく、みんながにこやかに安心して過ごせる教室のことです。
それにはたまたま顔を合わせた生徒たちの相性や、先生との相性も関わってはいるのですが、それ以外にも、教室の運用方法など、様々な要因が関わっていると考えられています。
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厳しい規律が生むストレス要因を取り除き、自由度の高い教室に